見るまえに跳べ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.60
  • (40)
  • (53)
  • (103)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 750
感想 : 63
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126081

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 前に読んだ「死者の奢り・飼育」は主に監禁状態を主題とする作品群だったが、今回は政治的人間と性的人間を主題とした作品群だった。
    大江さんの初期作品の新潮文庫版は主題で分けられているので、1冊の本として読みやすかった。
    三島、川端、大江という戦後の文豪の素晴らしい作品を今後も折に触れて読んでいきたい。

  • この作品集中に頻出するイメージ、徒労感、屈服感、行動に対する焦燥のようなものは、やはり時代精神を書き取ったものなのだと、あらためて思う。

    今読むと(現在にそんなものがあるか怪しいが)時代精神は大きく異なるため、奇異な感触を受ける。であるが青年期特有の焦燥や徒労感に対する敏感さが特異的に強調された、イカレた物語として、十二分に命脈を保っている。いわゆる「一周回って」あたらしい、というべき世界。

    世代が大きく違えども、現役作家である大江健三郎と、同じ時代を生きる読者としては、上記のイメージが、再生につながっていき、Rejoyce!に至る道筋に興味を持たざるを得ない。

  • <収録作品>
    奇妙な仕事(昭和32年5月「東京大学新聞」)
    動物倉庫(昭和32年12月「文学界」)
    運搬(昭和33年2月「別冊文芸春秋」)
    鳩(昭和33年3月「文学界」)
    見るまえに跳べ(昭和33年6月「文学界」)
    鳥(昭和33年8月「別冊文芸春秋」)
    ここより他の場所(昭和34年7月「中央公論」)
    上機嫌(昭和34年11月「新潮」)
    後退青年研究所(昭和35年3月「群像」)
    下降生活者(昭和35年11月「群像」)

  • 著者初期の作品集。学生運動盛んな時期の若者の自己欺瞞と鬱屈、葛藤といったドロドロした感触が伝わってくる。2021.22

  • "跳ぶ"ことによって、その成否にかかわらず変化が訪れる。そしてそれは、過去の自分から変化していくために必要なこと。跳ぶ機会を逃すな。

  • (1975.07.23読了)(1975.07.17購入)
    内容紹介
    処女作「奇妙な仕事」から3年後の「下降生活者」まで、時代の旗手としての名声と悪評の中で、充実した歩みを始めた時期の秀作10編。

  • 世界の大江だ〜と思って読んだら何かBL?(違)大江さんの書く青少年はギラギラしていて好きです。「下降生活者」が何だか度肝抜かれました。そんな呼びかけられても!

  •  カラマゾフ下巻をよみすすめながらの見る前に跳べとはなにか。全体にながれる、カラマゾフほどに直接的ではないゆがんだ印象、混乱だとか迷走であるとか、どのお話もハッピーなものとはいえない。暗くどんよりした陰湿なムードが好きな人は好みなのかも。中上健次以前の日本近代文学のひとつの傾向なのだろうか。

  • 情景の描写が濃密。

  • 短編集。
    長編より読み易いかも。

    なんか全編全然違う話なんやけど、
    どこか底の底に流れている空気が同じやなぁと思った。

    「奇妙な仕事」での文章で、女子学生の、
    「桶屋の技術が桶屋の文化だ、そういう文化が生活と
    しっかり結びついた本当の文化だ、というようなことを
    評論家が書くでしよう。あたりまえなことでね。
    ところが、一つ一つ実例をあたってみるとね、
    そんなにきれいごとじゃないのよ。犬殺しの文化、淫売の文化、
    会社重役の文化。汚らしくて、じめじめして根強くて、
    似たりよったりよ。」というところが面白い。

    あとは表題作と「鳥」が印象的でした。

著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大江健三郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
安部公房
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×