孤高の人(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122045

感想・レビュー・書評

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  • 極限状況の妥協は死を招くということがはっきりとわかる。
    現代においても軍人は戦場においては、妥協や命令違反は死に直結するため、普段から厳しい訓練を課しているのだろう。
    それに比べてサラリーマンのなんと気楽なことか。
    予算未達でも命は奪われないし、解雇もされない。
    現代の日本に生きる幸せをあらためて感じる。

  •  やはり加藤文太郎は山に消えたか。花子は、文太郎が最後の山行へ出掛けるとき、彼との永遠の別れになることを感じていたんだな。花子は、文太郎の後輩宮村と会ったとき、宮村の顔に死の影を見た。しかし加藤と宮村はザイルを組んで、厳冬期の危険な山域へ出掛けていった。

     当時の時代背景や、加藤文太郎が勤める神港造船所の人間模様、加藤のかたくなまでに人を寄せ付けない性質などが表現されている。そして、会社休みを利用して行う、人並み外れた冬山縦走の描写が楽しい。加藤も一人の登山家として、山を純粋に愛していたんだなと思う。
    大きな運命に身を任せ、加藤は自ら死を選んでしまったように思える。山で死ねることは本望だと。花子は、文太郎のそんな生き様を知っていた。そして、花子もまた運命の奔流に逆らうことはできなかったのだ。
     
     家で待つ花子は、文太郎の声やその足音をはっきりと聞いた。しかし彼の姿はない。柱時計の振り子が止まったとき、花子は文太郎が死んだことを確信したのだ。花子は幼子に言った。今、あなたのお父さんがお別れに来てくれたと…。そして花子は声を上げて泣いた……悲しく切ない話だ。
     

  • 宮村にパーティを組んでくれと誘われた時から、加藤に死が色濃くまとわりついてきて息苦しくなり、読むのが怖かったです。死に向かう選択肢ばかりを選んでしまった加藤。周りの人々も、後悔が大きいでしょう。彼には、ヒマラヤに登って欲しかったです。

  • 意中の人と結ばれて子供もできて仕事も人間関係も順調と。ここで山を辞めていれば幸せな人生が約束されているのに・・などと読みながら思ったり。せめてこれまで一人で築き上げた山でのルールを守っていれば、、上巻で結末がわかってはいたものの助かってほしかったなあ。下山から最後までは一気読みでした。


  • 読了できず。おもしろい本だとわかっているものの、無念。またいつか。

  • せつない。結末を知って読んだのに悲しくなった。
    登山をするようになって登山関係の本、特に緊急時対応について調べていたときに見つけた小説。夏中に読みたかったけど真冬になってしまった。
    明日は我が身。できることが多ければいろいろなことができるけど、自分が元気であることと、自分のヒトとしての限界を知っていることは、いつでも大切なことだ。。
    3日くらいに分けて読むつもりだったのに、徹夜で読んでしまった。

  • 2回目読んだけど、グッとくるなんてもんじゃない。

  • 最後の北鎌尾根までが長かった。それでもやはり、山の描写はさすがって感じ。

  • 『孤高の人』と題された物語が、パートナーとの死をもってしてクライマックスを迎えることは、とても皮肉的であった。そういう点では、山でしか生きることのできない、デルス・ウザーラの運命に通じるのではないだろうか。

    しかしながら、デルスは幸福をもってして山で自らの運命を閉じたのだが、加藤文太郎の場合、そうではない。
    彼の場合、山にいながらも最後は花子や娘のことを思うなど、結婚を機にして変わった今の生活に幸福を見出し、そのことを思いながら、彼は死んだ。
    だが、山は加藤が望むその運命を認めることができなかった。それでもなお、宮村とのパートナーとしての友情を確認、すなわち新しい幸福は味わったのかもしれない。

    なぜ山を登るのか、という問いに対しては、小説上「自分を再発見するため」とある。
    まさに彼はラスト、意識がもうろうとする中で確実に新しい自分を再発見したのではないだろうか。

  • 20140915読了。
    無口で黙々と仕事をこなし、山で自分を開放する文太郎だが、結婚後の変貌ぶりがほんわかポイント。しかし、ラストに向かって辛くてたまらなかった。
    花子さんの虫の知らせ、第六感が行くなと言っているのにも関わらず行かせてしまったその後悔が突き刺さる。
    そして冬山の厳しさ。死に向かっていく姿。耳元で風の音が聞こえるかのような描写にやられてしまった。

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著者プロフィール

新田次郎
一九一二年、長野県上諏訪生まれ。無線電信講習所(現在の電気通信大学)を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。五六年『強力伝』で直木賞を受賞。『縦走路』『孤高の人』『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、七四年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。八〇年、死去。その遺志により新田次郎文学賞が設けられた。

「2022年 『まぼろしの軍師 新田次郎歴史短篇選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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