女坂 (新潮文庫)

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著者 : 円地文子
  • 新潮社 (1961年4月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101127026

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女坂 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 去年読んだ中でベスト3に入るかなという小説。円地文子初読みであったが予想以上に素晴らしい小説だった。

    倫を中心として、その夫や息子、嫁、夫の妾など様々な人物が登場しながら、絵巻をなしていく。倫の苦悩を軸としつつも、みんなどこかで悩み、何か得体のしれないものに囚われており、その何かに縛られる様は美しく端正な文章とあいまって普遍的な人間一般の苦悩にまで昇華されているような印象を受けた。著者が源氏の訳者でもあるのは納得がいく話だと思った。

    「一気に読んだ!」というのが褒め言葉なのかどうかいまひとつわからないが、途中で止まらずに最後まで読んだ小説であった。

  • 女流作家が少なく今よりも封建的な家庭が多かった時代にこれほど男性を否定的に描くことに喝采を浴びなかったかもしれない。しかし、辟易するような理不尽さに悩みながらも強く生きる筆者に我が母の強さが重なる。このように妻を苦しめないと誓った。

  • 倫を苦しめる家という囲いの窮屈さは勿論なんだけれど、須賀と由美の分かれ道の対照的なこととか、最後まで読んでいて息苦しくて仕方ない。
    倫の亡くなったあとは白川家は大丈夫なのか。

  • 家にあったので読んでみた。ストーリーは、明治時代のひとりの女性が、奔放な夫に振り回されながらも、耐え忍んで生きるという、読んでいてこちらも気持ちが重くなるもの。
    ストーリーは鬱々としながらも、すらすら読み進められるのは、著者の美しい文体、明治時代に自然に入り込める描写があるからかもしれない。幾人かの女性が登場し、キャラクターがはっきり書きわけられていた。中でも「お由美さん」という、さっぱりとした気性の女性が一番印象が良かった。
    円地さんの他の作品も読んでみたい。

  • 夫の妾を見繕う妻。その生涯。
    さっぱりと進んで、面白かった。

  • 桜庭一樹読書日記で気になった本。夫のために自ら妾を見つけてきて同居し、自分の心は封じ込めて“家”を守り続ける-どろどろとした内容、悲しい女の年代記、のはずなんだけど、するする読めて明治の風俗も面白く、読後感も悪くない。

  • これは男女問わず読むべきだと思います。

  • お家騒動にも、妾捜しにも自らが手を下す。
    自分がやったこと、という思いが
    全てのことに耐え抜く糧となった。

  • 「家」という制度、倫理に女がいかに縛られるかが、非常に克明に描き出されている。

    その女の名を、倫(とも)という。
    まずこの名が皮肉だと思った。彼女に倫の字を使うとは。

    作品の設定はどろどろしており、語られる言葉は重みを持っている。しかし、汚らしくも、陰鬱でもない。
    それは、環境を意志の力で乗り切ろうとする倫の、張りすぎた弦のように凛とした様によるものであろう。

    この作品において、忍従が美でありうるとすれば、あまりに頑なで切実である。

  • 母に面白いと薦められて。女性に対する表現が男性目線というか悪意や嫉妬のない描き方で愛憎ドロドロな内容なのに珍しく品がある作品だったと思う。

  • 主人公の倫が、妻妾同居という異様な環境を生き耐え抜く物語。
    女VS男の構図が読み取れますが、じっくりと読んでみると、実は倫以外は「男女の規範」から抜け出せずに、抜け出そうともせずに戦いを放棄しています。
    倫は独りで戦ったのです。
    妾を自らの手で探し、夫の黒い感情のぶつけどころにされ、それでも耐え抜いた倫の最後の台詞には、夫への逆襲の意味が含まれているのでしょう。

  • この短い物語は読了するのに半端ない気力、体力、集中力を要求した。ていうか、私から容赦なく気力、体力、集中力を奪った。
    正直ここまで快楽を伴わない読書は久しぶりだったが、これ程までに言葉の深みを噛みしめながら読み進んだのは、小学校高学年の頃、意味も分からず精一杯背伸びして濫読した海外の翻訳文学以来だ。生半可に行間なんかは読ませない、という筆者の執念、いや怨念とでも言うべき筆力が、それでも私を途方もない読後感の海へと放り出してくれた。
    趣味嗜好度外視してでも日本人ならいつか触れるべき名作。

  • 不義な舞台を描きつつも、不思議に活き活きとした瑞々しさを感じさせる。

    人の弱さ、醜さ、狡猾さ、逞しさ、慈悲深さ。そして、優美さへの憧憬。
    様々な感情がせめぎ合い、凍りつく。溶け合う。

    暗鬱に蠢く心をひた隠して、突っ張ってみせる、この毅然とした気持ちの高ぶりこそがまさに生きる姿でもあるかのように、生命力を感じさせる作品だった。

    女坂は、倫という女性の一生を通じて、
    封建的な社会の圧迫感、エロティシズムを巧みに操りにながら、人間の生き様を描いている。

    目の前に続くなだらかな坂を登る。
    時に快活に、時にひと足ひと足抜くように。もう終わりか、まだ続くのか。
    押し殺したような、湿った息づかいが聞こえてくるようだ。

    最後の一歩を踏み込んだ先には、きっと心を慰めてくれるようなことがあると信じて、登り続ける。

    ぜひ、最期に倫が観る世界を覗きみてもらいたい。

  • ずっと前から読みたいと思っていた『女坂』を古本屋で見つけて購入。
    開けば最後、終わりまで読み手を引き離すことのない本だった。
    夫の身勝手さにふりまわされた明治の女の一代記。
    主人公の倫は怖い。彼女の死に際のセリフは特に。
    すべてはこのセリフを書くためにあったのではないかと思うほどだ。
    この薄い文庫本は、これから長く私の本棚の一角を占め続けるだろう。

  • いつの時代も 男の人は勝手で それに振り回されている
    女の人は大変だなぁという印象。
    そんな生活の中でも 女の人は自分の存在意義や 生きる上での
    支えを見つけて行かなければならない事実が すごく身にしみた。
    登場人物 どの女性の立場に立ってもツライ。
    でも何度か読み返してみると 行友の立場に立っても 全く
    気が抜けなくて 男の人は男の人で ヒトに言えない辛さを
    抱えているのかなぁ という気もする。
    ・・要は形や制度よりも 相手に対する思いやりで 「毎日」って
    成り立っているのだろう。

  • 主人公の生き方には胸が痛む。坂と主人公の対峙するシーンが見事。

  • 風景描写というか心象風景の表現の仕方がとにかく美しくて引き込まれた。

    旦那の妾を探したり不祥事を尻拭いしたりと金銭的には裕福だけど女としては不遇の人生を送っているはずなのに、正妻といい妾たちといいとても清清しく美しい。

    内容だけ追えばどろどろとした話なのに魅力的な女性ばかりが出てくるので暑苦しさを感じずに読める。

    その分同情はしずらいけど。

  • ○2010/06/07 
    授業で使うので購入。あらすじを読んだ時点でいかにもドロドロ陰鬱としてそうでどうしようかと思った。まぁ確かに進みは悪かった。でも視点が基本的に倫に置かれているからか、その倫の嫉妬も感じたりするけど諦めが大半の感情もそんなに重っ苦しすぎなかった。
    というかあらゆる意味でこんな時代いやだ(笑)このぐちゃぐちゃ感が黙認というか容認されているのが何とも。
    純文学といわれて、精神描写も丁寧だし綺麗だし確かにそうだなぁと思うけど、純粋に純文学ではないかなという気がした。特殊な女性視点というか。まぁ単に身勝手すぎる男滅べという嫌悪感が入ってきてるのかもしれないけど。

  • 無理。この世界の住人であることは無理。あ、旦那の立場だったら、いいか・・・。

  • なんか、すごい世界。。。そして、すごい小説。ずーーっと重い雰囲気の物語なんだけど、でもおもしろかった。おもしろかった、というのとは少しちがうのかもしれないけど。何年もしてまた読んでみたい。
    これって映像化されてないのかな??
    最後の終わり方がすごい。

  • テストをはさんで読み終えるまでにかなり時間がかかってしまう。
    だから星の数はあまり気にしないでください。

    必ずしも頭がよくて、強くあろうとすることが、幸せではないと感じる。
    全身全霊をかけて家を守ろうとした女性の話。
    しかし、彼女には家に自らが所属しているという感覚はあったんだろうか。

  • 明治初期、世に時めく地方官吏白川行友の妻倫は、良人に妾を探すために上京した。
    妻妾を同居させ、小間使いや長男の嫁にまで手を出す行友に、ひとことも文句を言わずにじっと耐える倫。
    彼女はさらに息子や孫の不行跡の後始末に駆けまわらなければならなかった。
    すべてを犠牲にして、“家”という倫理に殉じ、真実の“愛”を知ることのなかった女の一生の悲劇と怨念を描く長編。

    個人的にはとてもすばらしい作品だと思う。
    「こんなの古い」と言われたらそれまでだけど。
    明治ということで、注釈もたくさんあるが、
    和装や仏教(特に浄土真宗)に少しでも知識がある人ならそつなく読めると思う。

    明治という時代、倫のような生き方、考えは当然のことだったかも知れない。
    夫の妾を妻が見つけに上京することや、一つ屋根の下で妻や妾が同居することなど、
    確かに理解しがたいところもある。
    しかし、倫の心の中が丹念に描かれているので案外すんなり理解できる。

    また最も興味深かったのは、
    いつの時代も、愛する人の気持ちが自分から離れていくときは同じ気持ちになるのだと、
    感情面では変わることのない女の苦しみや葛藤、不安が描かれていて、
    「あぁ、これはいつも一緒なんだ」
    と倫を見ていると、そう思ってしまう。
    時代は変われども女の心は変わらないんだと。

    主に倫という一人の人間の視点で、
    「このとき倫はこうした」、「このとき倫はこう思った」といった感じで倫目線で進み、
    しかし最初は一人の妾もいないところから、最後は倫も老い、孫もいるようなところへと、
    時代の移り変わりが倫の評価、周囲からの印象をも変えてしまい、
    切なくなっていく。

    「倫は夫と家とを大切に思う道徳で厳しく自分を縛って、誰からも非を打たれないように油断なく家事に心をつかって暮らしていた。
    倫とすれば一ぱいの愛情と知恵が夫を中心とした白川家の生活につめこまれていたのである。」(16頁)

    様々なことに勝るくらいの愛情(そして知恵)というのは、現代人のほうが失い、劣るのかも知れない。

    「ここ一、二年の間に天下がとれなければ、おれ達の幕は下りるな。しかしおれはそれまで生きていたくないよ」(84頁)

    川島総監の一言。

    「小さな幸福、つつましい調和…結局人間が力限り根限り、呼び、狂い、泣きわめいて求めるものはこれ以上の何ものであろうか」(208頁)

    最後、坂を上りながら考える倫。
    不覚にも涙を流してしまうあたり。
    こういうことは若いときには考えもしない問題なのだろう。

    2009年7月12日。

    案外女は強く、芯をしっかり持っているもんです。

  • 円地文子らしいといえばらしいのか。

  • 円地文子の傑作です。

  • 「父の詫び状」後書きで沢木耕太郎が「明治が書いてあるのが円地文子の女坂」と褒めているので読んでみた。ホントだ・・・なんだ、この凄ましい表現は!明治を想像してみる。

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