梅雨将軍信長 (新潮文庫)

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著者 : 新田次郎
  • 新潮社 (1979年11月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101122199

梅雨将軍信長 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 元気象庁の公務員だった新田次郎は、季節や山の小説を多く書いている。
    これは梅雨を利用し桶狭間に勝利した信長、日本アルプス越えで大損害を出した佐々成正など、歴史人物と季節とを結びつけた話で着目点が面白い。
    新田次郎の歴史と気象を結びつけた作品は他に「赤毛の司天台」。こちらは江戸時代の気象庁のような司天台に勤める男が、雨を当てやすい体質ということから、日本人と気象との係わりを書いている。

  • 『女人禁制』憑かれたように頂上を目指す姿に、以前のTV番組で見た芸人のイモトさんを思い出した。考え過ぎかもしれないけれど、女人禁制の山を男装して制覇するのが、男子禁制の大奥の奥女中であるという対比が面白い。
    タイトルの『梅雨将軍・・・』『時の日』以外は江戸時代が舞台なので、鎖国の閉塞感と、それを突き破ろうとするエネルギーのようなものを感じる。
    本人にその気はなく、ただ、何かに打ち込んでいるだけなのかもしれないけれど、権力や保身、金儲けに明け暮れる役人たちと全く別次元に生きる姿が潔い。
    『隠密海を渡る』はハラハラした。『女人禁制』と同じく、最後にしがらみを捨て去った主人公の姿が爽快。
    タイトルの『梅雨将軍信長』だけが、戦国という時代背景もあって、儚い滅びな結末・・・
    気象が重要な鍵を握り、他の作品とのつながりはあるけれど、少し雰囲気が違う気がする・・・が、本のタイトルになっているのはやはり、他の主人公では本を手に取らせるインパクトが弱いからなのかな?

  • 新田次郎の歴史“科学”小説9篇。
    「梅雨将軍信長」梅雨に活路を拓き、梅雨と共に消えた信長。
    「鳥人伝」18世紀中期〜19世紀中期の日本で空を目指した町人・幸吉。
    「算士秘伝」刀よりも数学に生きた侍、久留島義政。
    「灯明堂物語」灯台を管理する漁村を描いたほのぼのストーリー。
    「時の日」大化の改新前夜、日本初の“時計”が完成。
    「二十一万石の数学者」数学に生涯を捧げた大名。
    「女人禁制」女性初の富士山登頂。
    「赤毛の司天台」幕府直轄の天文台VS町の天気予報士。
    「隠密海を渡る」幕府の徒目付(内偵)近藤主馬之助が暗闘する、江戸の探偵物語。

  • 歴史に斬り込む視点の開拓として、非常に意義があると思う。そしてこれは単に歴史を考えるというだけではなくて、人が、気候環境のうちでいかにその営みを紡いでゆくか、そうした角度からの人間のあり方への提言。

    それにしてもこのひとの小説は本当にケレンがなくて、美しい。他の作品でもそうだが、淡々と人が死んでゆく。人の死に対して、もっとも誠実な描写であると思う。

  • 織田信長が桶狭間の合戦で今川義元を倒したのも、長篠の合戦で武田勝頼に勝利したのも、梅雨を味方にした(つまり天候を利用して)結果であるといふのです。
    それを可能にしたのは、信長のところに寄寓してゐた平手左京亮といふ男の天気予報でした。
    この平手左京亮、軍師ではないのですが、策戦会議には必ず参加し、その発言は皆から一目置かれてゐたやうです。彼は小鼓を打つことで気(大気)をうかがひ、天候を読んでゐたのです。
    信長が雨によつて運気を動かしてゐると見抜き、実に的確な策を具申したのでした。
    そして本能寺では、乾気によつて気が変る男が側臣にゐる筈である、と注意をしたのであります。
    さう言はれて信長は明智光秀のことをちらりと考へたが、「まさか」と打ち消してしまひます。そして結果は周知の通り。
    気候の面から信長の運気を解明するといふ、斬新な視点の「梅雨将軍信長」。山岳小説も良いが、これはまことに意表を衝かれた一篇と申せませう。

    本書には他に8編の短編・中篇が収録されてゐます。いづれも「時代科学小説」(作者自身の命名)であります。
    「鳥人伝」では、薄倖の主人公が最後に、かつて愛した女性に空を飛ぶ姿を見せる場面が切ない。
    「算士秘伝」における、今でいふ学閥の馬鹿馬鹿しさは全く腹が立ちますな。
    「灯明堂物語」の堂守役は、めまぐるしく変る政情に翻弄されます。頑張れ!と言ひたくなります。
    「時の日」は、大化の改新を漏刻(古代の時計)をテエマに描きます。
    「二十一万石の数学者」とは、久留米藩主の有馬頼徸(よりゆき)のこと。時の将軍吉宗から高い評価を得ますが...
    「女人禁制」は、大奥女中同士の言ひ争ひから、お加根といふ女性が男装して女人禁制の富士山の頂上に登る話。封建時代の辛さ、愚かしさが伝はります。
    「赤毛の司天台」の浪人、安間清重は下着の湿り具合で天候を予知してゐた(何日も同じ下着を穿き続けるのだつた!)が、赤毛の女性と結婚し、清潔な生活に馴染むと、予知能力が低下してしまつた。しかし...
    最後の「隠密海を渡る」。絵島事件を扱つてゐますが、上役を信じ、立身出世の為忠実に役目を果たす主馬之助に昭和30年代のモーレツサラリーマンを感じます。全く世の中は理不尽だらけ、しかし最後に愛し愛される女性と一緒になれて良かつた。

    新田次郎さんは、これらの「時代科学小説」を開拓したいと意気込んでゐたやうですが、当時は芳しい評判を得られなかつたさうで、結局その後は同系統の作品を書くことはなかつたとのことです。まことに残念。当時の時代小説読みには突飛な設定と考へられ、少し時代を先取りしすぎたのかも知れませんね。

    http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-69.html

  • 歴史小説シリーズ第二段

     今度は信長側から見た歴史。

     信長も必死だった様子がよくわかる。一か八かの賭けに勝った信長は、その後賭けに敗れ本能寺で自刃するわけだが、それまでのクライマックスが描かれており短編ながら面白い。

     武田信玄が長すぎたこともあり、このくらいの短編のほうがピリっとしていいかもね。

     短編集だから、信長だけが出てくるわけではない。飛行機あり、天気予報ありなんだが、面白いのは算術(和算)関係の作品。2編(算士秘伝、二十一万石の数学者)登場するがいずれも鎖国時代の日本をある角度から描いたものとして興味深い。

     蘇我入鹿打倒の「大化の改新」と「時の日」をくっつけた秀作「時の日」もいい味だ。個人的にはこれが一番だった。

     富士山を背景に借りた「女人禁制」も新田次郎らしい山の作品だ。なかなかいい短編集だった。

     作品は以下のとおり。

    梅雨将軍信長
    鳥人伝
    算士秘伝
    灯明堂物語
    時の日
    二十一万石の数学者
    女人禁制
    赤毛の司天台
    隠密海を渡る

  • いくつかの短編と一つの中編小説。特に中編がよかったですがいずれも読み応えがあり面白かったです。

  • 短編9編からなっている。
    新田次郎は私の好きな作家ベスト5に入っている。
    山岳小説では多くの名作を書いているが、技術者や科学者を描いた時代小説も多い。
    この本に収められているのは信長以外はその類のものである。
    「信長~」は気象学者らしい作品になっている。

    市井の変人だが、個性ある優しい人物が描かれていて、どれも私の期待を裏切らなかった。

  • この作者でこのタイトル、気にならないわけがないです!

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