スキャンダル (新潮文庫)

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著者 : 遠藤周作
  • 新潮社 (1989年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123295

スキャンダル (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • ものすごく深いと思った。多角的に読める。自分は、老いという視点から読んでいたように感じる。老いのもつ、プラスの面は、主に主人公の妻とのくだり。特に、終盤で二人で旅行に行く場面。私は、この女性を生涯の伴侶に選んだことに満足している、という一文に濃縮されている。優しい嘘が牙を剥くその瞬間も、ただ妻は優しくあった。この妻の姿勢は、老いを肯定的に捉え、その時間の経過を和やかに見守ってくれた神様の存在を彷彿とさせる。キリスト教に明るい遠藤周作ならではの視点だと感じた。逆に、ミツとの暗澹たるホテルでのくだりは老いを全面的に醜いものとして映し出す。自殺したマゾの女性の性癖は、それでも老いという醜さの中に一縷の望みを、作者の救いを求めていた。しけし、やはり全体を通して老いは否定的に捉えられていたように感じる。これは破滅型?の作品だという自分の捉え方が正しいのかすら分からなくなる。スキャンダルを醜聞と表現したところからも、作者の老いに対する思いが反映されているように感じた。

  • 遠藤周作本人を連想させる、主人公の小説家勝呂。敬虔なキリスト教徒であり、作家であるかれが新宿のいかがわしい界隈で女と遊んでいる姿が頻繁に目撃される。本人にはまるで覚えがない。

    無意識の具現化、いつまでも追いかけてくる、醜い自分というよりかは楽しみにifの果て、脅迫観念の権化という感じかな。

  • 自分とは正反対の醜悪な自分を目にする、また他人から見られる。一体どういう現象か。全くのミステリー。しかも明らかな解答を示さずに物語は終わる。しかし、巻末に収められた河合隼雄先生の解説が易しくひもといてくれる。2015.8.12

  • 河合隼雄先生が紹介していたので古本屋で手に入れて読んでみた。まあ、小説なので、先が早く知りたくてどんどん読み進めることはできたけれど、最終段階に至って、結局どうなのかあいまいなままで終わってしまったから、肩すかしをくらったような気がする。まあこれはこれで、不思議な話として終わればいいのかもしれない。しかし、成瀬さんからの手紙も中途半端で、その後の性生活がどうであったのかもわからずじまいだった。ミツを巻き込んだこともどうかと思う。いろいろと不満の残るところだ。ところで、不可思議な自殺とか殺人とかは、ひょっとして本書で取り上げられたような人々と同じような思いを持った人たちの仕業である場合があるのかもしれない。

  • 自分そっくりの贋者が犯した罪を、まるで自分が犯したように感応してしまった主人公。罪とは、そして人間とは。人間の持つ本性の根源的な悲哀を深く感じさせらずにはいられない。

  • 文庫本ではなくハード版を読了。

  • ミステリ仕立てでぐいぐい引きつけられる。さすがの完成度。

  • 主人公の小説家はほぼ遠藤の生き写しではないのだろうかと推測される。
    彼が長年苦悩し、戦ってきた悪という意識に、正面から向き合った遠藤周作の私小説のような感じのする作品。

    主人公の小説家という職業柄、演出としてさまざまな文学作品から心境を抜き出していますが、これが物語の本質を転嫁させ、全体をぼやかしてしまっているような気がしなくもありません。
    なんとなく遠藤周作自身の言葉で語って欲しい気がしたのでした。
    過去に読んだトルストイや川端康成などの作品と比較して、どこかで読んだ気がしてしまう既視感や借り物の感覚が拭えません。

    さらにいえば本作はミステリー仕立てになっているのですが、そこがまたこの作品の評価を微妙なものにしている気がします。
    とくに最後の一文。
    展開は最初からわかりきっているので、あえて読み物にしようと細工を凝らすのではなく、徹底的に自身の悪と向き合って描ききって欲しかった。
    長年救いを描き続けてきた作家のできる限りの抵抗だったのかもしれませんが。。

    しかし、ですよ。
    もし、これがまったく本人の気持ちと関係なく描かれたのであれば、我々は完全に騙され、本当に喰えない作家だ、と思わせてくれるのですがどうでしょうか。

  • キリスト教作家である勝呂は作者遠藤周作自身の投影。のぞき部屋やSMクラブに出入りしている醜悪な顔は彼自身。異色ながら遠藤作品を語る上で避けて通ることのできない作品です。

  • 謎の多い一作。罪と悪の違い。キリスト教作家としての遠藤は救いに繋がる罪の自覚について多く触れてきたが、どうしようもない悪の衝動を自分の中に見つめ作中に書き出すことが出来なかった。作家の晩年にしてもう一度自身の人生観、宗教観に挑戦した作品。

    遠藤らしくないようで、遠藤らしい。

    10/7/27

  • これ書かなければノーベル文学賞貰えていたかもしれなかった作品(wiki情報)。
    本人はきっと「俺は聖人君主じゃない」って言いたかったんだろうけど
    この話は、尻つぼみな感じで中途半端だった。

  • 結局最後はどうだったの?
    もう一度読み直します。

  • 著名作家に身に覚えのないいかがわしい噂がたってしまい、その真相を突き止めていくというストーリー展開。ミステリー仕立ての構成で、最後まで飽きずに読める。「悪」や「背徳」について考察している。参考文献に挙げられていた作品は入手困難なものが多いが、ポーの「黒猫」は容易に入手できるので、併せて読んでみると面白いだろう。

  • キリスト教信者の作家が、自分そっくりの偽者を通して、自分の中に潜む激しい感情や欲求と向き合う。

  • キリスト教徒であるもの、性に対してオープンにすべきでなくそれ自体を否定しさえしていたある作家。そんな観念を軽々飛び越えるその可能性は時に人間に魅力的であるばかりでなく、恐怖さえ抱かせる。

  • キリスト教作家・勝呂の、無意識の中にある屈折した心理との衝突と葛藤を描いた作品・・・・かな?(笑)
    65歳になる小説家の勝呂が、自作の受賞パーティーの席で、自分とそっくりな顔をした、しかし卑しく蔑んだ笑みを浮かべて自分を見つめている人物を見た所からこの小説は始まる。
    設定は遠藤周作本人を思わせるような感じで、勝呂と大きく被ってる感じ。
    勝呂の葛藤は、著者本人の葛藤だったんだろうか。
    アンチクリスチャンの私は、彼の作品は宗教色が強い作品は敢えて読んでこなかったし、他の作品も沢山読んでいるわけではないので、彼に対する特定な色合いと言うか、決まった印象はあまり持ち合わせていないし、感心も薄かったから世間一般的な彼への評価やイメージがどういうものなのかは、よく知らない。
    でもこの作品の中では、聖人君子的に思われてるようだった。
    勝呂は小説家だから、小説家としては、人間のあらゆる面を知りたいという欲求にかられ、長い人生の中で探求し、その結果、罪の中にも救いの元があると考えるようになったが、その考えの集大成とも言える小説の賞の受賞式の時に、その考えを揺るがすような、別の彼の存在を知り、自分の中にある別の自分を、しきりに否定しながらも、結局はその姿をまざまざと見せ付けられて認識せずにいられなくなる。
    小説では、認識した後の勝呂がどうするのかは書かれていないのだけれど、設定とストーリーと、ストーリ運びなどで、読者を引き付けて最後まで一気に読ませてしまう作家としての手腕は凄いと思った。
    また、勝呂の心の葛藤と、認めたくない醜いものの中にも美を見出そうとしている周囲の登場人物達との関わりや、彼の本性を暴きたがって執拗に嗅ぎまわっているルポライターの存在などが、自分を誤魔化し続けて生きてきた勝呂とうまく対比して
    いて、本来なら常識的には忌避されやすい曲がった性の存在の嫌悪感を薄くしているようにも感じられた。
    だけどね〜。勝呂が、作家としての自分と、読者や家庭向けの自分とを意識して使い分けて、妻には一切余計な心配をかけないように、いい事しか言わないって現実を、偽善とは全く思ってないのがね〜。ちと、笑えた。読者向けの顔って言うのはまだわかる。外向きと内向きの顔を大抵の人間は持っているからね。でも、他人には見せなくても、家族には違うものだと私は思っていたけれど、幾ら心配かけたくないとは言え、あまりに上っ面な付き合いでしかない
    ように、勝呂夫婦は感じられたな〜。そして、何も知らずに幸せそうな顔をしている妻を、内心、妬んだりしてるんだからね〜。人間の心の無意識層と言うか認識できない部分について、この作品では大分触れていたけれど、人間の心って矛盾だらけだと思う。その矛盾と葛藤しながら、みんな生きてるんだよね〜。無理を抑えこめば、その軋轢が生じるは自然な事だと思う。また、勝呂に限らず、多くの人が自分の心の中にもある醜い感情を認めたがらないものだよね。認めるのって、恐いんだよね。ちょっとミステリー仕立てになっていて、難しいテーマでありながら、面白く読めた作品です。

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