遅れてきた青年 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126050

感想・レビュー・書評

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  • 文学小説の面白さって共感と、更なる発見だとおもうんだけど、この本にはそれが詰まってた。
    普通の大人はもう忘れてしまっているような、幼少期に感じた懐かしい記憶を忘れずに持ちつづけているという事も、作家にとって大切な要素だと思うけれど、そんな懐かしい記憶を呼び起こし、共感、更なる発見もさせてもらえて充実、満足。
    内容的に時代はまるで過去のものになってしまってはいるけれど、無理なく現代に、自分自身に置き換えて読む事が出来た。

  • これ面白かった。というか、興味深い、というか。

    タイトルがほんまにぴったり内容そのものでした。
    というか、主人公が本当に「遅れてきた青年」だった。
    戦後にそういう風な感覚を得た少年、
    青年はどれだけ多かったんだろう、と思う。

    戦争がその時代においてどれだけ絶対的だったのか、とか。
    そういうことが1人の感情を通して伝わってくるので、
    やたらリアルで怖かったです。うん。怖い。

    戦争を経験していない私には狂気とすら映る。
    だけど、この時代に、
    こんな感覚の人ってたくさんいたんじゃないだろうか。
    戦争というものが絶対的であった時代のお話。

    主人公にとって康はいつまでもヒーロー
    たぶんにせジュリー・ルイスだって悲劇のヒーロー
    という意味では主人公にとってヒーローだったんやろな。

  • 戦争で勇敢に死ぬことを望んでいた少年の<希望>は終戦によって絶たれた。

  • 兵隊として死ぬことを夢見ていた少年に、終戦によって刻み込まれた「自分は遅れてきた」という絶望感。日本における“ロスト・ジェネレーション”の青春、戦前派or戦中派でも、戦後派でもない狭間の世代の喪失感…。あくまで主人公の視野に映るもののみを語る主観的な文章なのに、同時にどこまでも客観的な語り口が貫かれていて、そのひりひりとした緊迫感に引き込まれる。

  • 遅れてきた青年は、早すぎる未来に復讐を試みるが、やはり早く去りすぎた戦争という過去にはただ憧れるのみで、恨む事は永遠に無いのである。それはひとえに、青年にとっての戦争(過去)が現実に起こった事ではなく、お伽話の空想事と同じ意味合いの存在に過ぎないのであり、それ故にやはり青年は遅れてきた青年なのだ。仮にこの青年が第二次世界大戦の真っ只中に生きた青年であったとしたら、やはり青年は早く来すぎた世界大戦の時代に復讐を誓い、早く去りすぎた過去の戦争いくつかに憧れを覚えたのではないか。青年にとってすべては早すぎる訪れ、或いは早すぎる終焉を持つ出来事なのであり、己を取り巻くすべてのものに対して、己は遅れ続けるのではないか。
    そしてその青年とは、この物語の主人公であり、堕胎手術の傷跡から流れる血でベッドのスプリングを錆びさせた代議士の娘であり、男相手に売春を繰り返す代議士の娘の愛人であり、私であり、あなたなのである。

  • 父購入。私の初・大江健三郎だった気がする。高校生の時かな?

  • 毎回、非常に読みにくい文で疲れます

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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