箱男 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121161

感想・レビュー・書評

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  • 2021年5月読了。

    大きな段ボール箱を頭からすっぽりとかぶり、そこに開けられた覗き穴から世の中を俯瞰的に見ている箱男。
    その箱男が箱男についての記録を語っていく物語。

    安部公房作品を読むのは『砂の女』以来、2作目。
    『砂の女』は難解な作品だったが、設定が面白く、感じる事や想う所があり楽しめたのだが、
    『箱男』は難解が過ぎる…。
    自分のレベルでは理解は疎か、楽しく読むことすら難しかった。無念。
    初めのうちは設定の面白さから読む事を楽しもうと頑張ったが、徐々についていけなくなり失速…。

    安部公房作品をこれから読む人は『箱男』からのスタートはおすすめしません。

  • 段ボールを被り、のぞき穴のから世界を見る主人公(最後まで主人公が誰かわからんかった)は、次元を超えて世界を客観視している。
    ただ段ボールを被っただけのことで。

    普段、世界が限定されているとは気づかない。
    自分の目の前には無限の世界が広がってると思いがち。”自由やねん”バイアスがかかっている。

    自分の見える範囲だけで、世界が成立している。“見られている”ことももちろん”認識”している。
    だけど、それは自分なりに見られているイメージを作ってるだけで。理知的、ひょうきん、兄貴はだ、ケチ、愛されキャラ等

    だけど、ひとりよがりである場合がほとんど、自分が感じているよりずっと世界の捉え方には限界があるということやねんな。

    それは、ある意味自分だけののぞき穴のから見ている。

    まずそれがひとつ。

    あと、ものごとの捉え方がずば抜けている、些細なことの感じ方がめちゃくちゃユニーク。
    これなんか。

    >作中引用
    完全に真っ暗。ブラジャーを外すのに、すごく手間取ったくらい。

    ブラジャーとあかりは関係ないだろう。どのみち手探りじゃないか。

  • 内容や著者のメッセージを理解することができず、結局よく分からなかった。安部公房の独特の文章と世界観が詰まった一冊ではないだろうか。

  • 「見る=見られる」行為に主従関係をもたらす箱の存在。内なる世界と外なる世界を仕立て上げ、その「位置」を奪い合う男達。人間は記号になる事を望むが、なお欲望に踊らされる。

    何度も裏返る真と贋…これは夢か幻か。もしくは読者への狡猾な罠か、単なる悪戯か?

  • あの安部公房に初挑戦。
    文体は危惧していたほど読みにくくなく、レトリックは奇抜で面白く、そしてストーリー展開は難解だったw

    箱男とはいったい何なのか。
    社会から隔絶された存在とか、現代の病理とか、分かりやすい解釈は思いつく。

    そして、どの章が誰の視点だったのかという謎解き的な要素もある。

    でも、色々ひっくるめて、安部公房はそこまで深く考えていなかったのかも知れないという結論に至った。
    単純に、読者を翻弄して楽しませることに終始していた、ストーリーテラーだったのかもしれない。

    是非、他の本も読んでみたい。

  • 安部公房のミステリーワールド。主題は『見ること−見られること』の極限。難解な小説だけど、言葉の組み立て方、表現がユーモラス。巻末の解説を読んで何となく分かったきでいるけど、翻って現代に置き換えると見ることに関しては非常にハードルが低くなってる気がする。箱の役割はネットになってるとか。
    ちょっとミステリー仕立てでワクワクする部分もあって、好みの作品でした。

  • 難しいかなあ?と思ったけど意外と理解出来ましたが、話の前後で混乱しました。
    "箱男"とは、社会に、この世で生きていくうえで一切のルールや習慣を捨て去り、一人きりで「見ること」だけに執着し、見られることを避けながら、しかし周りの人間関係に若干でも縛られてしまう...そういう存在。
    時折マーシーみたいだなと苦笑する場面もあり、彼が元カメラマンということなので「覗き屋」に
    対する自分への執着は物凄いものがあり、読んでいてゾッとすることもあり....。
    初めての安部公房でしたが、他の作品も読みたいと思います。

  • 「?????」
    箱暮らしが落ち着くのは女より男。この話をより理解するのも男ではと読み進め、天才から漏れ出す話は混乱で、何が何やら。
    この作品から何か得ようとか、自己投影とかぜんぜんムリだなと諦めて読めば、理系で東大で医者のIQで心の声が漏れ出てるカンジ。それをPCじゃなく筆記用具で書いてるのだったら、すんごい勢いだろうなー。

    舞台上で台詞が飛び交う声が聞こえてきたと思いきや、どっちがどっちかわからなくなり、馬のお父さんの話で油断する。
    そして、最後はちゃんと?裸で抱き合ってるんでしょ?

    マスクなしでは会話できない輩もいる昨今だが、時代がこの物語に追いつきつつある?書き手が書き手のために、脳が命ずるままにあふれ出る物語を排出している。
    羊男、おしい!もっと先に箱男がいたよ!と思った(笑)

    案外、これは終わりのない物語であり、作家が生き続ける限り、書き続けられたのじゃないかと思える。

    いつか読もうと思って文庫で購入して、電車に乗るのに持ち出してみた。難しくてすぐには読了できなかった。

  • 安部公房の書く物語は不思議だ。
    基本的にどの作品も設定はぶっ飛んでいるのだが、登場人物は疑問に思わない(もしくは疑問がそこまで強調されない)で物語が進んでいき、その内に設定以上にぶっ飛んだストーリー展開が広げられていき、設定に対する突っ込みを忘れてしまう。
    本作もその法則に当てはまり、段ボール箱に視覚的に必要最低限な穴を空けて上半身にスッポリと被り、生きていく上で必要最低限な持ち物を携えて路上で生きる箱男(結構な数存在するらしい)の一人の手記という形になっている。
    段ボールの改造方法や、箱を被って生活する上でのコツなどが真に迫っており、実際に作者は箱を被って生活した経験があるのではないかと思わせる。
    「見るもの」と「見られるもの」の関係性とを軸に物語は進み、途中から主人公の妄想になった手記が突然現実化したと思ったら、やはり妄想だったことが明らかになり、その後も断片的な記事や手記を挟んでいくストーリーは本当に難解。間を置いて再読したい。
    村上春樹に近い意味不明さもあるけれど、こちらの方が考えさせられるのは、設定のあり得なさと、自分にも起こり得るのでは…?の配分が絶妙だからだろうな。
    シリアスな笑いを感じる描写がなかなかあり、個人的には作者の文体は好きだ。
    シチュエーション的に意味不明だが、婚約者を迎えに馬車(実際は箱を被った60歳の実父が引いている)で行き、我慢できずに立ちションしていた現場を彼女に見られて婚約破棄になった瞬間に実父から贈られる慰めの言葉が素晴らしい。
    「むろん、お前が悪いわけじゃない。露出狂に対する偏見と、公衆便所の建設を怠った町の行政の責任さ。さあ、行こう、こんな町にもう未練なんかないだろう。どっさり公衆便所がある大都会に出掛けようじゃないか」

  • 覗く喜び、それとも逆説的な意味として覗かれる喜びか。安倍公房の話はどれも考えるな、感じろ的な話が多い。倒錯したエロリズムが描かれていたようにも思えるし、それとも奇怪なただの浮浪者の話を書いていただけかもしれない。ただ1つ、このような多様性を持った当たり前が今の世の中にあってもいいのかもしれないと思った。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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