孤高の人〈下〉 (新潮文庫)

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著者 : 新田次郎
  • 新潮社 (1973年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122045

孤高の人〈下〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 山の本はノンフィクションに限ると思い込んできたので、名作の誉れ高い本書も未読だったのだけど、「本の雑誌」6月号山の本特集でどうも気になり、読むことにした。出だしはいかにも「小説」っぽい感じで、うーん、上下二巻読めるかしらんと思ったが、意外にもその後すぐにひきこまれて、結局ほとんど一気に読んでしまった。

    何と言っても孤高の登山家加藤文太郎の人物像がいい。自分の思う道を一心に突き進むまっすぐな人柄だが、口が重く人付き合いが苦手で、敵を作りやすく誤解されやすい。それでも、彼の個性を愛し、支えてくれる人もまた少なからずいる。どういうわけか、上巻の途中から、加藤文太郎の脳内イメージがピース又吉(「火花」の人ね)の姿になって、最後まで頭から離れなかった。孤独を好みながら、時に孤独を耐えがたいことと思い、そういう自らの心理を突き詰めて考えていくところが、似ているように感じたのかもしれない。

    また意外に思ったのは、当時(戦前)の社会情勢がかなり描き込まれていたことだ。山行の話中心の山岳小説だと思っていたが、これはかなり違う。全篇に、ひたひたと戦争に向かう社会の重い空気が漂っている。加藤文太郎の決して明るいとは言えない個性と、こうした背景が相まって、独特の作品世界を作っていると思った。

    加藤文太郎は、限られたエリートのものであった登山を、一般の社会人にも拓かれたものとする先駆けとなった人とされるそうだ。登山をめぐる状況も、社会の変化につれて大きく変わったのだなあとあらためて思う。また、作中に描かれる女性や家庭のありようも、いたって当然のことながら、きわめて古い。そうしたなかで、ただ一つあんまり変わってないんじゃ?と思ったのが、会社と、そこでのしがらみだ。なんだか苦笑してしまう。

    終盤の槍ヶ岳行は、さすがの迫力で、最初からその悲劇的結末が示されているのに、息詰まる描写が続く。加藤文太郎その人がまさにこうして最期を迎えたのだろうと思わせる、真に迫ったものがある。英雄として美化しすぎず、それでも心を寄せずにはいられない人物像が描き出されていて、胸を打たれた。

  • 孤高の人、読み終わった。実在した主人公の加藤文太郎は素晴らしい人だ。結婚するまで変人と言われながらも、本当に山を愛し山に死んだ山男である。自分の信念を貫き通す事が出来ず、他人のペースに巻き込まれて最後となった結末はとても残念だ。
    信念を貫き通す事の大事さを痛感した。
    結末結果は知っていたが、なんとか頑張ってほしいと力が入り、最後は涙をこらえながら読了した。素晴らしい小説です。

  • ひたすらに山に登る人付き合いの苦手な社会人登山家の話。
    仕事もしっかりやり、だれに迷惑をかけるわけでもなく、無欲に登山をするだけなのに、周囲の人の欲に引きずり込まれ最終的には命までもなくしてしまう。
    幸せだったのか、そうじゃなかったのか、人によって感じ方は違うと思うが、なんだか幸せとかそういうものとは階層の違うところの人生に思えた。

  • 加藤文太郎の出身地の町報でこの本が紹介されていたのが読み始めたきっかけです。この本は町民全員に読んでもらいたい。上巻と下巻では加藤文太郎に対する印象が随分変わってくるので、必ずセットで読むように。

  • 破滅に至るまでの描写が、
    「八甲田山死の彷徨」を連想させる。

    無謀な計画に対して、山はとても厳しい・・・
    そして、加藤文太郎もそれに引きずられてゆく。
    その心理の切なさが、なんとも歯がゆい。

    結婚して、子供も産まれて、
    人と共にあることの素晴らしさを痛感した途端、
    このような結末を迎えるとは、なんと残酷なのだろうか。

  • 引き込まれて行く内容。
    山の素晴らしさ、山の恐ろしさの両方を改めて感じ、
    胸が詰まる思いです。

  • (以前の管理履歴から引用)

    古書店にて下巻は100円で購入。

    漫画の「孤高の人」は重いらしいんだけど、
    こちらは好き。
    ただ、後半終わりの文太郎の山行の件が何故だかしっくりこない。
    自分の中にわだかまりが残るのはなぜだろう。

  • 多分、雪山登山だけはしないと思う。
    ラストは胸がつまってしまった。

  • 単独行の加藤文太郎。昭和初期、富裕層の人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々をひとり疾風のように踏破していった彼の生涯を描く。なぜ山に登るのか。本当の優しさとは、本当の強さとは何か。様々なことを読者に訴えかけてくれる名作である。登山が好きな人はもちろん、そうでない人にも是非お勧めしたい作品。

  • 再読。
    読めば読むほど、主人公は、こういう人じゃないだろう!
    って思いが大きくなっちゃって、
    加藤さんの「単独行」まで読んじゃったよ。
    それを読むと、より一層、この主人公は違うよなあ。
    としか思えない!
    登山の楽しさ、厳しさ、を感じさせてくれるので、
    そこは楽しく読めるのに。
    人間性が違うんじゃないかなあ、なんて。
    その人の事を知りもしないのですがね。

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