白い人・黄色い人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123011

感想・レビュー・書評

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  • とんでもなく読みづらい本。
    言いたいことだけ言う感じの、まさに初期作。
    「海と毒薬」でも思ったが、戦争が諸悪の根元としか思えず。
    日本人の神問題は、「武士道」に答えがあるとわたしのなかでは決着済。
    著者のその後の作家活動を考えれば、大いに意義のある芥川賞だと思う。

  • 白と黄色という色をタイトルにした意味が遠藤周作らしいと思う作品。

    二作品はどちらも読みやすい分量。

    白い人はフランス人なのにナチの手先となり拷問を加える側になる。
    黄色い人は、第二次世界大戦に入ろうかと言う頃、日本人クリスチャンが教会や神父を売る、良心とは神とはを日記というものを通して描く。

    どちらもキリスト教が下地にあり、キリストの教えを知らないものとしては一つ一つが新鮮であった。

  • 初めての遠藤周作作品を読んだ
    キリスト教について他の作品も読んで理解を深めたい
    この本を読んでから自分にない信仰心について考えさせられる毎日

  • 遠藤周作氏の「沈黙」や「海と毒薬」、「深い河」等をこれまで読んだが、そこで出てくるテーマの前兆が、この本にも見え隠れしている。

    肉欲(サディズム含め)、日本人の良心・罪意識のなさ、異文化で根付かぬキリスト教、そしてだれかにとってのユダ、、、
    裏切りの心理描写が絶妙。

    うーん。遠藤氏は良心の呵責を(少なくともはっきりとは)感じない日本人をよく描いているけれど、自分は全体的にそこまで無感覚ではないと思うなあ、、、

  • 遠藤周作の小説を理解するためには、やはりある程度のキリスト教的風土、知識の面ではなくキリスト教のあの雰囲気あの考え方の中に投入されたという経験が不可欠だと感じた。キリスト教にとって神はどういった存在なのかということを肌で感じたあの期間が確実に私の中で生きている感覚を、この人の本を読むと何度でも味わわされる。
    白い人では本当に、キリスト教徒にとって神がどういう存在なのか、ということを。ファシズムの陰が落ちるフランス、言うならば計画的国家的殺人の淵に立たされた極限の状態においてこそ際立つ、書きがいのある、キリスト教信仰のあり方について。逆説的な主人公を置くことでより鮮烈に信仰が際立つ。黄色い人では、汎神論的風土における神の存在を。決して無神論的風土でないのが重要だと思った。なんまいだ、と唱えると汚れた人間の罪ごと救ってくれる神が治めてきた土地で、原罪や孤独などのキリスト教的価値観が真に根付く可能性の限界。この人はどうして、こんなにも否定しながらキリスト教を追及していったのか。その追及の過程に寄り添うことがわたしにとっても非常に意義深いことです。

  • 拷問に耐えうる人物か、拷問の仕方に情慾を感じるか感じないかを分析しながら眺めているのが面白い。
    なぜ神は人種など関係がないのに西洋の姿をしているのか、救いは無く苦しみを与える神とは何か、などなど、考えたくなる事柄が色々と出てきた。
    救いのない神ならば、信仰を捨ててしまえば自由になれる。デュランにそんな選択肢など思いつかなかったが、黄色い人たちはそれゆえ自由なのだと悟る。

    白い人(フランス人だが父はドイツ人であったため幾らかドイツ語を使えるため、ナチス・ドイツの秘密警察の事務官の求人に応募し、対象者を拷問し、仲間の名前や場所を吐かせる仕事に就く。過去に、病気の老犬が盗みを働いたため平手打ちしていたイボンヌの白い腿、曲芸で男の頭の上で芸をする裸の女など、主人公に歪んだ情慾を育む。神学生のジャックに縛られているマリー。ある時、ジャックが拷問対象となり、口を割らないためマリーを連れてきて、陵辱すると脅すと、舌を噛み切って自殺した。マリーは発狂した。)

    黄色い人(戦争で全てを失った女・キミコと関係を持ってしまったデュラン。たちまち噂は流れ、教会を追放される。神を信仰するも、罪の意識で苦しみ続ける。解放されるために、隠し持っていた拳銃を教会に隠して警察に密告し、金銭的援助をしてもらっていたにも関わらずブロウ神父を陥れる。空襲で、デュランもキミコも倒れる。)


  • 遠藤周作は作を重ねる毎どんどん平易で読みやすい文章になっていくが、初期は通読にかなり体力が要る。
    イエスとは何か・キリストとは何かという永年の主題に一歩踏み出した意欲作だが、主人公が殊更露悪的なのも本作の特徴かもしれない。

  • 文庫本解説メモ
    小説の主題について
    1神の問題について。キリスト教の伝統を持たない日本という汎神論的風土において、神はどのような意味を持つのか、或は神を持たない日本人の精神的悲惨ないし醜悪を描くこと
    2人間の罪の意識、情欲の深淵をのぞき人間実存の根源に神を求める意志の必然性を見出すこと
    3有色人種と白色人種との差別観への抗議
    4非人間的なもの、例えばナチズムに対する抵抗

  •  読み終えて解説を読んでみると、この作品は遠藤さんのごく初期の作品であることを知りました。内容がキリストの教えの部分が多く、後々の作品のように読者を惹きつけながらというよりも氏の考え方や伝えたいことが先にある作品だと思います。
     遠藤さんの作品がそのどれもに神が隠れていて神々しい感じがします。良い作品でしたが、面白いという様子ではありません。

  • フランス人の主人公がナチのゲシュタポとなって旧友ジャックの拷問やマリー・テレーズの凌辱に絡んでいく。神のためと言いながら自己陶酔することを許さず、ひたすらに悪魔的な思想と行動、その後の疲労に支配される。
    斜視・すがめで幼い頃から「一生、女たちにもてないよ。お前は」と顔立ちの醜さを宣言された父の仕打ちも影響している。クリスチャン遠藤周作の芥川賞作品、読み応えあったが、圧倒的な暴力に清々しさはない。
    最後のマリー・テレーズの歌は何を伝えたかったのか。
    薔薇のはなは、若いうち
    つまねば
    しぼみ、色、あせる

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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