海辺の光景 (新潮文庫)

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著者 : 安岡章太郎
  • 新潮社 (2000年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101130019

海辺の光景 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 7篇からなる短編集ながら「海辺の光景」が半分。

    精神に異常をきたして入院していた母の危篤の知らせを受け、信太郎は父とともに病院にかけつけます。
    病院での9日間と母や父の追想とがクールに濃密に描かれています。

    粗末な待遇で空ろに横たわる母の姿、
    事務的な病院のスタッフや医師の態度、
    うしろめたさを伴う信太郎の見舞い、
    生活力のない父への信太郎の視線・・・・・・、
    濃くて重い9日間です。

    復員した従軍獣医の父の、無意味で身勝手な思いつき的行動の数々は、暮らしを支えるどころか、足をひっぱるばかり。母のいらだちと困窮が募ります。

    危篤でただ横たわるだけの母親の姿は、そのの描写と母を看る信太郎の心模様を通じて異様な存在感を示します。

    読んでいる最中、やたらと心と肌がざわつくような不快感がまとわりつくのに、引き込まれてしまいます。

    ほこり臭い時代ながら今でも私の本能を刺激します。

  • しんどい、つらい作品。戦後の復興期は復員・引き上げしてきた人のパワフルさばかりが喧伝されるが、このように困窮したうえに衰弱していったひとも沢山いたんだろうなと思いました。

    救いようがないような話なのですが、著者独特のそこはかとないユーモアがあり、若干救われる思いがします。

    お父さんは戦時中は軍の獣医であり、戦後も獣医をすれば食いっぱぐれはなさそうな職だと思うのですが、どうしてこうなってしまったのかはちょっと不思議です。

  • 標題作しか読まず。

  • 表題作の「海辺の光景」だけ読んだがどうにも退屈な小説だった。
    この作者の他の作品はもう読まなくていいだろう。

  • なんとも重苦しい雰囲気に覆われていた。読み進めるのが辛くなるような内容で、切実さは痛いほど伝わってきた。

  • 芥川賞作家・安岡の名作。戦後の混乱期を背景に精神病院に入院した母を父と共に見舞い、死に至るまでの看病と、一家の窮乏を回顧録として語る。虚無との無感動な対面はあのカミュの異邦人を思い出させる。戦後の社会情勢を思うに付け、このようなことが、現実性があったのだろうと思います。やや暗すぎて、あまり好きにはなれませんでした。

  • 現実からするりと逃げ出して、夢をみて、でも現実に追いつかれてしまう。「質屋の女房」に収められた作品はそんな風だった。だけど、ここではもう夢すらなくて、狂気がいっぱいで、ひとりでどんどん追い詰められていくかんじだった。こわくてきもちわるくてしんどかった。家族も学校も、わたしたちの社会における宿命的な存在で、そこでの排除される感覚とかってもう、狂うほかないものなのかもしれない。学校で感じる劣等感とか、時代の閉塞感とか、いろんなものがどんどんもっと恐ろしいものに変化していった、のかなあ、わかんない。安岡章太郎には個人的にシンパシーを感じるタイプの作家さんだからこそ、これを読んだらかなしくなったしこわくなった。

  • 3/24読了

  • 表題作は主人公の置かれた環境が自分のそれと似ていたので、共感しながら読み進める。

    故郷を捨て、都会に生活の根を張る人間が母を看取る為に地元へ戻るという陰のあるストーリー。

    ただ、作品自体はどちらかといえばサイコスリラーの要素もあり、若い時に夫を憎しみ続ける母の姿や、気が触れてしまった後の彼女の描写はもはや下手なホラーより恐ろしい。

    母親が亡くなるまで淡々と語られる彼女との思い出、周囲の人間達の表現/描写を読んでいると、みじかな存在が世の中から無くなる際に生まれる一種の無感覚を感じる。

    死という超現実に対し、自分を守る為に感覚/感情のスイッチをOFFにする、そんな感じが文章の端々に感じたような。

    安岡章太郎という人は亡くなるまで特に意識したことが無かったけど、死をきっかけに出会う本というのもあるんだなと感慨に浸る。

  • 表題作「海辺の光景」は、ラストよりむしろ中盤にある褥瘡のシーンの終わり方の方が、はるかに衝撃的かつ秀逸。

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