カーブの向こう,ユープケッチャ (新潮文庫 あ 4-20)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121208

作品紹介・あらすじ

突如記憶が中断してしまい、謎に満ちた世界を手探りで行動する男。現代人の孤独と不安を抉り出し、『燃えつきた地図』の原型となった『カーブの向う』。自分の糞を主食にし、極端に閉じた生態系を持つ奇妙な昆虫・ユープケッチャから始まる寓意に満ちた物語、『方舟さくら丸』の原型となった『ユープケッチャ』。ほかに『砂の女』の原型『チチンデラヤパナ』など、知的刺激に満ちた全9篇。

感想・レビュー・書評

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  • 公房の初期作品短編集。のちに長編として書かれる作品の原型になる短編がいくつか読めるのが興味深い。「チチンデラ ヤバナ」→『砂の女』、「カーブの向う」→『燃え尽きた地図』、「ユープケッチャ」→『方舟さくら丸』。

    さくら丸は未読なのだけど、「ユープケッチャ」はいかにも未完の、長編のプロローグとして書かれているので、さくら丸も近いうちに読んでみたい。謎の昆虫ユープケッチャが気になる。「チチンデラ ヤバナ」も昆虫の名前だし、「月に飛んだノミの話」はタイトルそのままノミや害虫の話だし、公房は虫が好きだったのか(笑)

    いかにも公房っぽいSF仕立ての「完全映画」が面白かった。逆に公房らしくない(?)ホラー系の「子供部屋」も。「探偵と彼」は、一見すると子供がよくやる無邪気な探偵ごっこのようだけれど、だんだんその子供の思い込みの激しさが狂気じみてきて変な怖さがあった。

    ※収録作品
    「ごろつき」「手段」「探偵と彼」「月に飛んだノミの話」「完全映画(トータル・スコープ)」「チチンデラ ヤバナ」「カーブの向う」「子供部屋」「ユープケッチャ」

  • これは大傑作!!!1冊で安部公房の魅力がたっぷり詰まっている。表題作ひとつ目は『燃えつきた地図』の後日譚である。もうひとつは公房ファンなら察しがつく『箱舟さくら丸』の原型である。なんと言っても凄いのは『砂の女』の原型「チチンデラ ヤパナ」。この時点で物凄い傑作になりそうな予感を漂わせているし、短編としても完結している。「月に飛んだノミの話」はポップでとてもかわいい1編だ。「ごろつき」や「手段」は初期公房の未発表短編のような雰囲気である。気に入ったのは「完全映画」。これも長編にふくらますことができそうな素晴らしい短編である。「子供部屋」から漂うほのかなホラーもまた良い。1冊で何度も何度もおいしい素晴らしい短編集だ。惜しむらくはこれが絶版であるということ。有名作品の習作が多いからであろうか。残りの短編だけでも拾って短編集を編んでほしいものである。

  • 半年ほど前に読んだのですが、先ほど全集で『ユープケッチャ』を再読したので感想を書こうと思います。記憶が薄い短編もありますが。
    安部公房生前最後の短編集。新しいものばかりではなく、『砂の女』執筆直前の1960年に書かれた『チチンデラヤパナ』も収録されている、安部公房を語る上で超重要な短編集。
    なぜかこの短編集は現在中古でしか手に入らない。新潮社はこの短編集を廃版にしてしまったのだ。意味が分からない。『砂の女』『燃えつきた地図』『方舟さくら丸』の原型となった短編を収録しているのに、この扱いには納得が行かない。やっぱり売り上げが悪かったのだろうか。例え夏目漱石の小説でも売り上げが悪ければいくらその作品が作家を語る上で重要だろうと廃版になってしまう。ある程度は仕方がないが日本の出版社の悪しき慣習である。
    半年前に読んだときには『ごろつき』『月に飛んだノミの話』が面白いと思った。しかし内容は忘れてしまった。ノミのほうは読んでいてかゆくなった記憶がある。『カーブの向う』は『燃えつきた地図』の原型となった短編だ。『燃えつきた地図』のエピローグはこの短編が丸々あてられている。探偵が記憶をなくす話だ。個人的に『燃えつきた地図』が安部公房作品のベストなので、この短編には思い入れがある。『ユープケッチャ』は『方舟さくら丸』のプロローグ。主人公のもぐらくんが出てくる。この『方舟さくら丸』、登場人物全員悪人という珍しい体裁を取っている。全部詐欺師という中原昌也の小説の帯に書いてある言葉が似合う。痛快?といっては語弊があるかもしれないが、爽快感のある話だ。『チチンデラヤパナ』は少し記憶が薄いので今回は割愛する。詳しく知りたい方は『砂の女』の皆さんのレビューを見てもらえればわかる。
    俺にとって大切な短編集。読んでみてください。アマゾンのマーケットプレイスで安く売っているので。

  • 若書きが目立つ。発想の種は見えるが、いい意味の疾走感はなく、絶版になったのがなんとなくわかる。とはいえ「月に飛んだノミの話」や「子供部屋」など著者特有の良さがでた作品も見逃せない。「チチンデラ ヤパナ」は名前を変え、のちに伝説となった。

  • そりゃ全集に入っているけど、野晒し50円で投げ売られてると保護してしまうとです…

  • ユープケッチャとはなんだったのだろうか

  • 大好きな「燃えつきた地図」の原型となった「カーブの向う」が収録されているとのことで読んでみました。

    「カーブの向う」含め、短編が9篇収録されています。

    読んで知ったのですが、「砂の女」の原型となった「チチンデラ ヤパナ」と「方舟さくら丸」の原型となった「ユープケッチャ」も収録されています。

    9篇それぞれ面白く、個性的なんですがこの中で私が気になったのは「ごろつき」です。
    うーん、自分の好みが分かってきたかも・・・。

    砂の女と燃えつきた地図はもう読んでしまいましたが、方舟さくら丸はまだなので、短編とどう違うか読み比べるのが楽しみです。

    普段より★が低い評価ですが、普通に面白かったです。
    ただ私は安部公房作品は長編の方が好きです。
    短編は普段にも増して、はっきりしないまま終わってしまうのでw
    本自体はすごく読みやすいし、安部公房入門書として良いのではないでしょうか。

  • 安部公房を読むなら、この本から入ると良いかと思います!!
    小品ですが、本当に傑作ぞろいでオススメですvv

  • 読破

  • これもまた発想・設定が大変おもしろい短編集。常に見え隠れする不安感・孤独感にうっとり。「チチンデラヤパナ」「月に飛んだノミの話」「ユープケッチャ」と虫が出てくる話が多く、そしてこの3つが好き。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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