夫婦の一日 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101123356

感想・レビュー・書評

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  • 作者のキリシタンとしての葛藤に苦しむ姿が描かれた「授賞式の夜」「日本の聖女」「夫婦の一日」。作者の中に渦巻く残酷さや人間臭さを書いた短編「ある通夜」「六十歳の男」。どれもリアルで生々しく、非常に興味深い内容でした。

  • 短編5つ。「日本の聖女」ガラシャの信仰について。他4編は自身の体験からのエッセイ風。仏教を主とした日本人の神性と日本人のキリスト教の捉え方が欧州人のそれとは異なるのではないかという作者の考えがなんとなく伝わってきた。2023.8.29

  • 平和そうな表題作のタイトルに対し、人間の心理を抉るような作品が多く。
    人間の心は一面だけではない。自分でも思いがけない面がある。見たくない面がある。どろりとしたものがある。認めたくなくてもある。
    他人に良い顔をしてるほどそうなのかもしれない。

  • 「ある通夜」「六十歳の男」が印象に残る。悲しみの歌を思い出すな。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/743382

  • 夫婦ってこういうものだよな、というしみじみとした短編

  • 人間の心を映したような短編集。
    夫婦の鳥取砂丘の旅から始まり、江戸のキリシタン細川ガラシャ夫人に纏る小編で終わる5篇は、どれも鋭く心の光と闇、人間の弱さを射抜いた、恐ろしくもあり、見逃せない話だった。日本で生まれ育った私にとっては、カトリックの筆者の視点で見た日本人観、仏教観が新鮮で興味深い。生涯をかけて宗教に向き合い続けた筆者だからこそ視える、人間の深層心理なのだろう。
    面白くて、他の遠藤作品も買ってしまった。

  • 「夫婦の一日」
      「放っておくと、あんたの御主人に十一月には大きな不幸が来ますよ」
    インチキ占い師の出鱈目な預言に妻はだまされた。妻は吉方のお水と砂をとりに鳥取に行きたいと言う。夫婦共にキリスト教信者である。作家である夫は大いに悩み、最後に神父に相談した。

    「君がその迷信を信じていない以上、行こうが行くまいが、君には問題ないだろ。むしろ奥さんの気持ちがそれですむなら、行くことで解決したまえよ」

    神父様のこのアドバイスで夫は葛藤しながらも心に変化が訪れる。

    宗教が絡むので複雑になるのかもしれないが、正しくなければ共感しづらい男性とは違う女性の立場から言わせていただくと、

    ⁇と思いながらもそれであなたの心が晴れるならと優しく従っている、母なる心を持った女性たちは大いにいると思う。

    だからこそ、夫の行動に嬉しさを、私は覚えたのかもしれない。

    「夫婦の一日」他、四篇

  • ・短編集
    ・暗い
    ・聖女が面白かった。細川ガラシャの話。

  • 『夫婦の一日』★1
    占いを信じて必死になる妻がその行動一つで知らない人のように思える話。陳腐な設定に陳腐な行動や心情。何もなく終わった。つまらない。印象に残らない。
    短編なので仕方ないと思うけど別人のように見える前の妻の描写があまりないので「私」が感じている感情(憤りとか怖さとか)を読者があまり共有できないのではないかと思う。平たく言うともともとそういう人だったのでは?何をいまさらという感じ。こういうテーマは時代とともに陳腐化してしまうように思う。具体的には2chや小町、増田なんかでよくみかける話。「私」の妻への対応についても妻を理解することを放棄しているようにみえてあまり共感できない。もともと妻を少し下に見ているように感じる。

    『授賞式の夜』★1
    何か起こりそうな予兆はあるけどここからというところで終わる。印象に残らない。

    『ある通夜』★1.5
    国語の教科書にのりそうな話。お行儀の良い小説家の私と顔は似ているが品行は正反対の親戚、高さんの話。設定は陳腐だけど構成は王道。

    『六十歳の男』★4
    面白いし巧い短編。60歳というお年寄りの心情を書いた話はあまり読んだことがなく新鮮でリアルに感じた。主人公が抱くのは性欲ではなく若さへの嫉妬。著者の別小説『イエスの生涯』で、捉えられたイエスに対して掌を返した民衆がイエスをひどく虐めることを自分の言葉で噛み砕いて書けていないと感じており、その一つの答えとして、この短編の主人公で表現している。純粋なものへの嫉妬であると。

    『日本の聖女』★4
    ある程度面白さもあるし、歴史上の人物を登場させてとても巧く構成している。豊臣秀吉が表向きキリスト教を禁止した時代のお話。布教のためには教えを捻じ曲げることも厭わないパードレ(司祭)を上司に持つ信心の強い修道士目線の物語。『沈黙』で井上様やフェレイラが言っていた日本で魔改造されたキリスト教の話。修道士の考えは遠藤周作の考えなのではと思わされる。高山殿や細川ガラシャは魔改造されたキリスト教を信仰し棄教を拒絶し殉教をも厭わない。キリスト教徒の民衆はそれが美しく正義であると支持する。修道士はその考えに疑問を呈し、ガラシャの殉教は逃げであるとする。表向きは棄教して裏切り者扱いをされ裏ではキリスト教徒のために動きながらも最期まで報われなかった小西殿こそ美しい殉教だとする。嫉妬から、仕え主であるガラシャが不幸になることを悦びとする(と修道士が考える)小従徒は『六十歳の男』と少し繋がっている。実在の人物を上手く動かし、これが本当の話である可能性を100パーセント否定することはできない作りが巧い。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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