- Amazon.co.jp ・本 (693ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101125343
作品紹介・あらすじ
総司の義兄にして天然理心流の剣客沖田林太郎は、新選組勢と袂を分かち、新徴組創設に加わる。その上役たる酒井玄蕃はフランス式兵法をも修めた英才だった。そして戊辰戦争が勃発。庄内藩中老の玄蕃が指揮し林太郎らが支えた歩兵隊のスナイドル銃は、勢いづく官軍を食い止め歯軋りさせた。だが時代は彼らの不敗神話さえ呑み込んでゆく。著者が父祖の地を舞台に描く二人の漢の物語。
感想・レビュー・書評
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先日知り合いとの飲み会で、幕末談義になり、勧められて読んだら、二日で読了。奥羽越列藩同盟と新政府軍の戦いに庄内藩-新徴組の人々が特徴的な活躍をしていた事。江戸ではお巡りさんの語源となった見廻訓練でフランスの歩兵流の訓練を受け、戊辰戦争では豊富な資金力を背景に最新の装備で勇敢に戦った上の降伏。後に新政府でも活躍する人材を輩出。知らない事ばかりで心が動かされました。
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とにかく酒井玄蕃がかっこいい。(変人でもあるが)新撰組の陰に隠れていまいち地味な新徴組と、庄内藩。が、こんなにスカッと爽やかな戊辰戦争ものは他に無いような素敵な戦いでした。
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東日本の幕末もの。
新徴組の名前は知っていたけれど、こんなことをしていたのねぇという感慨が。
ま、小説なので戦争があった以外のところがどの程度脚色されているかは不勉強でわからないのですが、主人公の沖田林太郎のひょうひょうとした雰囲気とか、登場人物の描写の良さでとても楽しめました。
意外と陰鬱な話になっていないのも良かった感じ。 -
フランスを舞台にした歴史小説の大家である佐藤賢一氏の「珍しい」国内もの。もともと幕末ものの読み物にしばしば「庄内藩」という名称が出てくることが気になってはいた。なぜ東北のそれほど大きくもない藩が江戸で警察のような仕事をしていたのか、それを知りたくて本書を開いた。
面白い!自分にとっての歴史知識の空白部分を埋めてくれたばかりか、戦場の描写はアクション映画さながらの手に汗握る緊迫感。結末が分かっていながら「もしかしたらこのままいけるのでは」と期待させてしまうのは、類稀なる著者の力量なのだろう。久々に読み応えのある小説を読んだ。 -
本作品の主人公は、沖田総司の義兄にして新懲組隊士の沖田林太郎と、庄内藩の重臣にして戊辰戦争で鬼玄蕃と恐れられた酒井玄蕃(吉之丞)の二人が主人公。
庄内藩酒井家は徳川四天王の系譜に列なる、由緒ある徳川普代藩にしてコテコテの佐幕藩。幕末の策士、清河八郎を産んだ土地でもある。藩士は木訥とした田舎者ながら質実剛健、戦国武士の気風を残したお国柄である。
その清河八郎が主謀して、江戸で浪士組が組織され、将軍警護の目的で京に派遣されるが、八郎の煽動でその一部が江戸に引き返し、八郎暗殺後、庄内藩預かりとなって名を新懲組と改め、治安が悪化した江戸市中の取締に当たることとなる。沖田林太郎は、腕が立ち鋭い洞察力も備えた、新懲組の有能な隊士。ただ、リスクのある勝負を無意識に避けてしまう癖が…。酒井吉之丞は、江戸市中取締掛として新懲組を束ね、来るべき時に備えて厳しい洋式教練で隊士を鍛えていく。
その後、幕末戊辰戦争の折、新懲組は庄内藩士とともに鶴岡城下に移り、主要戦力として活躍する。庄内藩は会津藩とともに奥羽列藩同盟の中核として官軍に対抗し、連戦連勝の勝ち戦を続けたが、奥羽列藩同盟が次々と切り崩され、最後は会津藩が降伏して孤立状態となってしまったため、玄蕃はあくまで抗戦論を主張したが、藩主の英断により涙を飲んで謝罪降伏した。ただ、西郷南洲の特段の配慮からか、はたまた強者集団への恐怖故か、庄内藩への戦後の措置はことのほか穏便なものだったという。その後、西郷に深く感謝し傾倒する庄内藩士は西郷やその一党と深く交わり、敵味方の垣根を越えた交わりは「徳の交わり」と呼ばれた。
本作品は、幕末動乱・戊辰戦争を新懲組・庄内藩の視点で丹念に描いた、壮大な大河ドラマ。覚めた目で時勢を鋭く観察する林太郎と、卓越した戦略眼で戦いを指揮する玄蕃のキャラが光っている。とにかく読みごたえあり。
続編「遺訓」や藤沢周平「回天の門」も読まなきゃ! -
恥ずかしながら新徴組については知識なしでした。新選組の兄弟分となる組織があったのですね。著者独特の節回しのきいた文章は相変わらず。前半だけなら★5つ。後半、戦争が始まると登場人物の存在感が一気に希薄になるのが残念。
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151010 中央図書館
沖田総司の義理の兄(みつの夫)である沖田林太郎を主役とする歴史小説。新撰組の総司に対し、清河八郎の浪士組に由来する新徴組に関係し、庄内藩との関わりとして描く。
人物の深みや舞台の地味さの故か、あまり面白くなかった。 -
もう一つの新撰組
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[2015.02.09]
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「戊辰戦争に不敗伝説を残した、もうひとつの新撰組」という惹句に目を取られてしまったこの作品。
いつもは西洋史を舞台にした小説を書いている作者が、故郷である鶴岡の歴史にまつわる物語を書いたわけだが、史実に沿った出来事を盛り込もうとしたあまり主人公の活躍がイマイチな感じに終わってしまったのが残念。
森鴎外の残したテーゼ「歴史そのままと歴史離れ」を思い起こした。