- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101122212
感想・レビュー・書評
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読了後、放心状態。(9月はこの感じ多い)
読み終わった後に涙が。。。
それくらい心打たれる作品でした。
アラスカの地でエスキモーの救世主となったフランク安田の生涯を綴った作品です。
戦前~戦後の時代に、日本とはかけ離れたアラスカで90歳で亡くなるまで激闘の人生を送った人物。
(この本読むまで彼のことは知らなかった。。。)
正直、日本人っていうこと以外、共通点がなかったので読み切れるか自信がなかったのですが、冒頭(極寒のアラスカの大地に投げ出されるフランク安田)から物語に引き込まれます。
詳細は省きますが、この小説がなぜこんなにも魅力的に感じたのか、自分なりにまとめてみました。
3つの視点が相乗効果を生み、物語に厚みを出していると思いました。
①フランク安田の視点
彼は自分自身が生きるため、エスキモー達を救うために、幾度となく厳しい決断を迫られます。
フランクの命は彼一人の命ではなく、数百名のエスキモーの命でもあります。数々の苦境が訪れる度に迫られる決断。その決断をする際、彼はキーとなる人物に絶対的な信頼を寄せます。一度信用した人間は、誰が何と言おうと信じきるのです。
自分の経験(話す内容、使う言葉、人と接する時の態度、表情等)とあらゆる角度で、その人物を分析し、信用に値する人物かどうかを時間をかけて見抜いていき、運命をその人物に委ねます。
間違いは許されないプレッシャーの中で迫られる決断。
私はそこに、現代で言えば経営者たるものの姿を見た気がしました。
一本芯が通った真っすぐな性格ですが、それを表に出さない。そんな彼の人間性にも魅力を感じました。
②フランク安田を支える妻・ネビロの視点
エスキモーの中では勉強熱心で、現代的な考え方をするネビロ。陰ながらフランクを支え続けます。
フランクを心から尊敬し、信頼し、彼の右腕となりエスキモーだけでなく、自信の子どもも守っていく。
苛酷な環境の中で自分の守るべきものをひたすら守っていきます。
彼女の生きざまを見ていると自分が恥ずかしくなりました。もし、自分がネビロだったら、その大役を全うできるだろうか。また、あの環境の中、誰を恨むこともなく、夫だけでなく、他人を敬う気持ちを持てるだろうか。
あまりに平和な世界にいるせいか、人として大切なものを忘れてしまっていることに気が付きました。
③著者・新田次郎の視点
「アラスカ取材紀行」という章が最後にあるのですが、「アラスカ物語」のその後、ともいえる内容になっており、こちらも胸打つものがありました。
著者の綿密な取材、それを臨場感あふれるものに仕立てあげ読者に伝える。アラスカの自然環境、歴史的背景、移り行く時代。文章を読み進めると、フランク安田の生きてきたアラスカの大地が目の前に広がります。彼の崇高な文章力、表現力、構成力があってこそフランク安田の人間性に厚みがでたのだと思います。
そして、なんと言ってもラストが美しい。
涙なしではいられません。
”「ネビロ、出てごらん、ダイヤモンドダストが日和山に振っている。きれいだなあ」”(抜粋)
人は死ぬとき、人生で一番見たいものが目の前に現れるのかもしれません。老年、日本に帰るチャンスが何度か訪れましたが、フランクが日本に帰ることはありませんでした。人生の最期に彼が呼びたかった名前は誰だったのでしょうか。
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十五歳で日本を後にし、アメリカからアラスカにわたり、エスキモーの女性ネビロと結婚し、飢餓から一族を救出したフランク安田の物語。
3年を費やし、200人余りのエスキモーを南下させ、ブルックス山脈を越えて、ビーバー村に移住します。
その活躍から「ジャパニーズモーゼ」とも呼ばれています。
不屈の精神、無私の心、すごい一生です。
フランク安田の存在を今まで知りませんでした。
感動しました。 -
米国沿岸警備船のキャビンボーイとして渡米し、海獣の乱獲によって飢餓に瀕していた海岸エスキモーを率いて民族移動を達成し、ビーバー村を設立。フランク安田こと安田恭輔。東北での腕白な子供時代の安田恭輔とアラスカでジャパニーズモーゼと謳われたというフランク安田の数奇な人生を新田次郎が綴った小説。
100年以上経ち、移動のし易さという意味で世界は小さくなったように感じるが、人の人生の奥行きも小さくなってはいないか?
2020.3.29 -
一度アラスカの地に降り立った後は日本に後ろ髪を引かれながらもエスキモー達のために全身全霊で尽くしたフランク。
日本、アメリカ、エスキモーの魂を持つ彼が晩年に戦争の影響でアメリカによって強制収容所に入れられたのは人生における不条理極まりない。
ネビロがアラスカの地にフランクを縛り付けているような気もしたが、フランクが日本に一度足を踏み入れたら帰ってこない気がするのも無理ない。
彼がいなければエスキモーは生き残ることさえ困難になり、今の時代に血も伝統も受け継ぐことができなかっただろう
こんなにも偉大な日本人を私たち日本人はもっと知っておくべき
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昔、著者の「銀嶺の人」を読み、いたく感動して「登山したい!」と思った記憶が蘇った。
この度は、アラスカで、オーロラを観たい!ユーコン川が凍っていく様を観たいと、思わず駅にあるアラスカオーロラツアーのパンフレットを手に取ってしまった。
でも80年近く前のこの物語の風景は既に幻か。それにマイナス40℃ムリ。 -
フランク安田さんの生涯。こんな人がいたなんて知らなかった。
すごい苦労があったと思う。そして暑い日には読む極寒はいい。 -
後世に語り継ぎたい日本人の偉人である。
新田の綿密な取材と筆力あふれる大作。昔ながらの気質ながらやりとげる意思のある人物が魅力。女性も頼もしくてよろしい。失われた美徳を見るのはいいことだ。 -
2019.2.2読了(図書館)
☆5 -
大河小説というのだろうか。極北の大地でエスキモーの信頼を勝ち得た主人公の一生が圧倒的迫力で綴られている。