日本三文オペラ (新潮文庫)

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著者 : 開高健
  • 新潮社 (1971年7月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128023

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日本三文オペラ (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 大阪で大学生活を送ってたころ、バックパッカーとして世界を旅してた東京の友人をジャンジャン横丁~飛田へと案内したことがある。
    四天王寺でホームレスの方からもらったた缶コーヒーを飲みながら、世界のどこより衝撃的だった、と感銘を受けていた。

    噂には聞いてたアパッチ族、で噂ではやたらめったら面白いと聞いてた開高健の「大阪三文オペラ」をようやく読む。
    ガツガツとして、生々しく、ぬらりとした表現、汗、モツ煮込み、どぶ川、の匂いがぷんぷんする。うん、これだけ嗅覚に訴える小説というのはすごい。

    「アジール」として理想化されているきらいもあるが、アパッチ族のアナーキーな労働体系は非常に興味深い。だが、それも埋蔵されている資源があってのこと、資源が不足(警察、財務局の管理の強化)により崩れる。
    そういうときに生じるのが「デマ」。この情報をめぐる戦いが非常に面白い。
    埋蔵されてそこにある鉄の塊と捉えどころのない「情報」、この二つがアパッチ族を混乱させる。

    あー、ジャンジャン横丁のホルモンうどんが食べたい。

  • 戦後の大阪に現れて工廠跡から夜な夜な金属を盗み出したアバッチ族たちの、栄枯盛衰を描いた本。とにかく猥雑で、しかしながら、生命力に満ちている。

  • 灯火が消える直前に放つ閃光、それに虚無を見るか、力を見るか。

  • 焼き肉のホルモン描写の臨場感で目の前にあるかのように錯覚した。またホルモンを食べたくなった。
    予想される戦後まもないころの大阪の描写は下町感満載だった。
    ホルモン描写と相まって今の鶴橋、京橋あたりを形成してるんやと思った。
    個人と組織の関係かな。主人公は冷静に組織を分析してると思った。
    美しくなくても、小汚くても生きなければならない。けれども生きるには爆発的なエネルギーがいる。

  • 戦後の朝鮮部落の話。みんな賢く生きてました。

  • 大阪。アジア1の生産量を誇った旧陸軍工廠は爆撃によって荒れ野と化していた。荒野には財務省も管理しきれない鉄くずの山が埋まっており、アパッチ族たちは己の力のみでベトンを崩し鉄を切り、そして運ぶ。ルンペンのフクスケは彼らと行動を共にし、その終焉までの一部始終を目にする。

    食への欲求とそれが生み出す禍々しいエネルギーの発散が痛快。七輪で牛の内臓を焼いて洗面器にはいったご飯をかっくらうところで、めちゃお腹空いてくる。

  • おもしろい。高尚な文学っぽくなく、人間の本質をゴツゴツと書いていくのが面白かった。たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれ特徴的で「そんな人いるよなぁ」という感じ。

  • アパッチ部落というものの存在をこの本を読むまで知らなかった。
    開高健の表現力には脱帽だ。
    部落の食事の描写、臭いの描写、空気の描写。
    まざまざと目に浮かび上がってくる。
    見た目には汚く、臭く、醜いものの内面からあふれる生命力の美しさ。
    過酷な状況下を生き抜く人々の肉体の美しさ。
    目をつぶると、目の前に現れくるのじゃないかというくらいの素晴らしい表現力だった。
    ホルモン料理も、マッコリも。
    部落の食卓の描写もとてもいい。

    絶望的な最後は、今の日本社会の現状の縮図かもしれない。
    それに、自分自身の状況とも重なるような気がする。
    人はなぜ働くのか。
    何のために生きるのか。
    どうして金が必要なのか。

    読んだ後、そのことを深く深く考えさせられてしまった。
    その答えはまだ出ない。

  • どろりどろりとした、何か得体の知れないものに巻き込まれて入ってみると、凄まじすぎる生命力が底なしに渦巻いていた。

    腐臭がする身体、泥、汚れた血、腐った肉。
    嫌悪すべきものへの細やかな描写が、どんどんこちらを内部へ引き込む。
    が、一度入ってしまうと、嫌悪感は清々しさへと変わる。
    今夜、明日はどうなるかと見えない中で、その場を全力でこなしていく。
    未来を考えると不安が大きくなるということの裏返しでもある、その刹那的な力の使い方。
    でも、そこからはいだそうとはしない怠惰な清々しさに魅力される。

    どう考えても自分の生活には縁がなく、恐いものみたさで近づいてみると、そこにはやはり、自分には縁のないほどの必死さ、生きる執念に出くわす。

    最底辺だと思われる人々の、野生としての人間らしさに羨ましさも感じる。
    そこには、自己責任で生きる人々の自由さがある。

    身体全体を使うことで生き尽くし、組織をまとめて出し抜くために策略を巡らす。

    組織が大きくなりすぎて、策略を巡らせても一つの方向に向かえなくなった時、彼らは不完全燃焼の命と力を持て余して崩壊する。

    命を何のために燃やすのか、
    そもそも何のためってなんなのか。
    未来ばかり考えて、目の前をおろそかにしてはいないだろうか。
    そんな思いに捉われる。

    完全燃焼、という思いがどすんと残る本。

  • 名作です
    いつか読んでください
    4.8点

  • 無人島に持っていく

  • 「生きる」ということの生々しさがビシビシ伝わってくる文章が心地良い。音や匂いや味まで感じられそうな文章。

  • 戦後大阪の軍需工場の跡地に埋まったスクラップを巡って、泥棒集団が生きるために血みどろ、汗だく、汚泥にまみれて、警官/警備員と行う攻防がホント生々しい。文章から臭いがしてくるのは初めて感じました。
    この頃の人たちの生への執着の強さ、今の日本で見られますでしょうか?

  • フクスケ と呼ばれるようになった,
    猫背で、弱りきっている。

    ジャンジャン横丁、
    ドタリ
    コソコソ
    ズシリ
    など、カタカナを多用しているのは何故だろう。

  • 大阪マラソンまでに読み切ろうと頑張りました。間に合った!
    私の知っている大阪よりも、もっともっと泥臭くて生きる渇望が漏れ出してくる、戦後のアパッチ族の部落のお話です。
    この本を読んでると、汚染されてドロドロになった排水の臭いと、臓物の焼肉の臭いと、+人間の哀愁が漂ってくる。

    作品の中に描かれている猫間川も、城東線も、今や姿を消していますが、街の歴史を追うのはとても楽しい。

    解説がまた秀逸。

  • この物語は『アパッチ族』と当時呼ばれた大阪の旧陸軍工廠に埋もれた鉄屑を掘り起こしては売っていた在日コリアンたちの興亡を描いたものです。猥雑な世界で、これを読んでいてなぜか懐かしい気持ちになりました。

    『新ナニワ金融道』のなかで帝國金融の社長。金畑がまさに少年時代、この『アパッチ』をやっている場面があって、それで今回てにとって読んでいた次第です。これと同じような作品、もっと言うとこれを実際にやっていた当事者である梁石日の「夜を賭けて」という作品を読んだのが先なんですが、それは別の機会にアップします。

    物語は飢えて町をさまよっていた作者を思わせるフクスケが韓国人の女に食堂で飯をおごってもらう代わりに『いい仕事がある』と彼女にそそのかされて連れて行かれたのが空襲で跡形もなく壊された大阪の旧陸軍工廠の地面の中に眠っている膨大な量の大砲、戦車、起重機、鉄骨などの残骸を掘り起こしては売りさばく『アパッチ』と呼ばれる人間たちがいる集落の中でした。

    そこにいる親方のキムを始めとするラバ、めっかち、トウジョウなどの自主規制という言葉を軽々と無視した個性あふれる懲りない面々たちと夜を賭けて鉄くず拾いに明け暮れるサマと、昼にトンチャンと呼ばれる臓物を焼肉にして食べている姿はギラギラとした生命力を思わせるもので、こういう様子はいまの日本にはなくなって久しいと思っていたら、今でも大阪には彼らの末裔というのかなんというのか、いまだに土地を不法占拠しては金属類を売買することで生業を行っている人たちがいるときいて、大変驚きました。

    そして、以前ここで挙げた『昭和幻景』という写真集の中にも『アパッチ部落』というところに当時を忍ばせるような、あるときから時の流れを止めてしまったような町並みがあることに今回改めて読み返してみてなんとも言いようのないものを感じました。やがて、そんなアパッチたちの活躍も、警察の執拗な取締りによって、壊滅、衰退の一途を辿っていきます。その過程の中で、作中で大活躍したアパッチがあっけなく死んだり、裏切ったり裏切られたり、また、見切りをつけてアパッチ部落から離れていく姿にはさびしさ、哀愁すら感じました。しかし、彼らの姿はプリミティヴで犯罪といえば犯罪なんですけれど、その体ひとつで生きている姿には、僕の中に忘れかけたものを思い出してくれました。

  • 過去(の読書歴)を記憶の中で振り返ってみると、今、私の食卓に影響しているのは、これではないかと思うのです。「すえた匂い」・・・新宿のガード下を「こういうのかな」と思いながら歩いていた。「新世界」(確か・・・)と呼ぶ辺りを都心に当てはめるのは違うかな、と思いながら。開高さん、こんな時代には何か描いて欲しかったな。薄汚れた感じに憧れたあの頃を振り返ると、一概に美しいとは見えないヒトの欲求に対してストレートで勝負しようとする感覚が、まだ持てる気がして来るもの。

  • 「アパッチ」と聞くと何を思い出しますか? http サーバの Apache ですか? さすがですね。でも、ここで書くのはそのアパッチではありません。もちろん、アメリカのネイティブ・インディアンのアパッチでもありません。

    第二次大戦中、大阪に砲兵工廠がありました。当時は日本最大です。ということはアジア最大の兵器工場です。大阪城のすぐ隣、今はビジネスパークになっているあたりから森ノ宮の駅あたりまでの広大な土地です。ここが終戦の前日、つまり 1945年8月14日に大空襲を受けて破壊されました。

    戦後はそのままほうっておかれたようです。B-29 が 150機で徹底的に破壊したという記録がありますから、不発弾も多くて危険だ、というのがその理由のようですが、ほかにも理由はあったのでしょう。戦後 10 年以上、誰も見向きもしなかったようです。

    で、話はここから始まります。1958年のことだと思われます。
    残骸になったとはいえアジア最大の兵器廠ですから鉄くずは山とあるわけですね。その鉄くずをねらって、食い詰めた連中が夜な夜な集まるわけです。つまり泥棒です。鉄くずとはいえ国家の財産なので警察はそれを取り締まる。そのいたちごっこ---正しくは闘争、または知恵比べ---が始まります。

    この連中は神出鬼没で逃げ足も速かったので、その剽悍なイメージからいつしかマスコミが「アパッチ族」と呼ぶようになりました。

    これを実際に現地取材して書かれたのが開高健の『日本三文オペラ』です。学生時代にこの本の存在を友人から聞いていたのですが、生憎とずっと絶版になっていたようで、読むことはありませんでした。それが、それから何年かしてから、偶然、近くのスーパーの前で開かれていた古本市でみつけました。紙の色も変わってしまっていましたが、これが面白いのなんのって。僕が読んだのは、ここで紹介したのとは別の文庫ですが。

    中身を詳しく説明する余裕はありませんが、話は新世界のジャンジャン横町から始まります。ホルモンを焼く煙と臭いが紙面から溢れてくるようで、それが堪りません。これを読むとホルモンが食べたくなります。出だしだけでなく、アパッチたちが仕事をする前に腹ごしらえをする場面がありますが、これがまたうまそうです。是非、ご一読を。でも、ホルモンの話がメインではありませんのでお間違えなく。

    僕は、いつも何かを読んでいますが(最近はそうでもないな---汗)、いつも読んだことのないものを読みたいと思うので、同じ本を繰り返し読むことはあまりないのですが、この本はもう何回読んだでしょうね。これを読むと元気が出ます。

    在日朝鮮人の作家、梁石日(ヤン・ソギル)の『夜を賭けて』は、そのアパッチ族の当事者がいわば内側からこの事件を描いたもので、映画にもなりました。両方読むことをお薦めします。

  • どうやら私は「第二次大戦後」「在日朝鮮人」「大阪」というキーワードで検索したらヒットしそうな話が好きらしい。この本読んだらホルモンすごく食べたくなる。

  • 泥や血や肉やもろもろの、ナマナマした力強さ。
    解説の「生理的ともいうべき迫真力」という表現がしっくりくる。

    古い本で「よろしくない言葉」やぼかした存在があるにもかかわらず嫌な感じがしない。
    私が部外者だから気づかない部分もあるだろうけど、それを差し引いても、著者が群じゃなくて人を見ているんだろうと思える。

    読んだ後の気分が『平成たぬき合戦ぽんぽこ』を観たときに似ている。

  • 中学一年の時に初めて読み、衝撃を受け
    ある日急に思い出して再度読み返すに至った。

    思い返せば、私が大阪という町に異様なる興味を持ったのは、
    この小説が原点だったのかもしれない。
    私の中でのいわゆる「大阪」は まさにこの小説の中の景色だった。
    だから 大阪のどんなところに行っても
    桜ノ宮の川沿い~大阪城をどきどきしながら散歩したあの日みたいな衝撃と感動は受けることができなかったのだろう
    もっとも、この本を読んでいなければ、「きれいな景色」にしか映らなかったかもしれないけれど。

    もっとよく見たいのだ。
    冷やかしではない。知りたいのだ。
    なぜなら、生臭い「生」をこんなにも感じられる場所あまりないと思うから。

  • 開高健の中でベスト。
    序盤のジャンジャン横丁の脂っこい描写がいい。

  • 鮮やかに奪い去ってきたものを抱えて,夏の粘る夜の中を汗みずくで走る。
    腹の底を笑いがくすぐるが、
    闇を抜けて安全地帯に転がり込むまではそれを押さえ込む。

    悪いことの、胸を熱くする面白さ。
    倫理を燃やし尽くす高揚感。
    夜の暗さの中でくすぶるもの。
    悪いことは、良いことより人を走らせる。

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大阪の旧陸軍工廠の広大な敷地にころがっている大砲、戦車、起重機、鉄骨などの残骸。この莫大な鉄材に目をつけた泥棒集団"アパッチ族"はさっそく緻密な作戦計画をたて、一糸乱れぬ組織力を動員、警察陣を尻目に、目ざす獲物に突進する。一見徒労なエネルギーの発散のなかに宿命的な人間存在の悲しい性を発見し、ギラギラと脂ぎった描写のなかに哀愁をただよわせた快作。

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