箱男 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121161

感想・レビュー・書評

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  • 安部公房『箱男』は、何故ダンボール箱をかぶり続けるのか?謎の混沌ストーリーを読み解く! | AdvancedTime(FEB 13,2024)
    https://advanced-time.shogakukan.co.jp/21220

    映画『箱男』安部公房の同名小説を実写化、主演・永瀬正敏が“ダンボールを被った箱男”に - ファッションプレス(2024-02-09)
    https://www.fashion-press.net/news/113863

    映画『箱男』オフィシャルサイト 2024年全国公開
    https://happinet-phantom.com/hakootoko/

    安部公房 『箱男』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/112116/

  • 箱を被り生活する男、設定が最高に面白かった。内容は意外に複雑で噛み締めて読まないとなかなか理解できなかった。
    永瀬正敏主演で映画もやるので絶対に観たい。

    • マサさん
      schieleさん
      コメントありがとうございます。
      そうですね、ちょっと構成が複雑ですよね。この世界観をどう映画化されているのか今から楽しみ...
      schieleさん
      コメントありがとうございます。
      そうですね、ちょっと構成が複雑ですよね。この世界観をどう映画化されているのか今から楽しみです!
      監督も好きな監督だし、キャストもいいですよね!
      2024/02/18
    • ロカさん
      マサさん、おはようございます。
      『箱男』の映画化は私もびっくりしました。

      どう表現してくれるか、ワクワクです(^^)
      マサさん、おはようございます。
      『箱男』の映画化は私もびっくりしました。

      どう表現してくれるか、ワクワクです(^^)
      2024/02/28
    • マサさん
      ロカさん
      コメントありがとうございます。
      映画はだいたい好きな俳優さん出るので、とても楽しみです。27年前の企画みたいですからね!
      是非とん...
      ロカさん
      コメントありがとうございます。
      映画はだいたい好きな俳優さん出るので、とても楽しみです。27年前の企画みたいですからね!
      是非とんでもない世界を期待しちゃいます(^.^)
      2024/03/01
  • ◯大変面白いが難解だった。
    ◯なんとなく箱男という匿名性と、「見る、見られる」の関係性がテーマであるということは読んでいて分かったが、中盤以降顕著になる語り手の入れ替わりが難解であった。
    ◯この辺り、文庫本巻末の解説が非常に明快で分かりやすく、箱男という小説の面白さを増してくれる効果すらある。

    ◯個人的な感想としては、書かれた当時とは時代が経っていても、変わらずに現代を風刺していると感じた。ネットなどの匿名性文化がまさに箱男であり、覗き見ることの快感は共通して理解できる部分である。
    ◯人間の心理的な部分を独特の筆致で暴いている点が新しく、しかし人間の心理だけに普遍であり、とても興味深い普及の傑作。

  • 読んでいて迷路に迷いこんでいく感じで、それに関して難しいとかよりも面白いという気持ちが勝ってどんどん先を読んでしまう。それも明確な解決に向かうというよりは、どんどん迷宮の深部に入り込むような感じで抜け出せなくなっていく。
    解説を読んでなるほどなるほどとはなりました。
    誰が語り手で誰が語られていて、誰が見ていて見られているのか。もっと言えば誰が書いていて誰が書かれているのか。主が明確でいて不明確。メタ系のような違うような不思議な読書体験でした…!江戸川乱歩が好きなので、所々にフェティシズムや奇々怪々な感じが漂っていて個人的には好きでした。

  • 万華鏡の中にいるような、前後左右がなくなるような不思議な気持ちになった。
    新聞記事風のフォーマットのページや作者自身が撮った写真も数多く掲載されている複合的な作品でびっくりした。
    全体的な流れをつかめなかったので、再読する予定。

    【再読後の感想】
    登場人物を整理しながら読んだら、ぼんやりと各節のつながりがわかってきた。
    メインのストーリーを様々な角度から描いていて、それこそ1つのカラクリ装置を前後左右から見ているような作品であった。
    箱を被るという安心感、誰からも自分を見られないという安心感は、Twitterの匿名垢と通ずるものがあるような気がした。

  • 夢で見たことの断片を繋ぎ合わせたようなシュールでコミカルでちょっとエロい大人の寓話のよう。
    箱男は社会に属することを放棄した観察者である。
    何者でもないところは、Twitter など匿名性の高いSNSにも似てるかも?

    映画化されると知って原作読みましたが、これをどう映画化するのか想像がつきません。薄暗く殺伐とした風景しか見えなかった。
    自分も箱の中にいるような閉塞感と不可解な展開に呑まれてじっとり汗をかき、ぐったり疲れてしまった。

  • 【始】
    これは箱男についての記録である。

    【終】
    救急車のサイレンが聞えてきた。

    読み進めていくうちに段々意味がわからなくなってきて、最後の方はやけくそでページをめくっていた。ただ、その意味のわからなさがやみつきになっている自分もいた。またちゃんと構造を把握した上で読み返せばもっと楽しめそうな気がする。

  • 箱をかぶって生活する。

    社会生活に参加せず、箱の中で生活をする。
    いや、箱とともに生活すると言うべきか。

    箱男にとって箱はどんな価値を持っていたのか。

    衣服とも異なる。衣服は見る・見られると言う相互作用・間主観が生じるものの、箱の場合見るという機能は箱男に与えられ、他者は見られることのみであり見る事は与えられない。

    これは平岡解説の言う視点の交換、偽物と本物が入れ替わると言う価値の変化とも言えるかも知れない。

    そしてどうやら箱に入ると安心するようでもある。
    「すべての光景から棘が抜け落ち、すべすべと丸く見える。(中略)この方が自然で、気も楽だ。」(P.21 )

    箱は安心感の器、自分と他者・世界を隔ててくれる枠としての役割になるのかもしれない。

    箱と共に生活する箱男、そして箱の持つ機能・役割を考えると、「ひきこもり」という現象を想起させる。

    箱の中に避難し、自身の安全を確認する。多くの人は、毎回安心感がある場所に退避せずとも安心感は恒常性を保って外出したり、他者と交流したり、いわゆる社会生活を行う。

    しかし箱男は箱から出ることをしない。ライナスのようにブランケットを握り締めるよりもより強固な、安心感が保てるバリアがなければ自分を保つ事ができない。

    これはまさにひきこもりと同様の状態ではないか。

    「さなぎ」という言葉で箱男の心理が描写されるように、ひきこもりの心理もさなぎと例えられる事が多い。

    さなぎは撤退するためではなく羽化するための変態であって、ひきこもりもその人にとっての助走期間、人生の夏休みといえるのかもしれない。

    箱男も、若い看護婦と接した事でこの安心感の枠が揺さぶられる事になる。

    それは交流とも言えないほど低次元であり、おそらく箱男の妄想的知覚が主ではあると思うけれども彼の世界が大きく揺さぶられる事となった。

    やがて箱を捨てられるかもしれないという淡い期待がよぎる。

    『彼女との出会いで、もしやその機会をつかめたのかと、密かに期待していたのに・・』(P.64)

    箱男は看護婦に対して自分を無条件に助け出してくれて心的にも性的にも受け入れてくれると期待したのかもしれない。

    『小型精密機械』(P.122)のように言う事を聞いてくれる、望みを叶えてくれると信じたのだろうけども、病院の窓を覗きみたところで混乱が起きる。

    (偽?)医者と看護婦との親密(?)なやりとりを見た途端、医者を贋医者と評価し、贋箱男と認識する。

    おそらく、本当は自分(箱男)こそが看護婦を獲得するべきなのに立ちはだかった医者へ投影同一視が起きたのだろうとも考えられる。

    これ以降は場面が目まぐるしくかわり、関係念慮、妄想的知覚にエピソード、いわば支離滅裂な病理的な次元へ降りてゆく。

    どこで箱男を救えただろうか、などと考えるのは手前勝手ではある。しかし、少なくとも贋箱男と知覚した段階で何かできたのであれば、この後の物語もかわったのかもしれない。

    そして、実際のひきこもりも同じようにどこかのタイミングで何かできたのではないか、という局面があったのかもしれない。

    それでも、『全国各地にはかなりの数の箱男が身をひそめているらしい痕跡がある。そのくせどこかで箱男が話題にされたという話はまだ聞いたこともない。』(pp.14-15)のである。

    (間違っても無理矢理部屋から引き摺り出すのは悪影響しか残さない事をお忘れなく。)

  • だんだん何が何だかわからなくなる。

  • 一文一文、各章ごと、それだけなら何が起こっているのかは明確で筋も追いやすいのだが、章それぞれがどのように繋がっているのかとなると、途端に迷路に迷い込む。
    解説を読むとこの小説のひとつの読み解き方が提示されていて、つまりは箱男という「見る側」と、彼が認識する「見られる側」の世界との関係性について描き、その在り方が逆転する展開を用意し、さらにはこの小説が箱男によって「書かれたもの」という体裁を取ることで、それを「読む側」との関係性をメタ的に描く。つまり「見られる=見る」、「書く=読む」という表裏一体の状態こそが、この小説で安倍公房が書こうとしたことであり、”箱男”という存在や断片的な章の分け方はそれを表す舞台装置なのだと、そんなことが解説には書かれている。
    一理あるなあと感じる。話が進めば進むほど分かりにくくなる小説なので、それぞれの”現在地点”が読み解きやすくなる。
    でも、この小説はそんな簡単に答えが提示できる作品ではなく、もっと言えば「答え」だとか「良い読書」だとか「教養」だとか、そんなところからあえて距離を置いた小説なんじゃないかと思う。意味を求めるのは自由だし、作者的にもなんらかの意図を持って描写してるだろうし、様々な仕掛けを作ったのだろうけど、この”わかりづらさ”まで作者の意図するところなのかはかなり怪しいと私は思う。
    一人称かと思いきや二人称や三人称にスタイルが変わり、そんなに精細に書く必要ある?って突っ込みたくなるほど、どうでも良さそうなシーンを書き込んだり、真相を話す話すと言いながら最後は読者を煙に巻くような形での幕切れ。作者自身がどうしていいのかわからなくてこのような形になってしまったようにも見えるし、すべてイチから設計図どおりに組み立てた上で、このような歪な体裁となったようにも見える。
    なんにしても私がこの小説を読んで感じたのは一種の”グルーヴ感”であり、迷い、もつれ、作者自身が迷走してるようにも見えるこの書き方だからこそ、他にはない独特なリズムが形成されていると感じた。この、いくら簡潔に説明しようとしても簡単に説明しきれないあたりや、実験作であり、失敗作(のようにも見える)であり、思わぬ調合によって生まれた世紀の傑作でもある今作は、一言でまとめるなら「奇書」なのだ。
    フェティッシュばりばり、寓話性も備え、破綻してるのに形を成している。そんな作者の意図から離れた場所に到達してしまった奇書。
    好きか嫌いかで言えばすごく好き。『砂の女』よりずっと。読書の楽しみ方は色々あるけど、私は暗闇の中を、その先に何があるのかわからないながら進む、そのこと自体を楽しむことが醍醐味だと思ってる。あくまでひとつの楽しみ方だけど。
    そしてこの本は、「すべてを理解することが正解ではない」のだと、そう感じさせてくれる稀有な本だった。良い本と巡り会えた。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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