- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101128016
感想・レビュー・書評
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芥川賞受賞の初期作品集。
社会的な喚起を伴う堅真面目な文体。
言葉選びや話の運びが凄まじく上手いが、流石に真面目すぎで読み疲れしてしまった印象。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ネズミの大発生による街の混乱、それを予見していた役人による奔走、そして現実を直視しようとしない官僚による保身。おそらく21世紀においても、現代の寓話と読めてしまう「パニック」。主人公の男性は、よくある近年の小説(いわゆる「お仕事小説」)における公務員のように奮闘をするのですが、どこか事態を――そして自身すらを――冷めて見てもいます。
後年になって作者は、初期の作品を「遠心力」だけで書いたと述べていたそうです。なるほど、作者の視線は主人公の感情よりも外側の社会に向いていますし、それはつづく「巨人と玩具」においても類似しています。子ども向けの製菓産業を舞台にして、主人公が勤める会社の悪銭苦闘と、主人公の周囲の人間模様をリアルかつクールに描いています。
個人的には、上記2作の(「お仕事小説」ではなく)仕事小説が、巨匠の魅力と実力の一片を知れてよかったと思える作品です。下世話な言い方をすれば、「買ってよかった」と思える2作。
つづく残り2作は、子どもの想像力を大人と対比して美化する『星の王子さま』に(少なくともテーマ的には)似ていなくもない「裸の王様」と、壮大な計画のもとに編成された指導者と労働者による組織がもたらす不条理を活写するカフカの「万里の長城」を思わす「流亡記」。このように、どちらも先行作品を想起させてしまい、どうしても楽しめなかったというのが実情です。
カミュの『ペスト』、開高健の「パニック」、そして現代中国SFアンソロジー『折りたたみ北京』巻頭に所収された陳楸帆の「鼠年」は、ネズミの大発生によるパニックものとしておススメです。 -
開高健 短編集。「裸の王様」「パニック」は 読みやすく、モチーフの本来の意味 と 小説のテーマを リンクさせた構成が 面白い。「なまけもの」「流亡記」は 落ちていく人生 という感じ
「 裸の王様 」アンデルセン「裸の王様」をモチーフに
*権力の虚栄と愚劣
*主人公 太郎の子供らしい感情の回復(鋳型の破壊)
を描いた短編
「 パニック 」ネズミの大群によるパニックをモチーフに
*ネズミの大群が持つ 巨大で 妄信的なエネルギー
*官僚組織(人間の群れ)が持つ 腐敗体質
を描いた短編
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はじめての開高健。全4作共通して主人公が優秀なせいか、読んでて安心感があるというかストーリーの乱高下にモニターが振り回されないで済むので、終始落ち着いて食い入るように読めた。裸の王様を読んでスカッとしたし、逃亡記を読んで鬱屈としたけどつまりは、誰もがそうだと頷くようなあるべき理想を愚直に追い求めることは本来当たり前なのに、それがどういうわけか実社会ではとても困難なものになってしまう、その虚しさと不条理さを開高健は描きたかったのかな邪推。
他のも読んで考えてみよう。 -
ササがいっせいに花を開いて実を結んだ。120年ぶりのことであるの翌年 ネズミが大繁殖して山の樹は丸裸になり、街にもねずみたちが餌を求めて襲いはじめる。1人の役人が危機を予測したが、右往左往する人間。パニックに陥る人間供。ネズミの大群はどこへ向かうのか。ネズミの起こすパニックと並行的に人間社会の閉鎖性や身勝手さ を描く「パニック」.幼い小学生の心を絵を通して開かせようとする「裸の王様」キャラメルを販売するためあらゆる手段を用いて争う企業に勤める人間の心理や内面を描いた「巨人と玩具」秦の始皇帝の万里の長城の意味を問う「流亡記」。なかでは、「パニック」がエネルギーを感じて良かった。2023年6月24日読了。
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パニック、非常に面白かった!
開高健の作品を最近読み始めたばかりで、先に血生臭い作品を読んでいたため、こんな作品も書くのか・・・!と驚いた。
序盤はちょっと残虐な描写もあるが、読み進めていくと作品の世界にどんどん引き込まれる。
裸の王様も同じく、読んだ後に一息ついて余韻を楽しんだ作品。
一人の少年の心に寄り添い救いたいという主人公の想いと行動は、こんな大人がいたら子供は嬉しいだろうなぁと思った。
一方、その主人公は大人だけを相手にしている時はまるで別人。そこがまたこの作品の魅力かと思う。
巨人の玩具、これは熾烈な企業競争の世界に引きづり込まれる主人公の奮闘が面白かった。
流亡記、グロい。残虐。ちょっとトラウマ。
急に開高健のアクセル全開やん、てなった。主人公の元いた街?村?の住民たちの受けた仕打ちが悲惨すぎる………。 -
2022.10.7読了
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面白かったり
つまんなかったり。
ネズミの話は興味深い。 -
主人公の冷静な視点で描かれた、個人と社会の暗部。昭和の文章で、少し読みにくい。
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「パニック」は話の内容自体は面白かったが、表現として生理的に不快感を覚えるのが目についた(遠藤周作の九官鳥のように)。
「裸の王様」「巨人と玩具」は普通の作品で引き込まれる要素はない。
「流亡記」は最初の数ページが抽象的で全く面白くなかったので読んでない。