- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101123295
感想・レビュー・書評
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罪であるならば救いのために必要で、
悪は罪に含まれるのだろうか。
老いても光を求め続ける、
ずっと追いつづけなくてはいけないのは、
時々厳しくなるよ、と思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公の小説家はほぼ遠藤の生き写しではないのだろうかと推測される。
彼が長年苦悩し、戦ってきた悪という意識に、正面から向き合った遠藤周作の私小説のような感じのする作品。
主人公の小説家という職業柄、演出としてさまざまな文学作品から心境を抜き出していますが、これが物語の本質を転嫁させ、全体をぼやかしてしまっているような気がしなくもありません。
なんとなく遠藤周作自身の言葉で語って欲しい気がしたのでした。
過去に読んだトルストイや川端康成などの作品と比較して、どこかで読んだ気がしてしまう既視感や借り物の感覚が拭えません。
さらにいえば本作はミステリー仕立てになっているのですが、そこがまたこの作品の評価を微妙なものにしている気がします。
とくに最後の一文。
展開は最初からわかりきっているので、あえて読み物にしようと細工を凝らすのではなく、徹底的に自身の悪と向き合って描ききって欲しかった。
長年救いを描き続けてきた作家のできる限りの抵抗だったのかもしれませんが。。
しかし、ですよ。
もし、これがまったく本人の気持ちと関係なく描かれたのであれば、我々は完全に騙され、本当に喰えない作家だ、と思わせてくれるのですがどうでしょうか。 -
謎の多い一作。罪と悪の違い。キリスト教作家としての遠藤は救いに繋がる罪の自覚について多く触れてきたが、どうしようもない悪の衝動を自分の中に見つめ作中に書き出すことが出来なかった。作家の晩年にしてもう一度自身の人生観、宗教観に挑戦した作品。
遠藤らしくないようで、遠藤らしい。
10/7/27 -
キリスト教徒であるもの、性に対してオープンにすべきでなくそれ自体を否定しさえしていたある作家。そんな観念を軽々飛び越えるその可能性は時に人間に魅力的であるばかりでなく、恐怖さえ抱かせる。