双頭の鷲〈下〉 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101125329

作品紹介・あらすじ

ついに大元帥の位まで登りつめた、ベルトラン・デュ・ゲクラン。国王シャルル五世との奇跡のデュオは、民衆に希望をもたらした。破竹の快進撃を続ける武将は、いつしか生ける伝説に。だが、フランスで、スペインで、強敵に打ち勝ってきた男にも、黄昏は訪れる。その日まで-、男は太陽のように、周囲を照らし続けた。不世出の軍人と彼を巡る群像を描く歴史小説、堂々の完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 主人公、それを取り巻く登場人物達の魅力に最後まで満喫。
    上下巻では足りない!これこそ大長編で読みたい。

    ベルトラン・デュ・ゲクランという人物は本国フランスではどのぐらい名を知られているのだろうか?
    これだけ興味深い人物なら何度か映画化されても不思議ではないような。かのオルレアンの乙女より物語としては爽快感抜群なのに。気になるところ。

  • 著者:佐藤賢一(1968-、鶴岡市、小説家)

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    上巻の無邪気で純粋なベルトランが周囲を振り回し、周囲は振り回されていることをわかりながらも、その魅力に抗えずにベルトランを助けるといった感じで、爽快感をかんじながら読み進めることができた。一方で下巻はほとんど変わることのないベルトランに対し、周囲が大きく変わったことで様々な悩みに振り回されているように読めた。
    多くの人の思惑が飛び交い、フランスという国家が大きく変わってゆく中でベルトランの存在が一服の清涼剤となっていたように思う。気持ちのよい人物だった。

  • 100年戦争の英雄と言えばジャンヌダルクぐらいしか思い浮かばないけど、フランス史にこんな痛快な英雄がいたことを全く知らなかった。
    ベルトランの無邪気な振る舞いは正に子供のようで、エマニエルやシャルルをはじめそれに振り回されつつも盛り立てる人々が親のようであり、その互いに思い遣る関係に温かい気持ちになる。
    現代社会でも無邪気な子供を優しく見守ることのできない未熟な大人がいるように、中にはベルトランの出世に嫉妬する貴族や実弟もいる。そんな人たちには相応の末路が用意されているあたりも痛快だった。
    ただベルトランの過去、実の母親に愛されることがなかった過去はあまりに辛く哀しい。
    連戦連勝でフランス王家の信頼を得て大元帥の地位まで昇った英雄。嫉妬も愛情のひとつとカウントすればフランス史上最も多くの人々に愛されたと人物だと言える。でも母親の笑顔はベルトランに向けられることはなかった。こんな哀しいことなんてあるだろうか?同じ男の子として生まれたものとしてベルトランの哀しみは痛いほど解る。
    男の子は誰よりも母親に喜んで欲しくて、認めて欲しくて頑張るし無茶もする。大元帥の地位まで昇るほどにガムシャラに頑張ったのに母親の笑顔を得ることなく終わったベルトランの不幸はあまりにも残酷だと思う。それほど男の子にとって、いや全ての子供にとって母親の存在は大きいものだと思う。
    親の愛情を受けられないってことは最も大きな不幸だと思う。それはベルトランほどの成功を手にしたと思われる大人物であっても。

  • この本が読者を掴んでしまうのは、やはりゲクランの個性なのかもしれない。後書に佐藤氏のコメントがあるが、様々な古書からもあながち脚色ではないということで味わいも一層深まるというところである。いつまでもガキ大将で礼儀知らずそのくせ滅法な戦上手で戦をやらせたら連戦連勝、しかし女嫌いな醜男、一体これ以上のキャラクターが存在するのだろうかと思うほどである。脇を固めるのがやや神経質ともとれる従兄弟で托鉢修道士でもあるエマニエル、ゲクランが母との確執の中で疎遠になり、その後復縁したギョームとオリヴィエ、そして軍神ゲクランをフランス王家の復活と失地回復に最大限活用したシャルル5世。これだけ見ても

  • 上巻に比べると、デュ・ゲグラン自体の生き生きとした会話が減り、
    どちらかと言うと周りの状況で話が進んでいく感じです。
    それでもおもしろくは読めましたが、少し物足りなさは感じました。

    晩年だからでしょうか・・・!?
    実際登りつめていく若い時と違い、
    登りつめてしまってからでは勢いは違うものですよね。

    自分は変わっていなくとも、
    自分を取り巻く人や環境が変わっていくのは若い頃だって同じなのだけど、
    歳を取ってからの変化は何か寂しいものが付き纏います。

    これだけみんなに愛されて、また好きに生きたであろうに、
    それでもこの人の人生はとても悲しく感じます。
    最後にモーニとエマヌエルに語らせなければ、
    悲しい気分のまま終わったかも・・・。
    爽やかな読後感に仕上げてくれたところに感謝です。



    それにしてもこれだけの人がどうしてここまで無名だったのでしょうね?
    ナポレオンの隠蔽工作って話も出てましたが、それでも不思議・・・。

  • 英仏の百年戦争で活躍したフランスの英雄、ベルトラン・デュ・ゲクラン。彼の活躍を献身的に支えた従兄弟のエマニエルと妻のティファーヌ。下巻では、エマニエルの独白を通して子供を慈しむ母性愛のような二人の心情が細か描かれていて印象的。
    物語は、中世ヨーロッパ、群雄割拠する領主たちが、婚姻関係や利害関係、嫉妬等かから離散集合を繰り返す混沌とした情勢の中で、フランス王シャルル五世は、デュ・ゲクランと共に、中央集権国家の樹立を目指してイングランド勢を大陸から追い落とすことに成功する成功譚になっている。ただ、晩年はデュ・ゲクランとシャルル五世のデュオの勢いも夕陽が沈むように衰えていき、二人が亡くなると元の群雄割拠状態に戻っていく。
    文庫版あとがきによれば、百年戦争の英雄としては、ジャンヌ・ダルクと比べてもデュ・ゲクランの方が圧倒的に活躍したという。ジャンヌ・ダルクがかくも有名なのは、ナポレオンが意図的に宣伝しまくったからだとか。
    デュ・ゲクランが幼少期に両親から虐待されていたのが史実、というのには驚いた。長編だが読みごたえあり!!

  • 最後のモーニとエマヌエルがゲクランの墓の前で語らうところが何とも言えず、よかった。

  • 全くなじみのないフランスの歴史小説。
    でもすごくおもしろかったなー。
    上下巻ともボリュームがあったけど、ちょうどいい読み応え。
    質、量ともによかった。

  • ついに大元帥の位まで登りつめた、ベルトラン・デュ・ゲクラン。国王シャルル五世との奇跡のデュオは、民衆に希望をもたらした。破竹の快進撃を続ける武将は、いつしか生ける伝説に。だが、フランスで、スペインで、強敵に打ち勝ってきた男にも、黄昏は訪れる。その日までーー、男は太陽のように、周囲を照らし続けた。不世出の軍人と彼を巡る群像を描く歴史小説、堂々の完結編。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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