夏の闇 (新潮文庫)

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著者 : 開高健
  • 新潮社 (1983年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128108

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夏の闇 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 開高さんの文章は凄くて、解説でCWニコルさんが書かれていたような教養は自分には無いのですが、そんな素人でも読んでいてゾクッとするような臨場感が伝わってきます。
    「輝ける闇」では1ページ目から濃密な言葉の海に浸らせてもらったので、本著も期待して読んだのですが、人の内面的な感情をここまで文章で伝えられるのか!と驚きました。

    浅薄な見方ではありますが、自分が文章から感じたのはままならなさ。
    水を手で必死にすくってもどんどんこぼれていってしまうような、離陸滑走を始めてスピードがもう乗ってしまっている飛行機のような、焦りなのか諦めなのか何も無いのかもわからない感情が生々しく伝わってきます。
    ベトナム戦争のような鮮烈な経験をして、振り子でいうでっかい触れ幅のような出来事を経てしまい、日常の何もが大した触れ幅じゃないから、感動を生まなくなった男のままならなさ。女も別のままならなさを抱えている訳で、その消耗感や絶望感が伝わってくるようで恐ろしくなります。

    1点あるとすると、見なきゃ良かったんですが新潮文庫の裏表紙にある「あらすじ」的な文章。「ヴェトナムの戦場に回帰する」とあったので、また「輝ける闇」的なベトナムの話が読めるのかしらと思ったらそうじゃなかった。
    これはこれで面白かったのだけど、「行くのか?行くのか?」的な期待を持ってしまったのでちょっとマヌケな肩透かし感が。。

    ともあれ、思い出に残る素敵な小説です。輝ける闇に負けず劣らずの重厚感。
    当時のベルリンの高架鉄道、乗ってみたかったなぁ。。

  • 豊饒なる読書体験。これに尽きる。

    『輝ける闇』と共に、もともと有名な小説で、方々での評価も高い。
    ここにきて漸く手にする時機が来た。

    本屋でぱらぱらめくってみると、どのページにあっても濃厚な生が匂い立つ、ただならぬ世界に引き寄せられ、迷うことなく購入へ。

    一気に読み耽った。
    異国における〈男〉と〈女〉の、棲息の記録。
    五感を痺れさせるような、縦横無尽な表現の世界に、すっかり魅せられてしまった。これぞ、本物の小説だ・・・

    稀有な作家、開高健を知るには、まさに最高の出会い。

  • 初めて開高健の本を読んだ。
    最初から表現力に圧倒された。一言もフランスと書いてないのにフランスと分かる。パリと分かる。ベルリンと分かる。
    それに、身を削って書いたと感じる文章に独特の魅力がある。
    混沌の中に知性がある。物凄くリアルなのにエロくない。汚なくない。
    今までに読んだことのないタイプの文章だった。
    登場する女性のセリフも過去?も面白い。
    生きることについて、自由主義者について感じ入る作品。
    だけど、もっともっと深く理解するには再読が必要だ。

  • 「輝ける闇」の発行が、1968年4月。「夏の闇」の方は、1972年3月ということだから、約4年間の隔たりがある。二つは独立した小説であるが、主人公は同一人物として読める。
    ベトナム戦争に特派員記者として従軍した主人公は、サイゴンで、あるいは前線で戦争を実際に経験する。それは悲惨とか醜いとかというよりは、徹底的に無意味であるがゆえに絶望的なものであるもののように、僕には感じられた。主人公は日本に帰り、以降の年月を世界各地を旅しながら無為にすごす。フランスと思われる国で、ある日、主人公は日本で付き合っていたことのある女性の訪問を受け、フランスでしばらくを過ごした後、女性の住む、ドイツと思われる国に出かける。そこでも、主人公は無為に、無気力に日々を送るが、ある日、新聞記事にベトナムでベトコン側が総攻撃をかけるのではないか、という憶測記事を読み、ベトナムにもう1度出かけることを決める。二つの小説の主人公が同一人物として考えると、おおまかな粗筋はこのようになるだろう。
    開高健には「ベトナム戦記」というルポルタージュ作品があり、彼は実際に従軍記者として南側の軍隊で前線の闘いを経験し、命からがら逃げ延びるという経験をしている。二つの小説、特に「輝ける闇」は、その際の経験をベースに書かれたものであろう。「ベトナム戦記」も読んだが、小説である「輝ける闇」の方に、よりリアリティを感じるのは不思議な話ではある。開高健は、またベ平連にも参加し、アメリカの新聞の1面に日本人からのベトナム戦争に対する意見を意見広告として掲載するという企画を思い立ち、実際に実行している。
    「ベトナム戦記」「輝ける闇」で書かれているベトナム戦争は、意味がなさ過ぎて、また過酷であり、そこに住む、あるいはそれに関わる人たちの生の尊厳を無意味にしてしまうような残酷さがあり、また、一方で圧倒的すぎて、個人の力でどうこうすることを考えることを許さない印象を受けたが、それでも、戦争に対して現実的な抗議の方法を(それがどの程度効果的だったのかは別にして)考え、実行する面が開高健にはあったわけであり、「夏の闇」の方の主人公のベトナム戦争から帰ってからの無気力さとは、少なくとも行動面では一線を画している。
    さて、主人公は何故ベトナムに帰ることを決意したのだろうか。答えは小説の中には、はっきりとはない。主人公自身も、他人に説明出来るほどには分かっていないのだろうと思う。が、主人公にとっては、理由はともかくとして、それが彼にとって、生きるということであり、そうしなければ、無気力どころではないという状態に陥ってしまうということが分かっていたのだろう。それが唐突に思えないだけの背景は、二つの小説に書き込まれていると感じる。

  • <女はいつも不屈で、勤勉、精悍、好奇心にあふれるまま前進し、生を貪ることにふけっていた>

    この一文ヤラレタ。
    精悍という言葉で女性を表現できるなんて。
    願わくば精悍という言葉が似合う人に自分もなりたいと思った。
    これ読んで一週間ぐらい、<精悍>っていう言葉がぐるぐる頭まわってた。
    「若い頃は言葉ひとつで酔えた」って柳田邦男がエッセイで回顧していたけど
    こういうことだよね。自分は純粋だと思う。

    この人の文章、酔えるからやっぱりすごく好き。
    今年の小説でとりあえずトップ。

  • はー。読み終わるのに丸々一か月かかった。
    『パニック・裸の王様』が面白かったので買ったんやけど、雰囲気全然違っててびっくりした。前半はやたらともわっとした感じで官能的で、後半急にがっさーっと展開が進んだよーな印象。

    でも、この作者何となくグルメなイメージがあるんやけど、お料理の描写が素晴らしすぎる。何と美味しそうなのか。
    あと、裸の王様のときも思ったけど小さい子の描写もすごい。かわいすぎ。

  • 角田光代さんもオススメの開高氏の超傑作なのだがなぜか心に響かない。
    「最近の若いヤツらは云云此云…」と散々悪態ついてきたくせにあろうことかこのハードボイルドに心揺さぶられないのは何故なんだろう。
    闇が存在するには光が存在しなければならない!と時代のせいにしてしまうのもありなのかもしれないが事の本質はきっとそこではないのは誰あろう自分が一番わかっている。そう、その答えは自身の「老い」なのだ。
    ああなりたいこうなりたいの男の浪漫はああもこうもなれなかった我が身には時すでに遅し、唯一言える事は若き日に触れておきたかった言うことのみか。
    男を背負って生きていくのは楽じゃない、昔も今もね…

  •  
    ── 開高 健《夏の闇 197203‥ 新潮社 198305‥ 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101128103
     
    (20150914)
     

  • 何故、評価されるのか分からない

  • 作品としては、出だしから官能シーンがメインを張っていて、そのトーンは最後まで続きます。そういうところを乗り越えると、面白みがわかってくるような感覚がある。気恥ずかしいと飲み込めないものがそこにはあるということです。ここはひとつ、オトナになって読んでみるのが手でしょう。中盤から後半のパイク釣りあたりだとか、食べ物に関するところだとか、著者の得意な分野が出てくるところにはあふれでる生命力を感じました。それ以外のところは腐臭を放っているような、快楽の奴隷になっているようなふうなので、きっとああいうのばかりが続くと、なにも今日まで残る作品にはならなかったかもしれない。そして、最後まできちんと書かないで結末を迎えたことを含めてこそ、この小説の語る何かはあるんだという感想を持ちました。男が、まるで愚図って生きるとはどのくらいのことなのか。そして、男女の関係があり、その関係にどれだけの重さを感じているかの男女差があり、捉え方の差もある。そんな中、男は何に、文字通りの活路を見出すものなのか。それは男一般に言えることではないけれど、ある種の男には通じることなのだろう。ぼくなんかでも、わからないこともなかったです。

  • ヴェトナム戦争で信ずべき自己を見失った主人公は、ただひたすら眠り、貪欲に食い、繰返し性に溺れる嫌悪の日々をおくる……が、ある朝、女と別れ、ヴェトナムの戦場に回帰する。“徒労、倦怠、焦躁と殺戮"という暗く抜け道のない現代にあって、精神的混迷に灯を探し求め、絶望の淵にあえぐ現代人の《魂の地獄と救済》を描き、著者自らが第二の処女作とする純文学長編。

  • 凄惨なベトナム戦争の描写と甘ったるい女との生活が交互に書かれる

  • 開高健さん。初めて読みました。
    結構、揺さぶられます。
    子供の頃見たウィスキーのCMと、親父が持ってたプレイボーイを盗み見た印象が強くて(そうだ、うちの親父、月刊プレイボーイを定期購読してたフシがある!すげぇな!)、酒と釣り好きのおじさんって印象だけだったんだけど、こんな人だったんだ。
    新たな発見です。こんな発見があるから、読書は楽しいっす。

  • 闇三部作二作目。ベトナム戦争従軍記者から逃れたフランスの地で穴倉に佇む主人公と、ドイツで学位を取ろうとしている昔の女が再会し、フランス、ドイツと旅して再び主人公がベトナムへと戻るまでの一夏の物語。と言ったストーリーはどうでもいいぐらい、美食、好色、釣りの話、男と女の心の闇、自我の存立が圧倒的な文章で綴られていました。輝ける闇よりは読みやすいのだが、やはり疲れた。

  • 絡みついてくる感じで重たかった。
    共感できる部分が少なかったからかもしれない。
    少し前の小説だから今自分が読んで共感できるような普遍性は無い/少ないということなのかもしれない。
    輝ける闇とは違う。
    言葉の勉強にはなった。

  • 睡眠嗜好症の主人公の「眠る」描写にこっちまで眠気を誘われました。10年ぶりに異国で再会した男女が最初は新鮮だったもののどんどん冷静になってきて、男性のそういう冷静さが怖いなと思いながら読みました。男性の前で裸になって、でも恥ずかしいから手で顔を隠して「私、まだ見られる?」という女性の言葉にはリアリティを感じますね。素直に可愛いと思いました。

  • 無気力に甘んじて日々を過ごす主人公の男の書き方がすごいです。
    この男と、精力的に生きている自分であろうとする女、たぶん人間は一人で両方とも持ち合わせていて、多くの人はその間のどこかでバランスを取りながら生きているのではないかと思います。

  • まだベトナム戦争がまっただ中だった1972年に出された本。

    日本人の男が旅の途中ある国で、10年ぶりに日本女性と再会。どちらも壊れやすい危うさを抱えながら、二人は女の住むドイツに移り、落ち着いた暮らしの試みが始まります。

    貧しく身寄りがない暮らしから日本を捨て、異国で博士号をとろうとするところまで昇ってきた女。
    何かを見失い、あてのない旅の途中の男。
    心に時代を映した男と、自分の一生を見つめる女です。

    豊かな言葉で描写されながら、余分なディテールは省かれて、男と女が揺れながら心の置き場を探る暮らしが語られています。
    読み応え充分、骨のある小説です。

  • 圧倒的な筆致と、語彙、表現だった。
    崩壊していく自我をつなぎとめるかのように、食欲、睡欲、性欲に貪る主人公と、それを見守る女。
    女もまた、闇を抱えている。

    内面をえぐる表現は、その深淵にこちらが引きずり込まれるような感覚さえ覚えた。

    順番が逆かもしれないが、『輝ける闇』を読んでいないので、これを読み、また時間を経てこの作品を読みたいと思う。

  • なかなか読み終わらなかった。輝ける闇にくらべると話に動きがなくて、話に広がりに乏しい?何をしても満たされず、ベトナムでの衝撃的な体験を懐古する。要再読

  • 同じ著者の「輝ける闇」は戦時中のベトナムで取材をしている作家が主人公が大規模戦闘に巻き込まれるまでのストーリーだったが、本作では戦闘に巻き込まれて生き残った男のその後の話。(どちらも著者の実体験をもとに描かれているので、話が続いているのかと一瞬思ったが、同じ主人公というわけではなさそう)
    かつて一度は別れた女とよりを戻し、彼女と二人きりで日々を怠惰に、無気力に過ごしながら、自己嫌悪と不安に突き崩されて、いまにもばらばらに崩れて毀れてしまいそうになっている主人公。それでもどうにか彼の心の傷を埋めようと、女は必死になるのだが……
    文体が形容詞的というか、比喩と叙情に埋め尽くされるようにしているのだけれど、その中に浮かび上がってくるものの重さと生々しさといったらなかった。生々しいといえば、性描写がけっこうアレなので、苦手な方は注意。

  • からっぽの闇。

    生ぬるくて、どろどろしていて、じめじめした生の匂いが絡みついてくる感触。
    底なしの暗闇の中で丸くなって漂うだけの男には、自ら道を切り開いてたくましく生きようとする女と共に生きる術はなかったのだな、と思う。
    著者はベトナム戦争へ従軍していたと聞いていたが、だからこそこれだけの強烈な、ある種の生への執着のようなものを感じられる物語が生み出されたのだろうなと思った。

  • 何かあればお下品な言葉。回りくどい文章。
    男は、寝るか食うかセックスするかのどれか。
    最初は、どこの国なのか、どういう状況なのかさっぱり分からず、途中からやっと理解できた。
    そこまで面白くも感じなかったので★2つ。

  • (1990.12.06読了)(拝借)
    (「BOOK」データベースより)
    誰も殺せず、誰も救えず、徒労と焦燥の間を漂うしかなかったヴェトナムでの戦場体験を経て、暗く、抜け道のない「現代」によどむ懈怠と嫌悪の淵に沈潜し、ひたすら女との甘い生活にふけろうとする男。男は「私」であり、作家は自分自身に挑みかかる決意だった。40歳のにがい記念として…。

    ☆開高健さんの本(既読)
    「輝ける闇」開高健著、新潮文庫、1982.10.25
    「もっと広く!(上)」開高健著、文春文庫、1983.12.25
    「もっと広く!(下)」開高健著、文春文庫、1983.12.25
    「破れた繭」開高健著、新潮文庫、1989.12.20
    「夜と陽炎」開高健著、新潮文庫、1989.12.20
    「知的な痴的な教養講座」開高健著、集英社、1990.03.10
    「シブイ」開高健著、TBSブリタニカ、1990.05.08
    「ベトナム戦記」開高健著、朝日文庫、1990.10.20

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