新徴組 (新潮文庫 さ 47-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (693ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101125343

感想・レビュー・書評

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  • 先日知り合いとの飲み会で、幕末談義になり、勧められて読んだら、二日で読了。奥羽越列藩同盟と新政府軍の戦いに庄内藩-新徴組の人々が特徴的な活躍をしていた事。江戸ではお巡りさんの語源となった見廻訓練でフランスの歩兵流の訓練を受け、戊辰戦争では豊富な資金力を背景に最新の装備で勇敢に戦った上の降伏。後に新政府でも活躍する人材を輩出。知らない事ばかりで心が動かされました。

  • 本作品の主人公は、沖田総司の義兄にして新懲組隊士の沖田林太郎と、庄内藩の重臣にして戊辰戦争で鬼玄蕃と恐れられた酒井玄蕃(吉之丞)の二人が主人公。

    庄内藩酒井家は徳川四天王の系譜に列なる、由緒ある徳川普代藩にしてコテコテの佐幕藩。幕末の策士、清河八郎を産んだ土地でもある。藩士は木訥とした田舎者ながら質実剛健、戦国武士の気風を残したお国柄である。

    その清河八郎が主謀して、江戸で浪士組が組織され、将軍警護の目的で京に派遣されるが、八郎の煽動でその一部が江戸に引き返し、八郎暗殺後、庄内藩預かりとなって名を新懲組と改め、治安が悪化した江戸市中の取締に当たることとなる。沖田林太郎は、腕が立ち鋭い洞察力も備えた、新懲組の有能な隊士。ただ、リスクのある勝負を無意識に避けてしまう癖が…。酒井吉之丞は、江戸市中取締掛として新懲組を束ね、来るべき時に備えて厳しい洋式教練で隊士を鍛えていく。

    その後、幕末戊辰戦争の折、新懲組は庄内藩士とともに鶴岡城下に移り、主要戦力として活躍する。庄内藩は会津藩とともに奥羽列藩同盟の中核として官軍に対抗し、連戦連勝の勝ち戦を続けたが、奥羽列藩同盟が次々と切り崩され、最後は会津藩が降伏して孤立状態となってしまったため、玄蕃はあくまで抗戦論を主張したが、藩主の英断により涙を飲んで謝罪降伏した。ただ、西郷南洲の特段の配慮からか、はたまた強者集団への恐怖故か、庄内藩への戦後の措置はことのほか穏便なものだったという。その後、西郷に深く感謝し傾倒する庄内藩士は西郷やその一党と深く交わり、敵味方の垣根を越えた交わりは「徳の交わり」と呼ばれた。

    本作品は、幕末動乱・戊辰戦争を新懲組・庄内藩の視点で丹念に描いた、壮大な大河ドラマ。覚めた目で時勢を鋭く観察する林太郎と、卓越した戦略眼で戦いを指揮する玄蕃のキャラが光っている。とにかく読みごたえあり。

    続編「遺訓」や藤沢周平「回天の門」も読まなきゃ!

  • 恥ずかしながら新徴組については知識なしでした。新選組の兄弟分となる組織があったのですね。著者独特の節回しのきいた文章は相変わらず。前半だけなら★5つ。後半、戦争が始まると登場人物の存在感が一気に希薄になるのが残念。

  • もう一つの新撰組

  • [2015.02.09]

  • 山形県鶴岡市出身の作者が、庄内藩側から戊辰戦争を描いた小説

    といっても、庄内藩の中心ではなく、庄内藩で厄介者扱いの酒井吉之丞と新撰組と袂を分かった浪士組の新徴組(ここでも傍流)で庄内藩士ではない者たち(傍流)で、しかも中心に描かれるのは、新徴組でも幹部ではなく、沖田総司の兄、沖田林太郎。
    歴史からすると傍流の傍流の傍流のさらに傍流。
    歴史の大河に押し流されながら、その中で自分を見いだし、保護すべき人々を守り抜く生き様が描かれている。

    普段は決して格好良くはないのだが、いざそのときだけは格好良くなれる。それはやはり格好いい。

著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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