同時代ゲーム (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.52
  • (21)
  • (31)
  • (41)
  • (6)
  • (6)
本棚登録 : 585
感想 : 42
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101126142

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 狭く深く掘り下げるほどに、世界が広く濃く大きくなっていく。語り手、村=国家=小宇宙の世代を超えた歴史、語り手の家族たちの数奇な人生。さまざまな時間が「同時代」のことのように語られ、その中でも否応なく「時間」のにおいを感じざるを得ない。そして、最後の最後で本当に同時代のこととして解体された。閉じ方の完璧さ。
    解説もよかった。解説に書かれなきゃたぶん一生気づかなかったと思うけど、確かにこの小説はどこの章から読んでも問題ない。

  • 以前1/3くらいで挫折。今回も1年くらいかかった。これまでのいきさつと作者の現状の説明と故郷の歴史とのない交ぜと、大江独特の硬質な文体に慣れるまでの「第一の手紙」が一番の難所。大きな歴史としての時間、家族の昔とその後、双子である主人公と妹の目を通して"現在"として移動する時間、と複層的な構造を往還しながら着地点がわからないまま運ばれていく。小説何個分にもなりそうな登場人物やプロットがたいして掘り下げられもせず惜しげもなく投入される。なんか"けり"もつかないまま放り出されて終わるのも凄い。とにかく圧倒的。

  • 大学入ってから読んだ本のなかでNo. 1。

  • ストーリーのみを追えばSFファンタジー小説だが、緻密に練り上げられた文章で読書の醍醐味を堪能させてくれる文学小説だ。

  • 再読。二度と読むまいと思っていた禁断の書を解禁。出だしからの悪文に次ぐ悪文に早くも投げ出したくなる。一文を何度も繰り返し読んでは喰らいつき噛み砕く、この行程なしに読み進めることは不可能。これは作者の確信犯的な戦略。タイトルを上っ面で解釈するのは可能だがそんなことしたくない。死と再生なんて言葉を借りて容易く繰り言したくもない。ただこの小説を足掻き貪り読んだ時間こそが掛け替えのない稀有な体験だ。作者と魂を共有できたというとんでもない満足感。生きてるうちにもう一度読み返してやる。これを読まずに死ねるかのスペシャル級大傑作。

  •  ある集落を追放された人々が、四国の山奥に小国家を創造した。外来者どうしの両親から生まれた「僕」が、双生児の妹へと向けて書簡の形式でしたためた、《村=国家=小宇宙》の神話と歴史のすべて。
     どの語がどの語にかかっているのかわかりづらい、英文を逐語訳したような独特の文章で綴られる、現代におけるあまたのエピソード。そのそれぞれが僕の記憶と結びついて《村=国家=小宇宙》の神話や歴史を語らせる……

     つまりは日本の中にあるもう一つの小国家の創建以降の伝承を語った物語。その意味で小説内において一つの国家を造りあげるような試みを作者は行なっている。それだけでも、まずはこの厖大な想像力に敬服する。
     また、場所・時間が複雑に交差し合うエピソード群を読み終えたのち見えてくる、歴史のパースペクティブが無意味なものとなるような《村=国家=小宇宙》の超越的な有り様は、新鮮な読書体験を提供してくれるだろう。

  • これを生の日本語で読めることはとてつもない贅沢だ。「押し込め」→「お醜女」と解読して行く言葉の閃きのセンスなんかは必ずしも日本語にのみに適用される訳ではないけれど、大江健三郎の言葉の選択を直に見ることが出来る愉悦。よく言われる冒頭の読みにくさにもそれこそアハハと大笑いさせられた。彼の言葉の逸脱ぶりはいつも心地いい。テングの陰間と呼ばれるに至る事件の間での「小宇宙」を見る神秘的体験に、大江健三郎の学部時代から『個人的体験』あたりのサルトルしばりな実存主義からの飛躍が始まる。後の作品の為にも必読な「聖書」。

  • 難物です。本人が全部書いてまた第一章を書き直したというくらいなので、最初から生真面目に読むとそこでもう挫折しそうです(笑)。けれどこれは、全部読み終えたときのその独創性、重量感たるや類をみないものです。初期大江作品が必ずといっていいほど書評にあがるのに対して、この頃以後はあまり語られませんが、万延元年と折り返して向井側にあるような作品ではないかと。大江作品の中では傑作の1つだと信じております。この不可思議で民俗的な世界は、作品の通り、まるで遡行していく旅でもあります。脳髄に。全部読むと第一章に戻りたくなるんですが、ほんっとに最初でかなりの人が挫折するかと思う手強さなもんで(笑)

著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大江健三郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
ガブリエル ガル...
フランツ・カフカ
ポール・オースタ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×