夏の闇 (新潮文庫)

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感想 : 80
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128108

感想・レビュー・書評

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  • 難しい。
    正直途中から文字を追うしか出来なくなりました。
    自分にとって大切なものと人にとって大切なものは違います。
    同じものを大切にできる人に出会いたいです。

  • はー。読み終わるのに丸々一か月かかった。
    『パニック・裸の王様』が面白かったので買ったんやけど、雰囲気全然違っててびっくりした。前半はやたらともわっとした感じで官能的で、後半急にがっさーっと展開が進んだよーな印象。

    でも、この作者何となくグルメなイメージがあるんやけど、お料理の描写が素晴らしすぎる。何と美味しそうなのか。
    あと、裸の王様のときも思ったけど小さい子の描写もすごい。かわいすぎ。

  • 角田光代さんもオススメの開高氏の超傑作なのだがなぜか心に響かない。
    「最近の若いヤツらは云云此云…」と散々悪態ついてきたくせにあろうことかこのハードボイルドに心揺さぶられないのは何故なんだろう。
    闇が存在するには光が存在しなければならない!と時代のせいにしてしまうのもありなのかもしれないが事の本質はきっとそこではないのは誰あろう自分が一番わかっている。そう、その答えは自身の「老い」なのだ。
    ああなりたいこうなりたいの男の浪漫はああもこうもなれなかった我が身には時すでに遅し、唯一言える事は若き日に触れておきたかった言うことのみか。
    男を背負って生きていくのは楽じゃない、昔も今もね…

  • 何故、評価されるのか分からない

  • 作品としては、出だしから官能シーンがメインを張っていて、そのトーンは最後まで続きます。そういうところを乗り越えると、面白みがわかってくるような感覚がある。気恥ずかしいと飲み込めないものがそこにはあるということです。ここはひとつ、オトナになって読んでみるのが手でしょう。中盤から後半のパイク釣りあたりだとか、食べ物に関するところだとか、著者の得意な分野が出てくるところにはあふれでる生命力を感じました。それ以外のところは腐臭を放っているような、快楽の奴隷になっているようなふうなので、きっとああいうのばかりが続くと、なにも今日まで残る作品にはならなかったかもしれない。そして、最後まできちんと書かないで結末を迎えたことを含めてこそ、この小説の語る何かはあるんだという感想を持ちました。男が、まるで愚図って生きるとはどのくらいのことなのか。そして、男女の関係があり、その関係にどれだけの重さを感じているかの男女差があり、捉え方の差もある。そんな中、男は何に、文字通りの活路を見出すものなのか。それは男一般に言えることではないけれど、ある種の男には通じることなのだろう。ぼくなんかでも、わからないこともなかったです。

  • ヴェトナム戦争で信ずべき自己を見失った主人公は、ただひたすら眠り、貪欲に食い、繰返し性に溺れる嫌悪の日々をおくる……が、ある朝、女と別れ、ヴェトナムの戦場に回帰する。“徒労、倦怠、焦躁と殺戮"という暗く抜け道のない現代にあって、精神的混迷に灯を探し求め、絶望の淵にあえぐ現代人の《魂の地獄と救済》を描き、著者自らが第二の処女作とする純文学長編。

  • 闇三部作二作目。ベトナム戦争従軍記者から逃れたフランスの地で穴倉に佇む主人公と、ドイツで学位を取ろうとしている昔の女が再会し、フランス、ドイツと旅して再び主人公がベトナムへと戻るまでの一夏の物語。と言ったストーリーはどうでもいいぐらい、美食、好色、釣りの話、男と女の心の闇、自我の存立が圧倒的な文章で綴られていました。輝ける闇よりは読みやすいのだが、やはり疲れた。

  • 私は角田光代が好きで、その角田光代がよく熱く語っているのが開高健なので、いつか読みたいと思っていた。でも体力が必要そうだし難しそうだし…と延ばし延ばしになっていて、やっと。
    ダメな私はネットで開高についていろいろと検索し「夏の闇」のモデルと言われている女性の不幸な死を前もって知っており、さらに読みやすそうな細川布久子の「わたしの開高健」を先に読んでしまったため、とにかく「夏の闇」も読みながらこの女性の人生について考えてしまい悲しくてたまらなかった。この当時のドイツでひとりで生きていくことがどれほど大変だったことだろう(もちろん日本でも、だが)。そして家族のいない孤独な彼女が自分から離れていくとわかっている主人公とどんな気持ちで夏を過ごしていたのだろう。前半と後半はもうとにかく暗いが、中盤の湖に釣りに出かけて過ごした濃密なふたりの時間には束の間の幸せが宿っていたように思う。行ったことはないけれど、夏のドイツの美しい情景が浮かんでくるようでまるで映画の名場面。
    あの女性がこの本のモデルというのが事実だとすれば、ドイツで主人公に去られたのち東京で束の間の再会、そして直後の事故死。言葉がない。開高はこの闇を抱えてその後19年生きたのだな。

  • 輝ける闇に続いて読んだ。前作と作品の世界観は共通しているがあくまでも別々の作品という認識で良いのだろう。それにしてもやはり作者の作家としての才能をこれでもかと見せつけられる思いである。素晴らしく豊かで鋭い感性から紡ぎ出される言葉の数々にその国の天候まで感ぜられるような気がする。そして一見その私小説的な内容が余りにも微に入り細を穿つ表現なので実際に作者はこういう生活を送っているのでは?と疑ってしまうがすべて作家の想像力で作り出した世界である。余りにも肉薄し過ぎた写実主義は写真と見た目が変わらないように現実視してしまうものだ。まぎれもない芸術家の仕事と思う。特にそれが顕著なのは「輝ける闇」でもそうであったように性交のシーンと薬物を使用した後の恍惚の感覚を描くシーンだ。この二つはおそらく作家としても冥利に尽きるというか一番の腕の見せ所でもあるから気合も入れて書いたのだろうけど、何度ももほんまにやってんちゃうかと疑ってしまう(正直まだちょっと疑ってる)この表現はやったことがないけれど分かる気がするという不思議な感覚と善悪の境界線が曖昧になる感覚を読者に受けさせる。それもすべては作家の文章力のなせる技であろう。以下引用するのは恋人と釣りに行ったときの青カンみたいになったちょいエロシーン。「女は草に跪くと、そっと私のズボンに指をふれて、ファスナーをさげ、たったいままで眠りこけていたのに、ふと細い指でふれられたばかりに見る見る昂揚してしまったものを、眼を閉じて一度口いっぱいに頬ばってから音たててはなし、クローバーの花輪をひっかける。女は体を折って哄笑し、軽く拍手して、あたりを跳ねてまわった。」恥ずかしいけどちょっとM心をくすぐられる名文だ。

  • オーパに続いて読んでみた。
    あまり開高健さんのことは知らなかったが、釣りやドキュメンタリーが中心かと思っていたが、代表的な作品とのこで手を伸ばしてみたら全く想像を裏切られた作品だった。
    まとわりつくような、様々な表現方法で食、性、生命を表していて、こちらも集中して読まないとついていけない程、濃い文章であった。
    輝ける闇も続いて読んでみたい。

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著者プロフィール

開高 健(かいこう・たけし):1930年大阪に生まれる。大阪市立大を卒業後、洋酒会社宣伝部で時代の動向を的確にとらえた数々のコピーをつくる。かたわら創作を始め、「パニック」で注目を浴び、「裸の王様」で芥川賞受賞。ほかに「日本三文オペラ」「ロビンソンの末裔」など。ベトナムの戦場や、中国、東欧を精力的にルポ、行動する作家として知られた。1989年逝去。

「2024年 『新しい天体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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