- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101123356
感想・レビュー・書評
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作者のキリシタンとしての葛藤に苦しむ姿が描かれた「授賞式の夜」「日本の聖女」「夫婦の一日」。作者の中に渦巻く残酷さや人間臭さを書いた短編「ある通夜」「六十歳の男」。どれもリアルで生々しく、非常に興味深い内容でした。
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この短篇集含めて、僕が遠藤周作を好きなのは、高潔に生きたいという理想と情欲に溺れたいという堕落性、その双方が一人の人間の中に存在している矛盾について、認めて、許して、悩んでいるからです。
良い悪いの二元論で物事を切るのは明快かつ論理的で、一見逞しいけれども、空疎で断定的で、どこか脆い。
誰かと戦っているわけでもないし、自分に正直に存分に苦しめば良いのではないか、そう伝えてくれているように思えるのです。 -
未読の遠藤の短編。「侍」から「スキャンダル」に移るその軌跡を見事に表している、とあとがきにあった。5つの短編からなる、短編集であるが、どれも心に響いた。晩年の遠藤は、人間の無意識に関心を非常に寄せており、そこに潜む悪とそこからの救いという観点から、宗教と信仰を深く見つめている。その辺の関心が、この五つの中にありありと描かれている。
個人的には「日本の聖女」が一番響いた。細川ガラシャを遠藤流に描いている。
13/7/9 -
深層心理がうまく描かれている。行動と理性と感情のバランスが見事。日本文化を深く観察された遠藤周作の晩期らしい作品。
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表題作の「夫婦の一日」と「日本の聖女」が個人的に好きな作品。
特に、「夫婦の一日」は、カトリック信者であるにもかかわらず、立て続けに起こった不幸から占い師を尋ね、その言葉に信心する妻の様子が印象的。カトリック信者なのだから、占い師の言葉など信じること自体おかしいと説く夫の気持ちも分からないでもなかった。けれど、夫が1年で亡くなるといわれ、それまで続いた不幸のことも考えると、たとえカトリックといえども何かにすがりなんとしても夫を助けたいと思ってかたくなに実行する妻の心情も理解できた。きっと女性ならではなのかもしれない。