双頭の鷲〈上〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (573ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101125312

作品紹介・あらすじ

時は、中世。イングランドとの百年戦争で、劣勢に陥るフランスに登場したベルトラン・デュ・ゲクラン。このブルターニュ産の貧乏貴族、口を開けば乱暴粗野なことばかり。だが幼き日より、喧嘩が滅法強いベルトラン、見事な用兵で敵を撃破する。神は、武骨なその男に軍事の大才を与えたもうた!鉄人チャンドスは戦慄し、好敵手グライーは闘志を燃やす-。歴史小説の新たなる傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 随分と長く和の世界にいたので気分転換に再読。

    魅力的な登場人物に血湧き肉踊る合戦、キリキリとする心理戦、これぞ歴史エンターテイメント。
    主人公がとにかく型破りで素晴らしい。隆慶一郎著「影武者徳川家康」の世良田二郎三郎元信と1,2を争う我が愛すべきキャラクター。
    難点があるならば登場人物の名前が被る事多し。それはあちらのお国柄なのでしょうがない。
    時折出てくる食事シーンも主人公が美味そうに食べるものだからそそられてしまう。野趣味溢れるメニューを食べてみたくなる。

    ささ下巻へ。

  • ポワティエ◆ブルターニュ◆パリ◆ノルマンディ

    著者:佐藤賢一(1968-、鶴岡市、小説家)

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    この時代のフランスはカペー朝が断絶し、ヴァロワ家とイングランド王家がフランス王位を主張し、戦争を繰り返した百年戦争の時代の物語となっている。
    この小説の主人公はヴァロワ朝の劣勢挽回に貢献したといわれるベルトラン・デュ・ゲクランであるが、実際に読んでみると物語はデュ・ゲクラン視点ではなく、周囲にいる人々からの視点で、物語は進行する。デュ・ゲクランの独特の性格と感性に影響を受け、多くに人々がその魅力に惹かれていくが、最終的には読者の私もデュ・ゲクランの魅力に惹かれてしまったように思う。
    実際の歴史上のデュ・ゲクランとは異なるかもしれないが、楽しく読むことが出来た。

  • 100年戦争の英雄と言えばジャンヌダルクぐらいしか思い浮かばないけど、フランス史にこんな痛快な英雄がいたことを全く知らなかった。
    ベルトランの無邪気な振る舞いは正に子供のようで、エマニエルやシャルルをはじめそれに振り回されつつも盛り立てる人々が親のようであり、その互いに思い遣る関係に温かい気持ちになる。
    現代社会でも無邪気な子供を優しく見守ることのできない未熟な大人がいるように、中にはベルトランの出世に嫉妬する貴族や実弟もいる。そんな人たちには相応の末路が用意されているあたりも痛快だった。
    ただベルトランの過去、実の母親に愛されることがなかった過去はあまりに辛く哀しい。
    連戦連勝でフランス王家の信頼を得て大元帥の地位まで昇った英雄。嫉妬も愛情のひとつとカウントすればフランス史上最も多くの人々に愛されたと人物だと言える。でも母親の笑顔はベルトランに向けられることはなかった。こんな哀しいことなんてあるだろうか?同じ男の子として生まれたものとしてベルトランの哀しみは痛いほど解る。
    男の子は誰よりも母親に喜んで欲しくて、認めて欲しくて頑張るし無茶もする。大元帥の地位まで昇るほどにガムシャラに頑張ったのに母親の笑顔を得ることなく終わったベルトランの不幸はあまりにも残酷だと思う。それほど男の子にとって、いや全ての子供にとって母親の存在は大きいものだと思う。
    親の愛情を受けられないってことは最も大きな不幸だと思う。それはベルトランほどの成功を手にしたと思われる大人物であっても。

  • フランスの100年戦争の初期に現れ、劣勢だったフランスの窮地をそれこそ連戦連勝で挽回した英雄ベルドナント・デュ•ゲクランの一代記である。上巻では、不遇を囲った幼少期から頭角を現し始めた無敵とまで言われた馬上槍試合で見いだされブロア伯の旗印のもとブルターニュ継承戦争に身を投じ、プルセリアンドの黒犬という傭兵軍団を率いて当時日の出の勢いのイングランドを背景につけたモンフォール伯の軍と長年に渡る戦いに身を投じる。物語では彼の戦上手が余すところなく語られ、当世一の醜男が軍神になる過程が描かれる。また、当時シャルル王子だったシャルル5世と邂逅し、生涯仕えていく運命の主君を認め、この後フランス王家復興の右腕として軍団を率いて転戦していく様が描かれる。
    ゲクランはあれだけ戦上手なのに彼の知性については全く語られることはなく粗野で下品で純真な人物として描かれる。日本の戦国武将では全く見出せない人物であるところが興味深い。

  • 舞台は中世フランス。
    イングランドとの百年戦争の前半あたりでしょうか?
    ブルターニュの貧乏貴族、ベルトラン・デュ・ゲグランの一代記です。

    このデュ・ゲグランという人物。
    粗野粗暴で教養も常識もはなく、
    下品と言うより品というもの自体を知らないような人。
    こう書くと本当にかかわりたくないような人だけど、
    どこか憎めない人物として描かれています。

    実際本人には全く悪気はなく、恐ろしく純粋で無邪気な人なのです。
    そしてなぜか子供の頃から滅法喧嘩が強い。

    この物語は、そんな彼がその才能をいかんなく発揮し、
    登りつめていく様を描いています。

    彼を理解してくれる人物に恵まれ支えられ、
    無邪気なまま知らず貧乏貴族から
    フランスの大将軍まで登りつめてゆく様は痛快です。

    その無邪気な言動の裏に見え隠れする頑固なコンプレックスや
    報われない渇望する想いがより人物像をしっかりさせ、
    ただの痛快な物語だけにしていないところがまたいいです。

    本書は上巻だけで600ページ近い大作ですが、
    映画や舞台のようにぱっぱと場面が切り替わる構成によって、
    中弛みやだらだら感が全くありません。
    あきさせず面白く読ませてくれます。

    さて、下巻はどうでしょうか?
    昇った日はやがて落ちていくのでしょうが、
    まだまだやってくれそうで、本当に読むのが楽しみです♪

  • 時は中世、14世紀のフランス、「パリ革命」、「ジャックリーの乱」等が起こった頃。田舎貴族ベルトラン・デュ・ゲクランは、戦の天才にして腕の異様に長い異形の風貌。性格は、粗野で自由奔放だが愛嬌に満ちた憎めないキャラ。無礼な振る舞いが誤解を受けながらも、数少ない理解者のブロア伯シャルルや王太子シャルル(フランス王)に寵愛され、フランス王の片腕として将軍まで登り詰める。
    上巻はゲクランの、魅力的なキャラに圧倒され通し。爽やかな読後感。下巻が楽しみ。

  • 古本で購入。上下巻。

    舞台は14世紀、後に「百年戦争」と呼ばれる戦争真っ只中のフランス。
    劣勢にある国を救ったブルターニュの貧乏貴族、容貌魁偉の戦の天才にして救国の英雄、ベルトラン・デュ・ゲクランの天衣無縫の一代記。

    イギリスとフランスの泥沼の戦争が繰り広げられる世界で、ひとりの喧嘩上手の男が成り上がっていく様は痛快で、単純におもしろい。
    日本の歴史小説としては割と(かなり?)ニッチな百年戦争、しかもジャンヌ・ダルクが活躍する末期ではなく初期を扱っているというだけで、歴史好きにはたまらない。
    こういう、天から遣わされた(司馬遼太郎風)ような男が閃光のように駆け抜ける歴史物語は、やはりいい。

    不満があるとすれば、合戦の様子がけっこうカットされるところだろうか。
    ライバルのジャン・ドゥ・グライーといよいよ決戦!というところで場面の転換、その戦いの顛末をざっくりと回想…というのは、ちょっと残念だった。

  • 英仏100年戦争時代。実在した稀代の英雄の物語。詳細な時代背景描写に引き込まれる~。レンヌの街並みが色鮮やかに思い出される

  • 文章読み易いし好きな歴史もんだし、
    ベルセルクみたいな感じだし、面白いに違いない。
    と思って読み進めたら、途中で秋田。

    出てくる全てに興味が惹かれん。
    やっとこさ上巻読んだが、下巻まで読もうつー気が失せた。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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