われらの時代 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126029

感想・レビュー・書評

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  • 実に面白い。
    当時の若者の閉塞した世界で生きる、哀れみ、悲しみなどが、ジンジン伝わってくる。
    終盤にかけての怒涛の展開は、もうサスペンスだった。
    ドキドキしながら先を先をと読みふけった。

    不幸な若者たち(アンラッキーヤングメン)というバンド名が面白い。まさに結果的にその通りだ。

  • こういう時代感覚は、ぼくらにも確かに受け継がれていると思う


    生々しくて不快、芸術的で惹かれる

  • 敗戦を否定的に捉えた写実小説。めちゃくちゃ面白い!現代人からしたら、当時の若者が戦争に希望を抱いていたことは信じ難いことなのかもしれない。でも、これを現代におきかえてみると、彼らの心境を理解できると思う。
    私達にとっての絶望ってなんだろう。
    この本を読むことで息苦しさについて考えることができると思う。

  • 2020/5/18読了。

  • 1959年に書き下ろしとして刊行された長編。外国人相手の中年娼婦である頼子、そのヒモとして同棲している主人公の靖男、その弟の滋がピアノを弾いている十代のジャズトリオ<アンラッキー・ヤングメン>。「若さ」という残酷さと如何に向き合うか。

  • 行動しないことの絶望、行動したらしたでまた次の選択を迫られて結局行き詰まりとなる絶望、閉塞感。戦争に敗れた国を覆うそれらが性を通じて個人の不能として襲いかかる。言葉もまた、国語であるという点においても不自由をもたらす。プールの犯罪者が捕らえられたのちの静けさが好きだった。

  • 面白い!
    読みにくい比喩や暗喩かあり、読むのがしんどく不要なのではと思う部分もあったけど、終盤は小説の世界に没頭してしまった。

  • (01)
    東京のひと夏の物語である。一組の男女がいて、三人一組のバンドマンたちがいる。その二組を兄弟の血縁が繋いではいるものの、物語はほとんどそれぞれの組を交互に描きながらパラレルに進んでいく。兄弟は近くこともあり、特に終盤では兄の人生の選択に、弟たちの失敗が絡まっていく展開をみせる。
    テロリズムが示され、性が示され、国家と天皇とが性的な言葉と並列して語られていく。プール、トイレ、ベッドが舞台になり、それらの近代的な施設や設備は、どこか人間と馴染んでいない。アメリカ人やフランス人、アラブ人(*02)がここでも現れているが、日本人とどこかで噛み合っていない。近代や近代国家の行き詰まりが、若者たちの生を依代として語られていく。友情や連帯、性愛は、彼らの「われら」を強く結合させる(*03)ことはない。

    (02)
    ジブラルタルと呼ばれる猫が現れる。地中海の西の出口にあり、ヨーロッパ大陸とアフリカ大陸の接点でもあるこのジブラルタルの絶妙な地理は、そのまま物語の妙となり、言葉を語ることのない猫に変換されている。

    (03)
    本書では、直接に宗教や道徳が語られることはない。その信仰のない危うさを逆に示しているとも言えるだろう。

  • たぶん、歴史において語られるのは、主に動きのあるもので、だから世の中は時代ごとに変化がみられる。でもその側面で絶望している語られない部分は、どの時代を通しても同じなのだと感じます。あるものから脱け出しても自由になることは出来ず、しかし脱け出してしまえばもう元に戻ることは不可能で、希望を持てず、唯一できる〈行動〉、つねにある自殺の機会を見送りながら生きていく。もう的確すぎます。そして、自己の問題ほど、主観的には悲劇でも客観的には喜劇なんだなと、それを痛感するような作品でした。

  • 若者は何を考え、活動に耽るのか?今の時代とのギャップは何なのか?想像してもきりがありませんが、果てしない世界がそこには広がっているんだとおもいます。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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