孤高の人(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 239
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122038

感想・レビュー・書評

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  • 登山をする者として、馴染みのある山や地名が出てくることが、より小説への没入感を増す。フィクションとノンフィクションがミックスされたような作品だそうだ。
    今回は上巻。これから下巻に入る。まだ物語は始まったばかりだ。

    主人公は加藤文太郎。実在した登山家だ。
    彼がエベレストの登頂を目指すことから物語は大きく動き出す。

    本格的な登山の描写が出てくるまでに、少々読み進めなければならない(退屈)。
    登山に例えるなら稜線までの登りだ。そこを越えると常念岳から蝶ヶ岳への縦走のように素晴らしい景色が見えてくる。といっても冬山がメイン。山行はみっちりと描かれるが、読んでいて私は「こんなもん無理やて・・・」と畏敬の念を抱くしかなかった。

    ついつい忘れがちだが、まず時代が違う。大正の末から昭和の初期にかけての話だ。
    装備、食料、山小屋や登山者用の目印だって今とは比べ物にならないお粗末な物だろに・・・

    また、加藤の不器用さが歯がゆい。
    「そこ素直になろっ!」って言いたくなる場面が無数にある。今の時代なら、発達障がいとして分類されるであろう加藤の行動や反応、執着はどのように認知されていたのだろうか。著者はどのように彼の人格を作り上げたのか。
    女性への加藤の内心やその関係を描く場面も多くあるが、個人的にはもうちょっと省略してほしかった。なんせ、話がダレる・・・

    とは言え、加藤を見込んだ人々のサポートを受けながら、彼はことごとく山を踏破していった。

  • はじめて読んだ山岳小説。
    とても面白い。

  • 1人で山登りをする方にとって、まさに孤高の人。主人公の人物像が「いかにも変人」ぽく描かれていますが、実際はそこまででも無かったらしいという噂です。ただ、工夫して、下準備をして、実行に移し、改善していく、いかにも理系っぽい人だなぁと思います。
    とりあえず下巻まで突貫で読んで再読する予定!

  • 加藤文太郎を描く山岳小説。
    著者は新田次郎だが、加藤文太郎本人が書いたようなリアリティのある文章。

  • 時代背景が古くところどころ難しかった。

  • 今でいうとコミュ障のウルトラマラソンランナーのはなし

  • 山好きには外せない一冊だと思う。

  • 積読本になっていましたが、なんとか読了。

    山の厳しさが伝わってきましたが、知識や関心に乏しい人には読み進めるのが難しいと思います。
    下巻には進まない予定です。

  • 昭和初期に「単独行での厳冬期縦走」で勇名を馳せた登山家、加藤文太郎をモデルにした小説。

    新田次郎氏の小説は、どこまでが史実でどこから虚構なのかが判然としないんだけど(プロットや情景描写、セリフまわしなどは虚構であろうと思われる)、その虚構が何といっても面白い。

    山になぜ登るのか。冬山とはなにか。雪とはどういうものか…単独行と孤独の狭間で揺れる主人公の思考に託して展開される機微に満ちたヤマ哲学。それらは、新田氏自身がヤマ歩きを通してしきりに考えたものであるに違いない。
    その豊かなディテールが、岳人をいまも惹きつけてやまないのだろう。

    読み進めるにつれて、(新田氏の小説のカラーだが)沈鬱な空気が漂い始めたりはするけれども、一気呵成に読了した。

    (余談だけど、「孤高」と「偏屈」は表裏であると思われ^^;)

  • 『八甲田山死の彷徨』と『剣岳<点の記>』が面白かったので、それよりもレビュー評価の高い新田次郎作品ということでこちらに手を出してみたが、肩透かしを食らった。

    戦略、戦術、葛藤、心情の機微、が細やかに綴られ、世界観・空気感が香るような文章を好むからだからだろうか。また、登山に興味はあるが、登山家に興味はないからだろうか。好きな本には何らかの形で共鳴する要素があるが、全く共鳴できなかった。理屈で探せば自分との共通点はたくさんあげられそうなのにもかかわらず。

    駄作だとは思わないが、残念ながら自分には合わないため今後面白いと感じるとも思えないので、下巻は読まない。

著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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