同時代ゲーム (新潮文庫)

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著者 : 大江健三郎
  • 新潮社 (1984年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126142

同時代ゲーム (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 伊坂幸太郎の『夜の国のクーパー』著者あとがきで、この作品からの影響について書かれていたので興味が湧いて久しぶりに大江健三郎の長編を。なるほど、伝説や巨人、孤立した小さな村が大国を向こうにまわして戦争を始めたりするあたりは共通しているかも。しかし伊坂作品ではさすがにエンターテイメントとしてそれらの素材が昇華されていたけれど、大江健三郎はもっと難解。発表当時賛否が分かれたというのも頷けます。

    物語の外郭はある意味ファンタスティック。江戸時代に藩に追われて移住した人々が新しく築いた「村=国家=小宇宙」。森の中の隠れ里として独立したその共同体内で、百歳を超えてなお生き、さらに巨人化した創建者たちと、そのリーダーである「壊す人」の伝説をベースに、さまざまな伝説の人物、幕末維新期の一揆の指導者や、第二次大戦前に「大日本帝国」を敵にまわして戦われた「五十日戦争」などの壮大な歴史が、父=神主に伝承者として教育された主人公を通して、双子の妹への手紙という形で語られる。

    大江作品をすべて読んではいないけれど、随所に他作品との共通のモチーフが見られました。共同体ごとの失踪は短編「ブラジル風ポルトガル語」でも描かれていたし、一揆の指導者をめぐるあれこれは「万延元年のフットボール」、演出家と劇団員は後期の作品のあちこちに登場するし、森のフシギもまたしかり。そういった共通点は他の作品にも見られるけど、これはとくに集大成感が強かった。

    巨人化し、不死となる「壊す人」はマルケスの「族長の秋」の大統領を彷彿とされられました。読んでいて単純に一番面白かったのは「五十日戦争」の章。大日本帝国軍を向こうに回して対等に戦う村の人たちの戦術にハラハラドキドキもしたし、幽霊になって戻ってくる犬曳き屋や、自ら作った迷路から出られなくなってしまう子供たちの話など印象的なエピソードが多くて好きだった。

  • 狭く深く掘り下げるほどに、世界が広く濃く大きくなっていく。語り手、村=国家=小宇宙の世代を超えた歴史、語り手の家族たちの数奇な人生。さまざまな時間が「同時代」のことのように語られ、その中でも否応なく「時間」のにおいを感じざるを得ない。そして、最後の最後で本当に同時代のこととして解体された。閉じ方の完璧さ。
    解説もよかった。解説に書かれなきゃたぶん一生気づかなかったと思うけど、確かにこの小説はどこの章から読んでも問題ない。

  •  おおえー。
     冒頭からメキシコ、なんでやねん、というのは、これはすっごく大雑把に、南米への、つまり南米文学へのオマージュと、僕は取ったのだけれど、おそらく全体的にも、深層を探らせるように曲がりくねった文体を用いながらも、面白さを表層にとどめ続ける、何か、そのような得意な手法を著者は採用しているような、そんな印象をまずは持った。
     小説世界の神話化。ブームの火付け役となったマルケスの『百年の孤独』がどういう小説なのかということを、端的に言い表すなら、池澤夏樹の「フラクタル構造」というのが一番わかりやすく、しかも的確だと僕は思うんですが、神話というのは、「神話」という容れ物の中に、無数のエピソードがたくさん詰まっている。それは、全体の連関のうちにおいて存在感を発すると同時に、ただ一つのエピソードを抜き出しても、それぞれに別個の面白さが存在するものとして書かれている。「フラクタル構造」なわけです。フラクタル図形っていうのはどこを拡大してもそこに同じ図形が見出せる、あれですね。つまり「神話」というのはそのようなものとして書かれるものであって、完結した物語とエピソードの関わり方が単線的じゃない。ネットワーク的に、ウェブ的に、物語とエピソードが関わっていく。マルケスはそれを小説に導入し、迷宮のような語り口を獲得した、そういう意味で斬新な作家であったわけだけれど、それに触発される形で小説世界の神話化というものが、世界的に試みられるようになった。今超適当に考え付いた話ですが、そう遠くはないんじゃないかと勝手に思ってます。まあいいや。
     物語構成素の、並列的連関。フラクタル化。
     長ったらしくこんなことを持ち出してきたのは当然この『同時代ゲーム』もそうした手法で書かれていると僕は想像したからなんですが、それというのもこの小説の一番の醍醐味はどこかというと、わざとらしい大仰な口調での語りが、ありえない想像力の爆発を生んでいるところにある、と思ったからです。
     壊す人を中心に、描き出される村=国家=小宇宙の歴史。それは常人には覗き得ない異形の世界であり、SF的なまでに荒唐無稽なキャラクタが次々に現れては、地殻変動でも起こすかのように物語がごりごりと動いていく様は、正直言ってばかばかしい。ばかばかしいまでに、呆れるまでに、やりきってる。ここまでやるか、という感じがある。そしてその「ここまでやるか」感がこの作品の肝である、というように僕は思う。深層を探らせるように曲がりくねった文体を用いながらも、面白さを表層にとどめ続ける、というのはそういうこと。「いったい何が起きるんだ」とわくわくさせつつ、起きることのあまりのばかばかしさにずるっとずっこける感覚。決して悪い意味で言ってるわけじゃないので勘違いしないでほしいですが。その爆発的な笑いがこの作品の独創的なところであって、また一番面白いところだと思うのです。
     日本という国家と地方との関係において、パロディ的にグロテスクに統一幻想を暴き立てる、みたいな、僕も自分で何言ってるかよくわかってないですが、そういう話も、あるでしょうし、それも主題的な位置を占めているとは思いますが。しかしこの面白さはそこにとどまるものではないでしょう。

     再びメキシコ、第一章。
     読みにくい、といわれるけれど、ここにこれから展開される内容は、すべて開陳されているから、結局これ以外なかったはずだし、そうやって読めば、とても面白い章だと思う。ドタバタコメディ的な描写も多いけれど、それが後の爆発的想像力に直結される語りだったと思わされた時は、結構びりびりきましたよ。
     妹よ。

  • 四国の山奥に開拓された村=国家=小宇宙で語り手とその家族は平穏に暮らしていたが、大日本帝国の租税や徴兵から逃れるため一つの戸籍に二人の人間をおしこめるという「二重戸籍」の仕組みが暴露され、大日本帝国は軍隊を派兵し抹殺を試みる。村で人々はどういう暮らしをしていたのか、大日本帝国を相手にどうやって戦いを挑んだのか、そして語り手の家族が村から離れてどういう生活を送っていたのかが、自殺した妹に対する手紙という形式で綴られている。かなりの長編で読みづらかった。

  • 伊坂先生の『夜の国のクーパー』のあとがきで触れられていたので読んでみました。

    どうしても主人公や登場する人物全てに共感ができず、理解もできません。
    どちらかと言うと気味の悪さを感じてしまい、生理的に受付けませんでした。
    伝承の物語以前に人間関係の異常性がひっかかってしまい
    世界観にとても入っていけなかったです。
    私には合わない本でした。

  • 大学入ってから読んだ本のなかでNo. 1。

  • 2017年2月15日(水)読了

  • 読んだことある作家で言うと阿部公房、あるいは町田康のような。若い頃に出会っていたら最後まで読まなかったかも知れない。50日戦争のくだりは面白かったけど。

    内容は父=神主の息子である主人公が、自分の育った村=国家=小宇宙の創建期から現在までの神話および伝承を、双子の妹への手紙という形式で語る物語。

  • 岩波文庫の『M/Tと森のフシギの物語』を読もうと思ったら、こちらが元になっているということで、先に読んだ。
    手法としては南米文学へのオマージュという一面もあるのかな、と思うが、マジックリアリズムというよりはSF的なものを感じた。解説によると『純文学のSF化が状況論として語られたこともある』そうだ。しかし、ジャンル小説としてのSFとは、言うまでもないが明らかに違う。

  • 壮大な御伽噺、生々しい神話、それらに捉えられた剥き出しの魂。本当に壊す人と創建者たちが切り拓いた〈村=国家=小宇宙〉が存在したかのように「僕」の魂の物語が迫ってくる。
    人々が生き、生き続け、生き残り、繋いでいくそれぞれの土地には、それぞれに紡がれて行く物語があるはず。
    読んでいる時には〈村=国家=小宇宙〉が特別な世界に思えたのに、読み終えると、僕の生きた土地にもこんな神話があるんじゃないかと自然に思えてくるから不思議だ。

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