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この作品に関連する談話室の質問
この作品からのみんなの引用
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「でも俺たち、いつか罰をうけるやろ」勝呂は急に体を近づけて囁いた。「え、そやないか。罰をうけても当たり前やけんど」
「罰って、世間の罰か。世間の罰だけじゃ、なにも変わらんぜ」戸田はまた大きな欠伸をみせながら「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。俺たちを罰する連中かて同じ立場におかれたら、どうなったかわからんぜ。世間の罰なぞ、まずまず、そんなもんや」
― 194ページ -
俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけや。俺たちを罰する連中かて同じ立場におかれたら、どうなったかわからんぜ。世間の罰など、まずまず、そんなもんや
― 195ページ -
「断らんのか」
「うん」
「神というものはあるのかなあ」
「神?」
「なんや、まあヘンな話やけど、こう、人間は自分を押しながすものから——運命というんやろうが、どうしても脱れられんやろ。そういうものから自由にしてくれるものを神とよぶならばや」
「さあ、俺にはわからん」火口の消えた煙草を机の上にのせて勝呂は答えた。
「俺にはもう神があっても、なくてもどうでもいいんや」
「そやけれど、おばはんも一種、お前の神みたいなものやったのかもしれんなあ」
「ああ」
みんなの感想・レビュー・書評
もともと読むのが遅い僕ですが、この多くない分量をじっくり時間をかけて読みました。
生きた人間を殺すのは良くないこと。
だが、それは一体何を根拠に…と考えるとき、確かに、私たち日本人には拠り所はあるのでしょうか。
倫理、良心、道徳…
宗教のような絶対的な寄辺がない私たちは、こうした抽象的な回答にならざるを得ません。
それがどれだけ不気味で危険なことか。
読み終わったときは何だかいつもより喉が乾いていました。
日常風景を少しめくれば見えてくる、不気味な現実。
戦時中、人体実験という方法で外国人捕虜を殺した九州の大学附属病院の面々の、実験当日に到るまでの心の揺れ動きを描いた作品。
「病院で死なん奴は、毎晩、空襲で死ぬ」「みんな死んでいく時代」に、
たまたま医学生だったから、彼らは人を殺したのか。
それとも、時代に関わらず、彼らは人を殺しかねない人間だったのか。
登場人物たちの罪はわかったから、罰のその後をもっと読みたかった。
望まれつつも続編は出されたなかったそうな。残念。
主要人物の勝呂が再登場する『悲しみの歌』を、次は読もうと思います。
言わずとしれた名著。このたび再読致しました。読む価値は大いにあります。
戦争末期に起きた米軍捕虜の生体解剖事件を小説化したもので、「日本人とはいかなる人間か」を追及する……と本著のあらすじは紹介しております。
念頭に入れていただきたいのが(本著の解説担当の佐伯彰一氏も述べておりますが)、この本が事件をセンセーショナルに取り上げたある種大げさな残酷物語ではないということです。読者が注目すべきは痛々しい事件そのものではなく、もっと奥深くにあるものです。
私はまだまだ学が浅いのでこれ以上の、深いことは述べられませんが、いままでに何度も読み返している小説のひとつです。日本という社会が岐路に立たされている現代、この小説が果たす役割は大きいのではないでしょうか。
中学もしくは高校受験のときの国語の問題で一節が出てたことから急に読みたくなって読んだ本。
仕方ないとはいえ、禁断の一歩を踏み出してしまった主人公の当時の話が中心。
何を信じればいいのかわからない、という言葉がやけに心に残った。
「神などいない」というテーマを沈黙から引き続き描いている作品。
この本を読むまで、九州で実際に起きた事件のことは知らなかったのだが、「日本人とは何か」を考えるきっかけとしてこの本は私にとって大いに意味のあるものとなった。
特に、死の意味について全体を通して読者に問いかけをおこなっているように感じられた。戦死や、胎児の死、病死、そして解剖実験における死など、その種類は様々であるが、その死をどう考えどう捉えるかにより、感じるものは全く正反対になることもあるだろう。
読む人によって、登場人物と誰に共感できるかが変わってくるのではないだろうか。
九州大学の生体解剖事件をモデルにしたフィクションである。 生体解剖というショッキングな題材を扱っているが、多分より恐ろしくよりショッキングなのはその行為に至った人間達がいかにも普通の人達であったという事実で、その人間達の普通な振る舞いと思考の様式が積み重なって(もちろんその普通な振る舞いをこういう方向に重ねることになる個別のエピソードというのは結構独特なものもあるのだけれど)最終的な事件に至... 続きを読む »
十数年前に読んだ作品だが、この映画を深夜にTV放映していたのを見かけ、再読。 東京西部に妻と越してきた「私」は、気胸の療法で勝呂という医者に会う。無愛想で殆ど口数がないが腕は確かなこの医者がある事件に関わっていたことを、「私」はひょんなことから知ることになる……。 太平洋戦争末期、九州のある大学付属病院で行われた米軍捕虜の生体解剖事件。この解剖に関わっていた人間の姿を通じ、作者は「神な... 続きを読む »
米軍捕虜を「使用」した、生体解剖実験に関わった医師のお話。
人を殺すのだという罪悪感に恐怖しながら、仕方のないことと言い聞かせて罪の意識を消そうとする、若い医師の葛藤が、真に迫ります。
内容は重いものですが、核心部分に到るまではそれほど暗い話でもなく、核心部分も少し物足りないくらいに淡々と描かれていますね。
膨らませようと思えばいくらでも膨らませられるエピソードも、深刻に描こうとすればもっと深く描ける場面も、一定以上は沈まないように、あえて抑えて書かれたように思えます。
何度も読み返せて、何度でも思い悩める、この短さが、逆に良いのかもしれません。
思ったよりは淡々としていた、というか短いような
そこがいいのかもしれないけど私には物足りなかった
ただ読んでおく本だと思うし何度も読みたい
ちょっとだけ読むつもりだったのに気付いたらのめり込んでた。気が急いて一気に読んでしまったからまた読むつもり
この小説に、日本人だから、無宗教だから、という説明はそぐわないと思う。毎日大勢の人間が空襲や病で死んでいく中、倫理観が麻痺し状況に流されてしまうというのは、宗教に関わらずあらゆる人間に起こり得ることだろう。勝呂や戸田が、世間の罰を受けた後己の犯した罪をどう感じたのかも描いて欲しかった。
自分が初めて読んだ遠藤周作の作品。
彼の一生のテーマであるキリスト教と日本人のあり方、或いは葛藤。
この海と毒薬もそのテーマが法っている。
人を救うために人を殺す。
それがどういうことか、罪に対する日本人のあり方を幾つかの視点で描く。
内容から常に淀んでいる重たい空気を発す文体は終始そのままで甘えなどは一切無く、ただ切実に時間は流れ物語は進む。
センターの過去問だかで一部分だけ読んで、以降ずっと気になってたので読みました。
読み終わって、自分の中に勝呂と戸田の両面があることに気付かされました。
なにより日本人の「罰を恐れて罪を恐れない」という、罪の意識の根源の所在を探るという題材は非常に面白いものであると思います。
人を助けたい、という気持ちを持った医師が、徐々に疲れ、流されて生体解剖に参加するまでを描いた作品です。私も同じ境遇だったら・・・と思うと背筋が寒くなります
分かりやすい言葉で、なおかつ情景が目に浮かぶ文体で、物語に引き込まれました。ラスト1文が特に好きです
第二次世界大戦末期、九州の医大で実際に行われた被験者を米兵捕虜とする人体実験をモデルとした話。
人の心とは裏腹に現実は目の前で容赦なく淡々と進んでいく。
また現実とは裏腹に医者の心は感情の色をなくしていく。
短編なのであっという間に読めてしまう。遠藤周作ならではの情景描写の効果、話の展開が重い話の筋道に反して軽快で、次の展開に期待をしてしまう。

言わずと知れた名作ですが通しで読んだのは初めて。戦時下の病院で繰り広げられる派閥争いと、その中で捕虜の人体実験に加わることになった医学生。ともかく暗くてエグくて読後感も最悪で、露悪的すぎるんじゃないか...





