箱男 (新潮文庫)

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著者 : 安部公房
  • 新潮社 (2005年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121161

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箱男 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 初めて読んだ安部公房。
    面白い!けど、覗き覗かれる視点が錯綜していて混乱する!
    段ボール箱をかぶってみたいと思ったけど、
    本を開いて物語を読んでいる自分も既に覗くという行為をしているのか...?
    と思ったらゾッとした。

    かなり実験的で初めて読んだタイプの本。かっこいい。
    しばらく時間を置いてからもう1度読み返したい。

  • 何度読んでも混乱する。
    この箱男は、私であり、自分とは関係ない全く違う世界の人間でもある。
    ただ自分もいつかはこれに近い存在になるのではないかという危うさが、この話を魅力的にする。
    何度も読んだけど、やっぱり理解できなくて、読む度に新しさを感じる。

    やっぱり安部公房、天才的なんだなぁという圧倒的なチカラを感じる本でした。

  • 2017.3.11
    たまにはさらっと小説でも読もうと思ったらびっくり。めちゃくちゃ難しい。結局なんのことかさっぱりわからなかった。
    しかし、「見る」と「見られる」ということに関してなら、確かになんとなく、その底にある恐怖は理解できる。特に数年前に対人恐怖で外を出歩くのもきつかった時は、まさに見られることの恐怖というものを全身で感じていたし、今でもその傾向が弱まったとはいえ、人の中を歩くのはきつい。深夜に散歩するのは楽しい。私を見るものが誰もいないからである。
    話が飛んだり、よくわからない挿入があったりで、ほんとなんのこっちゃという小説なんだけども、面白くないわけではないのである。この魅力というのは、一体なんなのだろうか。
    対人恐怖症がきつかった時、サンブラスをかけていればきつくないことに気がつき、しばらくサングラスをかけて過ごしていたことがある。あれは一種の、箱男現象だったのではないだろうか。こちらの視線は相手には見えない、しかし私からは相手が見えるのである。一方的な関係、見られることなく、見るものである。だとするならば、私は見ていることが見られるということを恐れていたということになる。しかし箱男はもっと、徹底している。社会的属性も捨てて、何者でもなくなり、何者としても見られなくなり、ただ見るという立場に立つ。全てを捨てて得た特権階級。そのそこには、見られているという恐怖がある、他者の視線を浴びせられているという恐怖がある、他者の視線により判断されるという恐怖がある。
    「他者の視線が無を分泌する」「地獄とは他人である」と言ったのは、サルトルである。私のこの経験と、サルトルとの対話を通せば、もう少しこの小説が、腹に落ちてくるかもしれない。

  • かつて伊藤整は「小説の方法」のなかで
    文壇にひきこもり、高みから世間を見下ろしてると言って
    日本文士のありようを批判したのだが
    段ボール箱をかぶっての生活に執着する「箱男」にも
    同じようなところがあって
    彼はいつも覗き穴から、世界を一方的に見つめている
    しかしある時、突如として人生にかかわってきた他者…女にとまどい
    自分がどうしたいのか、どうすればいいのかわからず
    それに対する計画を、小説の形でノートに書きつけはじめ
    やがて、そのことと直接には関連しないイメージの連鎖に
    引っ張られていくこととなる
    形式的には、やはり伊藤整の「鳴海仙吉」を
    さらに遡ればロレンス・スターンの
    「トリストラム・シャンディ」を彷彿とさせるものだが
    それらとの明らかな違いとして、根底に抱えた恐怖の存在がある
    他人から見られることへの恐怖であり
    オリジネイターの座を脅かされる恐怖である
    ファッション・モード批判としてもよいのだが
    彼はつまり
    固有の体験を持ちえない(とも言われる)現代人の鬱屈を
    パフォーマンス化することで、逆説的に固有性へと変換したわけだ
    そこのところ…そのように見られている、というところで
    箱男は常に嫉妬されており
    ファースト・ガンダムならぬ、ファースト箱男の座は
    常に脅かされているのだった

  • 安部公房の書く物語は不思議だ。
    基本的にどの作品も設定はぶっ飛んでいるのだが、登場人物は疑問に思わない(もしくは疑問がそこまで強調されない)で物語が進んでいき、その内に設定以上にぶっ飛んだストーリー展開が広げられていき、設定に対する突っ込みを忘れてしまう。
    本作もその法則に当てはまり、段ボール箱に視覚的に必要最低限な穴を空けて上半身にスッポリと被り、生きていく上で必要最低限な持ち物を携えて路上で生きる箱男(結構な数存在するらしい)の一人の手記という形になっている。
    段ボールの改造方法や、箱を被って生活する上でのコツなどが真に迫っており、実際に作者は箱を被って生活した経験があるのではないかと思わせる。
    「見るもの」と「見られるもの」の関係性とを軸に物語は進み、途中から主人公の妄想になった手記が突然現実化したと思ったら、やはり妄想だったことが明らかになり、その後も断片的な記事や手記を挟んでいくストーリーは本当に難解。間を置いて再読したい。
    村上春樹に近い意味不明さもあるけれど、こちらの方が考えさせられるのは、設定のあり得なさと、自分にも起こり得るのでは…?の配分が絶妙だからだろうな。
    シリアスな笑いを感じる描写がなかなかあり、個人的には作者の文体は好きだ。
    シチュエーション的に意味不明だが、婚約者を迎えに馬車(実際は箱を被った60歳の実父が引いている)で行き、我慢できずに立ちションしていた現場を彼女に見られて婚約破棄になった瞬間に実父から贈られる慰めの言葉が素晴らしい。
    「むろん、お前が悪いわけじゃない。露出狂に対する偏見と、公衆便所の建設を怠った町の行政の責任さ。さあ、行こう、こんな町にもう未練なんかないだろう。どっさり公衆便所がある大都会に出掛けようじゃないか」

  • 覗く喜び、それとも逆説的な意味として覗かれる喜びか。安倍公房の話はどれも考えるな、感じろ的な話が多い。倒錯したエロリズムが描かれていたようにも思えるし、それとも奇怪なただの浮浪者の話を書いていただけかもしれない。ただ1つ、このような多様性を持った当たり前が今の世の中にあってもいいのかもしれないと思った。

  • の中から、覗いているのか、その様子を覗かれているのか? “逃げたがっているような気もするし、追いかけたがっているような気もする。” 確かにこの覗き見(覗かれている)感覚は、SNSの世界に近い感もある。

  • ヤバい。
    とりあえず、もう一度読むわ。

  • 再読。この本に関しては最初に読んだきっかけをはっきり覚えています。深夜にやっていた「文學ト云フ事」というテレビ番組で取り上げられた翌日に、興味を持って本屋さんに買いに行ったのでした。あれは面白い番組だった~。Wikiで調べたら、箱男の回は1994年6月28日。ほぼ22年前・・・そんなに経つのか(呆然)

    以前読んだときのほうが若かったせいか、単純に「なにこれ面白い!」という感覚で楽しめた気がします。今読むといろいろ小難しいことを考えたり、公房って看護婦さん好きすぎだよな、とか余計なことも考えてしまうし(笑)でも、基本不条理だったり突拍子もなかったりする公房の作品の中でもとくにこれは尖がってる実験的な作品だなとは思う。

  • 初のシュルレアリスム作品でした。
    面白かったです。ぞくぞくしながら読み進めた。読みやすいのに読みにくい。

    どこからが現実でどこからが妄想か、どこからが記憶なのかこんがらがってくる。安部公房の魔法にかかってしまった。

    明日箱男になっているのは、私かもしれない。

  •  安部公房4冊目。個人的な解釈。ほんとうに一意見として。

     読み始めてすぐに、箱男は私自身なのではないかと感じた。一方的に覗き見る人というのは、小説・手記を読んでいる人を差すように感じたからだ。手記の書き手が入れ替わっていく構造も、追っていくうちに、著者である安部公房と、読者である私という関係まで還元したくなる。
     安部公房の小説は、「アイデンティティ」というテーマがいつも(まだ4冊目ですが)読み取れる。書き手である箱男は、ダンボールをかぶることで自分が誰か特定されない、アイデンティティを失った状態である。Aが箱男を空気銃で打った後、自分が箱男になってしまう場面があるが、私も、仕事や目標、友人や家族といったアイデンティティを全て失くして、誰にも観測されない、一方的に覗き見る人になる機会があれば、きっとなってしまうと思う。そして同時に、そんな人間が実際に存在したら許しておけず、自分が所属する社会から弾きだしてしまいたくなる気持ちも理解できる。
     しかし、わざわざ箱など被らなくとも、今の私達にアイデンティティなどあるのだろうか。マンションの一室に必要な生活用具一式を所持して、ネットでニュースを覗き見て中毒に陥っている。ほとんど箱男である。もっと言えば、脳味噌が箱男の中身で、覗き窓が目、皮膚がダンボールと言えなくもない。人々は箱男など、見かけても気にも留めないが、全国に意外とたくさんいるらしい。

     箱男を箱から出すのは、女である。女の描写はとても官能的で、謎めいて描写される。女の内面は全く想像できず、男性的な視点だ。(現実の女も何考えているか訳がわからない。)女は書き手が独りよがりな理論をこねくり回したものをブチ壊す者として登場していると思う。箱男は、女の前では箱を脱ぐことができる。女の裸の前では、自分と女を区別して、二メートル半の距離を保つためにアイデンティティを持てるという事だろうか。それは弱さなのか、甘えなのか、エロなのか。もっと別のものだろうか。

     興味深いのが、女教師のトイレを覗こうとするDの話である。本の末尾の解説では、罰として見る立場とみられる立場が入れ替わる事に言及しているが、私が一番気になるのが、「それだったら俺も見られたいわ!」という点である。それまでずっと、一方的に見られることの不快感について書かれていたと思うが、見る立場と見られる立場に成立する快感の共犯関係のようなものが読み取れる。(看護婦が脱ぐシーンでも似たような描写があったかも?)お互いにアイデンティティがある状態(見る側とみられる側が誰かわかっている状態)だと、またいろいろ異なってくると言うことだろうか。

     結局女なのか。女の裸と性欲なのか。そんな結論でいいのか。(彼女欲しいなぁ。)

     という感じで、ひたすら自分の箱の中に延々落書きを続けられるような人間におすすめの小説です。
     たくさん落書きを書いたら、「他人の顔」で女に叩き潰されるのがよろしい。

  • 内と外、自己と他者。
    怪しい展開と共に、その境界線がまぜこぜになってゆく。
    読んでいる間、気持ちが随分昏くなって、早く手放したかった。
    いつ放り出しても良かったのに。

  • 箱男のすゝめ。まずこれは読み方が難しくて後半になってようやくそういうことかと判った。〈見るもの〉〈見られるもの〉のくだりは興奮した。ドキドキした。まさに物語そのものについて言及した小説だなと思った途端に、記述者がめまぐるしく変わっていく構成。まるでミステリのようなエンタテインメント性!小説として奇抜でありながらひとつの完成、極限であるような気がする。また読み返さないといけないな。

  • 3回くらい読んで考察も読んでやっとわかったかもしれない作品。
    最初はわけわからんけどすごい世界観だとしか思わなかった。次読んだとき実は緻密に作りこまれてるけどなぜか意図的におかしなところがあると気付いた。3回目でこれは上質なミステリ?サスペンス?なのかもしれないと気付いた。
    これを書いたのは誰か、箱男とはだれだったのか、理解するまでとても楽しめた。

  • 【本の内容】
    ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。

    一切の帰属を捨て去り、存在証明を放棄することで彼が求め、そして得たものは?

    贋箱男との錯綜した関係、看護婦との絶望的な愛。

    輝かしいイメージの連鎖と目まぐるしく転換するシーン。

    読者を幻惑するいくつものトリックを仕掛けながら記述されてゆく、実験的精神溢れる書下ろし長編。


    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 上手くいえないのですが、
    不思議な気持ちにさせられる本でした。
    少し暗い気持ちになりますがおすすめです。

  • 面白い。

    この小説は、「ぼくの場合」の章にある
    「今のところ、箱男はこのぼく自身だということでもある。箱男が、箱の中で、箱男の記録をつけているというわけだ。」
    の文章につきる。
    つまり、①ぼくが箱男であるのは「今のところ」であり「常に」ではないということ。
    そして、②記録をつけているのは「ぼく」ではなく「箱男」であるということ。
    この2点が絶対的なルールとして本小説は書かれている。

    この2点だけしっかり注意して読むと、めまぐるしく変わる展開が、箱男だった人間が途中で箱男でなくなってしまったり、別の人間が箱男になってしまったりするせいだとわかる。

    なぜだか、貝殻草の件がとても印象に残る。

  • 段ボール箱の中を頭からすっぽり被り、街を徘徊する箱男。

    ラジオを箱の中に持ち込んで、ニュースを聴いて、外界との接点を保ちつつ。
    次第にニュース中毒になっていく。
    『昨夜B52による本年度最大の北爆が行われました、でもあなたは生きています。ガス工事中引火して八人重軽傷、でもあなたは無事に生きています。物価上昇率記録更新、でもあなたは生き続けています…』
    初読は15年前なんだけど、それ以来オイラもニュースはこういう風にしか聞こえなくなっちゃったよ…
    でもこれって、本当のところを突いているよね??
    自分の身の安全の再確認でしかないんだよ、結局ニュースなんて。

    特にオイラより上の世代なんてテレビっ子なはずだから、皆ニュースを見て育ったのでは。
    きっと若年層では、それがケータイメールなんだろうな。
    友達にメールして、返事が返ってくれば、(まだ独りじゃない)ってことなんだろう…

    安部公房の小説が難解だとかアバンギャルドだってよく聞くけれど、そんなこと言う人に限って、本質なんかちっとも捉えていないんだろうな。
    確かに解りやすいとは言わないが、とにかく凄まじいパワーに圧倒されるので、一度その中にどっぷりはまるのも割と心地よかったり。

  • 受験国語の小説問題に出てきそうな感覚に陥った。
    というのは、とにかく読解力を要されている気がしたから。
    昔っから国語が苦手な私にとっては、最後の解説文を読んで、それでも何となく理解。

    時間が経ってからもう一度チャレンジたい。

    これは、身体と精神のことを言っているのですかね。段ボール箱の中に記されたメモこそ、その人が確かに何かを感じた証拠、つまり確かに生きていたという証拠なのかと感じた。
    そして、肉体が精神と近すぎるから、人が苦しみやすくなるのか。その適度な距離感として箱(この場合肉体が精神の入れ物と捉えている)を選んだ箱男。生きること、身体を傷つけること=刻むこと。
    と言ったことを考えさせられた。

    にしても、もう一度クリアに読みたい!

  • 読み進めていけばいくほど訳が分からなくなる。だからこそ先が気になってしょうがない。一度や二度再読したところで理解などできまい。

    久しぶりに興奮した。
    あぁ、箱に入りたい。

  • 一番初めに読んだ安部公房作品。導入もおもしろく一気に読める。内容は難解。何度も読んでその度楽しむことができる。
    私も箱に入ってみようかな。

  • 世にも奇妙な箱男の生態。

    彼らは誰に気にされるでもなくそっと街角にいる。

    何が想像で、何が妄想で、何が創作で、何が事実なのか、読んでいるうちにわからなくなってくる。いろんな視点が混ざる文体は最後まで慣れなかった。
    ちょっと気持ち悪い。ちょっと怖い。ちょっとよくわかんない。
    すごく面白いとも思わなかったけれど、つまらなくはない。
    なかなか考えさせられるけれど、もう一度読もうとは思わない。
    登場人物たちが、それぞれみんなちょっと気持ち悪い。

    変な構図の絵を見ているような感じ。

  • お昼休みにご飯を食べながら読むとご飯が不味くなる。お風呂で読むとあまり疲れがとれない。かといって電車で読むと働く元気が出なくなる…!とにかく不快になるのに続きが気になるのはそれでも共感出来ちゃうところがあるからなのかあまりにも真正面から言い当てられてしまっているからなのか。

    奥まで理解するには「見る」ことと「見られる」ことがやっぱり重要なキーワードなのか…なぁ。というわけでもう1回読むことにします。

    この本を紹介してくれた人が「私が1番好きな本」って言っておすすめしてくれたけどそれってどうなの…。

    何やら危ない世界を知ってしまった。
    この一言に尽きます。

  • 思いっきり私見だけど、安部公房の小説ってわりと分かりやすい二項対立があって、それが読んでるうちにテーゼとアンチテーゼがひっくり返ったり曖昧になったりすることが多いんだけど、「箱男」では二項対立が、「正」が「負」へ、「負」が「正」へと目まぐるしく変化する。その変化の中で書き手と作中人物の境界はあやふやになって、書き手が混乱しているのか読み手(自分)が混乱しているのかわからなくなる。これは読者っていう一方的に見る側だった人間が、見られる側にまわった瞬間だったのかも。

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