質屋の女房 (新潮文庫)

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著者 : 安岡章太郎
  • 新潮社 (1966年7月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101130026

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質屋の女房 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 追悼・安岡章太郎、ということで、今年亡くなられた「第三の新人」安岡章太郎の短編集を。1953年芥川賞受賞作もおさめられています。もうどれも、ほんとうにおもしろかった。戦後日本はこうであったのだな、という昭和感はもちろんあるのですが、今をもってしてもまったく古びていない。弱くて、ぐうたらで、どうしようもない個人の姿を描き、現実からいかに逃げ得るかを追求する。いつも追いつかれてしまうんですが、この短編集はそれでも悲壮感があまりないように思える。いや、最後は本当に恐ろしいんだけど、それでも基本的にユーモアでくるまれていて、追いつかれても追いつかれてもするりと逃げ出そうとするのだろうなあといった自由な空気が確かにある。「海辺の光景」もぜひ読みたい。戦後日本はこういう文学を生んでいたんだなあ、こういうひとがいてくれたんだなあ。ご冥福をお祈りします。

  • 戦前学生特有の(徴兵制度に起因する、それに逆らう自由)行動・心情から戦後の家族まで、私小説らしい佳作な短編が揃っている。
    特に「ガラスの靴」「悪い仲間」が良かった。文章も読みやすい。他の作品も読んでみたい。

  • 学生時代(出征前)を描いた作品が一番多く、終戦直後がひとつ、戦後10年以上経った時代を舞台にしたものが2つ。芥川賞受賞作を含む。
    発表された時期はバラバラ。安岡章太郎の代表作を集めたと言っていいだろう。
    「ガラスの靴」は恋愛(それも未熟な恋愛)小説の傑作。若さと才能だけではなく、あの時代に生きていたからこそ書けた。今の上手い作家が同じ時代を舞台にしたところで、これは絶対に書けない。「待つことが、僕の仕事だった。」忘れられない。
    代表作だけあって、どれも良かったし、戦争中に浪人していた、母に愛された取り柄のない一人っ子の気分というのは、彼だからこそ書けたと思うが、自分が中年となり、かつては不在ながらも存在感と威圧感のあった父が老いた姿を描いた最後の2作も素晴らしい。
    もっと読みたい、安岡章太郎。

  • 短編集。
    ただ流されていくようでありながら、そこまで悲惨な境遇には陥っていない青年の話ばかり。
    でも十分に悲惨で、破滅的だけど、一方でなんとなくおかしみも感じられる。
    時代も風俗も十分感じられるけど、どれも今の時代に読んでも面白く、文学とはこういう言葉の力をもつのだなぁ、と関心するものばかり。

  • 短編集

    個人的には表題作の『質屋の女房』よりも、
    『悪い仲間』や『陰気な愉しみ』の方が好きで、
    社会に劣等感を抱きつつ中々前に進めない登場人物たちに非常に好感が持てます。

    『ガラスの靴』も読後感の素晴らしい作品です。

    短編で読みやすい作品ばかりですので、是非手に取ってほしいです。

  • 青春期はある意味、モラトリアムであるとおもいます。
    産みの苦しみを経て青年は次のステージへと進んでいくのが一般的な成長だと思うのです。

    しかし、ここでの主人公はモラトリアムとも言えない、本当に無駄な時間、糞みたいな時間を過ごしています。
    「誇り」も「覚悟」も無いから、女も抱けず、軍人にもならず、学生にもなれず、母親からも独立できずにいます。

    こんなクソ野郎が主人公のくせに、苦悩感が薄くさらりと仕上がっています。
    でも、それでも苦悩感が残っているんです。

    そんなバランスがとても心地よかったです。

  • 学校にもいかず何となく悪い方へと落ちこぼれてでも、最下層まではいけない中途半端な感じのひとが主人公。ガラスの靴は、狩猟店で夜のアルバイトをしている僕と、進駐軍のメイドの女の子が知り合って、進駐軍の主人が留守の間に食料を全部食べ尽くして、楽しく二人でふざけあってるところが好きだった。

  • ■ガラスの靴
     バイトをさぼって配達先のメイドとよろしくやっちゃう話。「魅力のとぼしい」女に惹かれるっていうのがこの作品に共通して不思議なところ。

    ■陰気な愉しみ
     戦争で働けない身体になってしまい、現代で言うナマポ的なものを受け取ることで劣等感を感じる(と、同時にそれを愉しみにもしている)主人公のお話。自分と境遇は違うが、その気持ちは不思議と分かる気がする。

    ■悪い仲間
     伊坂幸太郎が書く型破りな友人キャラに近いものを感じるけど、みんなそれぞれに背伸びしてるところが面白い。

    ■夢みる女
     この本の中で異彩を放つ童話的な話。なんか怖い。

    ■肥った女
     やっぱりここでも外見的には醜い感じの女性に引かれる主人公。お母さんもぼっちゃり系女子(笑)だったようだし、何か母性でも感じちゃうのかしら。このあたりからグダグダ浪人生の話が続く。

    ■青葉しげれる
     落第してもあっけらかんとしてる。どことなく憎めないやつら。

    ■相も変らず
     ほんと相も変らずグダグダしてんなー(笑)
     医学部に入ったのに文学部に通うなんてもったいねえよ!! と思ってしまうのだった。

    ■質屋の女房
     おっ……おセンベツ!! 質屋の女房の色気がすごい。
     女房もちょっと恋心抱いてたんじゃないかしらなんて思う。

    ■家族団欒図
     ここから2作は戦争が終わって、高知県(K県となっている)のオヤジ登場。ちっとも枯れ切ってない(笑)オヤジもなかなかダメなやつだった。
     結末はなかなかハッピーな感じ……かと思いきや。

    ■軍歌
     ついに主人公が大爆発する(いや、短編なので別に同じ主人公とは一言も書かれていないのだけど、作者の私小説風の作品なので)。この大爆発を、学生のころの作者はずっと避けていたような感じがする。そのくせ、親に黙って遊び歩いたり、遊郭に行ってみたり、文科に行ってみたりするんだな。


     比喩表現のセンスに脱帽。たとえツッコミ芸人もびっくりだぜ。

  • 『ガラスの靴』の前半は、いつ読んでも斬新。

    『質屋の女房』は時を経て読んでみると
    淫靡さが薄れていた……

  • 10の短編集。しっかりとした文章が印象的。「陰気な愉しみ」は「檸檬」を彷彿とさせる。他の作品では総じて、母、父との関係、家族であるがゆえの空虚感や重圧感が、苛々と覆ってくる。12.6.20

  • 母親への義務感と自己嫌悪に苛まれる、童貞の苦悩の結晶みたいな短編集。陰気さと笑いと愛憎のどっちつかずなバランスがおもしろい。処女作「ガラスの靴」の別次元の世界観は、いまなお新鮮で抜群にクール。

  • 初挑戦の純文学物でした。
    読み易く、理解もできました。
    短編集なので、主人公は異なり、1編1編は面白いのですが、似たような心情が繰り返されていたので、1冊読み終わる頃には、ちょっと食傷気味な感じになりました。

  • なんか、純文学!て感じでした。おもしろかったです。

  • 男になるための通過儀礼には二種類あって
    ひとつは女、もうひとつは戦争なんだけど
    結局、敗戦でなにもかもご破算になってしまったわけで
    結局、最後に残された、ギリギリ人間であるための手段は
    「裏切り」にあったように思う
    母を裏切り、友を裏切り、自分を裏切ることで
    かれはこのどうしようもない戦後日本と自分を
    やっと相対化することができるんだ

    でもそれはやっぱり倒錯でしかないよなあ、とも思った

  •  悪い奴じゃない、でも、良い人にもなれなかった…。安岡章太郎の小説っていうのは、そういうどっちつかずの人間の悩みが描かれている。さて、そういう半端な人間の王様といえば、やっぱり童貞だ。ここに収録された主人公達も実は皆童貞だ。ものすごく童貞について悩んでる。この本は「童貞傑作選」と呼んでも過言ではない。
    <br>
     それはさておき、中でも安岡は「家族」のうまくいかない感じにわりとこだわっている。この問題、古く見えるかもしれないけれど、全然古くないと思う。と言うのは、確かに父権性とか家族主義っていうのは、昔に較べたらゆるくなってきた。だけど心のどこかで「でもやっぱりおれ家族の中で育ったんだよ」っていう気持ちが、まだどこかに残っている。安岡はそれから逃げれなかった。古くさい家族主義から逃れられずにいる苦しみ。たとえば母親を嫌いつつも、母から離れられない。二人は父を共に嫌うことで、蔭で手を組んでいる…。安岡はやっぱり、微妙な関係を描くのがうまいのだ。
    <br>
    (ただし私小説作家共通の欠点か、たいしたことないのをウジウジ悩みすぎる、という傾向はやはりあるかもしれない。そういうのが苦手な人は、読むのが辛いか)(けー)

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