女坂 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101127026

感想・レビュー・書評

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  • 円地文子といえば源氏物語の現代語訳をした「女流作家」(と昔は言っていた。つまり作家は男の仕事であって、女がするのは特殊なことであるという考えだった。一段下に見られていた。)という認識しかなかったのだが、読んでみて驚いた。
    すごい。
    明治時代の高級官僚の妻の人生を描いた小説なのだが、その文章の巧さ、深い教養に裏打ちされた描写の確かさ、冷徹な人間観察、物語の面白さ、どれをとっても一級で、文句のつけようがない。
    こういうの読んだら明治(だけでなく、自分が生きていない時代の)女性を描いた小説なんかおそろしくて書けないんじゃないかと思う。その人の身分、年齢、家柄、財産、性格によってこれだけ着物の着方、柄、生地、仕立てに違いがあることを十全に知っていなければ風俗なんて描けないのだ。髪型もまた。
     30代の妻倫(とも)はひとまわり年上の夫から、気立てと器量の良い生娘を妾としたいから(とはもちろんはっきり言わないが)探してこいと言われて、東京にやってくるところから始まる。えっ!?妾を妻に探させるの?と驚くが、当時地位も収入もある男なら妾を囲うのは普通であり、妻がそれに異を唱えることはできないのだ。それに、変な女を夫が連れてきて家を乗っ取られる(妻である自分が追い出される)可能性を考えると、子どものためにも、おとなしくて野心のない娘を自分で選んだほうが安全であるという計算もあった。しかしもちろん、心では割りきっているわけではない。親の借金のカタに、まだ少女の身でわけもわからず連れてこられる娘は不憫であるし、自分が選ぶ以上娘とその親に対して責任もあるわけだが、夫が娘に贅を尽くした部屋や着物を用意したり、娘の気を引こうと夫がすぐに手を出さず、鷹揚にふるまうのを見て嫉妬で狂いそうにもなるのである。
    妻妾同居という女性の人権(なんて考えたこともなかったろうが。当時の男は。)無視の生活で苦しむ女たちを描いて、ドロドロの愛憎劇と言えるし、下世話な物語になってもおかしくない素材なのに、そうならないのは、やはり作者の知性、理性、人間としての格の高さの表れだと思う。紫式部みたい。
    この人が源氏物語を訳したことに深く納得した。

    源氏物語の好きな人は読むべき。舞台は明治だが、まさにそういった世界。
    本当にすごい作家だと思った。現代の作家がかすむ。

  • 去年読んだ中でベスト3に入るかなという小説。円地文子初読みであったが予想以上に素晴らしい小説だった。

    倫を中心として、その夫や息子、嫁、夫の妾など様々な人物が登場しながら、絵巻をなしていく。倫の苦悩を軸としつつも、みんなどこかで悩み、何か得体のしれないものに囚われており、その何かに縛られる様は美しく端正な文章とあいまって普遍的な人間一般の苦悩にまで昇華されているような印象を受けた。著者が源氏の訳者でもあるのは納得がいく話だと思った。

    「一気に読んだ!」というのが褒め言葉なのかどうかいまひとつわからないが、途中で止まらずに最後まで読んだ小説であった。

  • 今のジェンダー観で言えばあり得ない世界観といえるがどこか身近に感じる作品。円地文子ならではの美しい文体や江戸文化が織り込まれているところもいい。登場する男たちの大半はとんでもなく、酷い男ばかり。倫の夫である、白川にしても何人の女と関係しても満たされず、ただ女を所有することで自分の男としての価値を確認したいだけに感じた。性別は別として、他人をムダに管理、所有することで自分の集団内での価値や権限を確認したい人間に近いものを感じた。
    また、倫と女たちの関係(正妻と妾、姑と嫁)は旧式なものなので仕方がないが加害者である白川ではなく、倫を憎む(しかしながら倫に庇護されているのだが)ことで成り立っている点も変わっていないと感じる部分。意識的にか無意識にか、本来に組まなくて良い筈の関係に対立軸や分断を煽るのはいまでも見られる手法。
    わかりやすさ重視の社会の中でどれだけこの作品が受け入れられるか分からないが残ってる欲しい作品。

  •  
    ── 円地 文子《女坂 1957‥‥ 19610418 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101127026
     
     
    (20231128)

  • 明治時代の封建的な社会において、女性の地位も権利もないに等しい中で生きていく女性たちの扱われ方は知ってはいたが、やはり悲惨だった。
    正妻が夫の妾を選ぶなんて、一緒に暮らすなんて、夫が関係を持つ女も1人や2人なんてものではないなんて、、今では考えられない。江戸時代から明治になって急速に近代化が進み、激動な時代を経て現在があるのだと思うと自由に生きられる事が幸せだと思わなければバチがあたるのでしょう。
    自分が選んだ妾に夫の手がかった時、夫を殺す夢まで見るほどの苦悩な様子は胸が痛くなる。
    その後孫の代まで苦悩は続くが、倫理から外れた夫に対する愛情は失せ、心理が変化していく様子は辛いものがあったし、妾や嫁などの女性たちそれぞれの立場、気持ちや人生についても描かれており、女性の人権が確立している今に至るまでの女性たちの尽力もまた素晴らしいと思った。
    妻の倫が死ぬ間際に『海へ私の身体をざんぶり捨ててください…』と夫に伝えた言葉は、耐え抜いた人生の最期のありったけの思いであり、壮絶な女の一生が描かれた名作でした。

  •  1957(昭和32)年の作品だが、描出される時代背景は明治なので、もっと古い小説のような錯覚に囚われる。読んでみると、「まさにザ・日本近代文学」という特長に満たされているのでますますそんな感じがする。
     堅牢ですこぶる充実した文体が前面に押し出された、堂々たる近代文学。人物の過去や微妙なニュアンスが個々の文に重厚に込められており、これを十分に味わい尽くすのがこの作品の醍醐味だ。とにかく改行だらけであまり「描写」に重きを置かない今日の小説文化とはまったく異なっていて、読書にもスピード感がひたすら求められる余裕のなさ過ぎる現代人にとっては、こんな濃密な文体はきっと拒絶されることだろう。そう考えると、失われた文学性というものがとても惜しく感じられる。
     物語は、日本の近代的な家父長制において虐げられる女性たちの状況や心情を追って進んで行く。地方官吏である夫行友は自由民権運動を弾圧することに喜びを覚えているらしい権力者で、ふんぞり返っている上にやたらと女癖が悪い。妻である倫(とも)が、彼が自宅で囲う妾を見つけるために上京するという場面で小説は始まる。そんないびつな立場と夫に嫌悪をおぼえながらも自ら「殉じている」といった風な女主人公の意識の移ろいが、物語の時制の中でふらふらと浮いている。
     この時代の女性たちは反抗を封じられていて、男尊女卑の色濃い社会システムがもたらす女性の内面の軋轢は昭和を通して貫かれ、現在でさえその傾向は生きている。物語としての本作はそのような観点から興味を持たれるものであろう。
     最後の方で雪の降る坂を登りつつ、老いた女性主人公が苦渋に満ちた人生を振り返りつつ、絶望せずに坂を登るのだ、闇の果てに明るい世界がきっとあるのだ、と独りごちる場面が唐突な明白さで記述される。しかし彼女は、自身が忍従してきたことに意味がなかったわけではない、と強いて考えている。自ら-隷従するという権力を支えるシステムに人生を費やした人間のアンビバレンツな心情が「問い」として提起されている。
     本作は途中で妾となった須賀などの他の女性の心情の微妙さも掘り出されており、作品の重み・深みがいっそう増している。これが映画化されたとしても(映画化されていそうだが、知らない)、それはまあ、別物になるだろう。それは本作がとにかく「文章」の充溢によって成立しているからだ。
     そのような「文学」というものの技芸が失われてしまった現代社会の心細さが、何とも痛切に感じられてくる。

  • 円地 文子(1905年(明治38年)10月2日 - 1986年(昭和61年)11月14日)は,日本の小説家。江戸末期の頽廃的な耽美文芸の影響を受け,抑圧された女の業や執念を描いて古典的妖艶美に到達。戦後の女流文壇の第一人者として高く評価された。『源氏物語』の翻訳でも知られる。

    「女坂」は1957年3月角川書店刊,第10回野間文芸賞受賞作である。"The Waving Years"の題で英訳(1980年)されてもいる。

    一般的に,「家」という倫理(制度)に対して耐え忍ぶほかのない女の一生について書かれた作品と解釈される。中にはストイシズムを指摘する感想もあって面白い。

    何も女に限らず,男もまた「家」の維持装置に過ぎない。それは「家族」へと変容しつつある現代でも,そう大きくは変わらない。

    文学の持つ力というのは厄介で,世代を超える呪詛を実現してしまうことも多々ある。明治という改革の時代より,現代に至り華やかな記憶だけが選別される中で,ひっそりと伝播する怨念が本作の魅力なのだろう。

  • カテゴリ:図書館企画展示
    2020年度第3回図書館企画展示
    「大学生に読んでほしい本」 第2弾!

     本学教員から本学学生の皆さんに「ぜひ学生時代に読んでほしい!」という図書の推薦に係る展示です。
     川津誠教授(日本語日本文学科)からのおすすめ図書を展示しています。
     展示中の図書は借りることができますので、どうぞお早めにご来館ください。

  • 名作小説。

    何が名作かというと、著者の流麗かつ知的な語り口が最高。無駄のない完成された文体。しかし著者は出しゃばらない。「人々の口から口へひっそりと話されていた名流一族の内幕」を小説化したという。自動筆記のように流れるがままに描いたようなドライブ感が凄い。
    妻妾同居という異常な家庭環境の中での抑圧された女たちの半世紀、異常なのだけれど、一見華やかなライフスタイル。庭園を散歩する娘、妻、妾たちは、あたかも錦絵のようだと端からはため息をつかれるほどの美しさ。
    明治〜大正の江戸情緒残る喋りや振る舞い、女たちの装束の描写も板について、美しい映画を見るようで酔いしれてしまう。
    奴隷のように女性を扱うおぞましい世界でありながら、美しい。 

  • 2020.9
    表現が豊かでその世界にどっぷりはまった。少し前の時代。家や男が絶対で女の人には今のような自由はなかった。波乱万丈な人生に翻弄されつつ生きる女の精神的な強さが描かれる。制限のある時代だからこその諦めやしたたかさや温かさ。時代物が読まれる理由がわかった。ドラマティックなんだ。

  • 解説は江藤淳。珍しいが冒頭から賞賛の一文を記している。
    「『女坂』がいかに傑作であるかということについては、すでに諸家の批評があるから、ここでくだくだしく繰り返す必要はない」。
    家制度という虚構。その犠牲となる明治の女性の生涯を描き、女性の生きづらさや悲哀を坂を上る苦しみに喩えた。谷崎の影響から、雅で艶やか、官能美を湛えた耽美な文章は、一度触れると最後まで関らざるを得ない魅力がある。ずるずると物語に曳き込まれます。

  • 多分再読、そして言わずもがなですが傑作。小説の長さも絶妙。
    これは間違いなく良い意味での女性作家の手になる作品かと。上手く言えないですが、諦観、打算、依存等、男性作家が使いこなせない微妙な感情をベースに「家」の物語を描き切る。さらにこの作品が抜けているのは、物語が不必要に高揚しないところ。色んな意味で奥があります。

  •  初版は角川書店(1957年3月)。明治維新期に成り上がった男の妻として、明治に新しく「家」をなした新興富裕層の家宰/姥として、家の中に何人も妾を住まわせ、挙げ句の果てには息子の妻にまで手を出す好色な夫の庇護者として生きた女性の一代記的小説。作品解説を『一族再会』の江藤淳が担当していて、制度を守ること・非人間的な制度に自らを矯め合わせていくことにエロティシズムを見て取っているあたり、さすがという他にない。やはり江藤は読み巧者だと思わされた。
     ある意味で日本近代史の縮図とも見られる作品で、登場人物それぞれに物語がありそうなのに、そこをあえて書かないところも興味深い。たとえば同じテーマを山崎豊子や松本清張が欠いたら、それは大変なことになるはずだ(笑)ありがちな愛憎劇に走らない代わりに、倫の心象風景としてところどころに差し挟まされた情景の描写がほんとうに美しい。倫の凜とした立ち居振る舞いと、ムダのない清潔な文体とが見合っていて、独特の香気を漂わせている。

  • 妻が夫の妾を探しにいくところからはじまる物語。二人の妾と夫と関係している嫁と同居する主人公。家中で次から次へと起きる厄介事を淡々と取り仕切る。横暴な夫に悩まされながら家を守る女の姿に、「春燈」(宮尾登美子)の喜和を思い出した。平凡な昔の女性の姿を描いた本作みたいな話が好き。自分も女の一生を生ききった気持ちになる。

  • 円地文子 「 女坂 」

    夫の度重なる不倫から家を守った妻の物語。家を守る支配者としての妻と 男尊女卑の象徴である妾 を対称的に描いている。

    結婚後は夫の愛を必要とせず 家を支配する妻と 関係後も夫の愛を前提として 家の中に入れない 妾 の対称性。妻がいなくなっても、この関係は 変わらないことを想像させる

    妻から夫への最期の言葉「葬式などせず、海へ 私の身体を、ざんぶりと捨ててください」は
    *夫と家の抑圧から 解放され、自分に戻れる 幸福感
    *夫を増長させ、仏教的な倫理感を守れなかった自身への罰 と捉えた

    「人間というものは どうあせっても思い通りに行くものではない〜何事も無理せぬように 阿弥陀様にお任せする」

  • 女流作家が少なく今よりも封建的な家庭が多かった時代にこれほど男性を否定的に描くことに喝采を浴びなかったかもしれない。しかし、辟易するような理不尽さに悩みながらも強く生きる筆者に我が母の強さが重なる。このように妻を苦しめないと誓った。

  • 倫を苦しめる家という囲いの窮屈さは勿論なんだけれど、須賀と由美の分かれ道の対照的なこととか、最後まで読んでいて息苦しくて仕方ない。
    倫の亡くなったあとは白川家は大丈夫なのか。

  • 家にあったので読んでみた。ストーリーは、明治時代のひとりの女性が、奔放な夫に振り回されながらも、耐え忍んで生きるという、読んでいてこちらも気持ちが重くなるもの。
    ストーリーは鬱々としながらも、すらすら読み進められるのは、著者の美しい文体、明治時代に自然に入り込める描写があるからかもしれない。幾人かの女性が登場し、キャラクターがはっきり書きわけられていた。中でも「お由美さん」という、さっぱりとした気性の女性が一番印象が良かった。
    円地さんの他の作品も読んでみたい。

  • 夫の妾を見繕う妻。その生涯。
    さっぱりと進んで、面白かった。

  • 桜庭一樹読書日記で気になった本。夫のために自ら妾を見つけてきて同居し、自分の心は封じ込めて“家”を守り続ける-どろどろとした内容、悲しい女の年代記、のはずなんだけど、するする読めて明治の風俗も面白く、読後感も悪くない。

  • これは男女問わず読むべきだと思います。

  • お家騒動にも、妾捜しにも自らが手を下す。
    自分がやったこと、という思いが
    全てのことに耐え抜く糧となった。

  • 「家」という制度、倫理に女がいかに縛られるかが、非常に克明に描き出されている。

    その女の名を、倫(とも)という。
    まずこの名が皮肉だと思った。彼女に倫の字を使うとは。

    作品の設定はどろどろしており、語られる言葉は重みを持っている。しかし、汚らしくも、陰鬱でもない。
    それは、環境を意志の力で乗り切ろうとする倫の、張りすぎた弦のように凛とした様によるものであろう。

    この作品において、忍従が美でありうるとすれば、あまりに頑なで切実である。

  • 母に面白いと薦められて。女性に対する表現が男性目線というか悪意や嫉妬のない描き方で愛憎ドロドロな内容なのに珍しく品がある作品だったと思う。

  • 主人公の倫が、妻妾同居という異様な環境を生き耐え抜く物語。
    女VS男の構図が読み取れますが、じっくりと読んでみると、実は倫以外は「男女の規範」から抜け出せずに、抜け出そうともせずに戦いを放棄しています。
    倫は独りで戦ったのです。
    妾を自らの手で探し、夫の黒い感情のぶつけどころにされ、それでも耐え抜いた倫の最後の台詞には、夫への逆襲の意味が含まれているのでしょう。

  • この短い物語は読了するのに半端ない気力、体力、集中力を要求した。ていうか、私から容赦なく気力、体力、集中力を奪った。
    正直ここまで快楽を伴わない読書は久しぶりだったが、これ程までに言葉の深みを噛みしめながら読み進んだのは、小学校高学年の頃、意味も分からず精一杯背伸びして濫読した海外の翻訳文学以来だ。生半可に行間なんかは読ませない、という筆者の執念、いや怨念とでも言うべき筆力が、それでも私を途方もない読後感の海へと放り出してくれた。
    趣味嗜好度外視してでも日本人ならいつか触れるべき名作。

  • 不義な舞台を描きつつも、不思議に活き活きとした瑞々しさを感じさせる。

    人の弱さ、醜さ、狡猾さ、逞しさ、慈悲深さ。そして、優美さへの憧憬。
    様々な感情がせめぎ合い、凍りつく。溶け合う。

    暗鬱に蠢く心をひた隠して、突っ張ってみせる、この毅然とした気持ちの高ぶりこそがまさに生きる姿でもあるかのように、生命力を感じさせる作品だった。

    女坂は、倫という女性の一生を通じて、
    封建的な社会の圧迫感、エロティシズムを巧みに操りにながら、人間の生き様を描いている。

    目の前に続くなだらかな坂を登る。
    時に快活に、時にひと足ひと足抜くように。もう終わりか、まだ続くのか。
    押し殺したような、湿った息づかいが聞こえてくるようだ。

    最後の一歩を踏み込んだ先には、きっと心を慰めてくれるようなことがあると信じて、登り続ける。

    ぜひ、最期に倫が観る世界を覗きみてもらいたい。

  • ずっと前から読みたいと思っていた『女坂』を古本屋で見つけて購入。
    開けば最後、終わりまで読み手を引き離すことのない本だった。
    夫の身勝手さにふりまわされた明治の女の一代記。
    主人公の倫は怖い。彼女の死に際のセリフは特に。
    すべてはこのセリフを書くためにあったのではないかと思うほどだ。
    この薄い文庫本は、これから長く私の本棚の一角を占め続けるだろう。

  • いつの時代も 男の人は勝手で それに振り回されている
    女の人は大変だなぁという印象。
    そんな生活の中でも 女の人は自分の存在意義や 生きる上での
    支えを見つけて行かなければならない事実が すごく身にしみた。
    登場人物 どの女性の立場に立ってもツライ。
    でも何度か読み返してみると 行友の立場に立っても 全く
    気が抜けなくて 男の人は男の人で ヒトに言えない辛さを
    抱えているのかなぁ という気もする。
    ・・要は形や制度よりも 相手に対する思いやりで 「毎日」って
    成り立っているのだろう。

  • 主人公の生き方には胸が痛む。坂と主人公の対峙するシーンが見事。

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著者プロフィール

円地文子

一九〇五(明治三十八)年東京生まれ。小説家、劇作家。国語学者・上田万年の次女。日本女子大附属高等女学校中退。豊かな古典の教養をもとに女性の執念や業を描いた。主な作品に『女坂』(野間文芸賞)、自伝的三部作『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』(谷崎潤一郎賞)、『なまみこ物語』(女流文学賞)、『遊魂』(日本文学大賞)など。また『源氏物語』の現代語訳でも知られる。八五(昭和六十)年文化勲章受章。八六年没。

「2022年 『食卓のない家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

円地文子の作品

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