幽霊―或る幼年と青春の物語 (新潮文庫)

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著者 : 北杜夫
  • 新潮社 (1965年10月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101131023

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幽霊―或る幼年と青春の物語 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 帚木蓬生のように、セピア色の印象が漂う追憶劇。

  • 幼い頃のことを、幼い心が感じた通りに、しかし独特の美しい文章で綴った小説かな、と思いつつ読んで、自分の幼い頃も記憶の蓋が開いたように思い出され、いい小説だな、好きだなと読み進めるうち、思い付くままどころか、かなり巧緻に構成された完成度の高い小説だということが分かり、圧倒された。
    トーマス⚫マンを読み返したくなった。

  • 美しい文体で綴られた、内省的文学作品なのだろうが…。

    時間がたっぷりあって、ゆっくり読むには悪くないと思うが、読書以外にもやらなきゃならない事が沢山あって忙しい時は、それらの時間を削ってまで読みたいとは思えず…。

  • 透き通る美しさの際立つ文章!

  • 再読。人はなぜ追憶を語るのだろうか。冒頭の一文から心が奮える。忘れられた幼年期の記憶がアルプス連峰の自然のざわめきと荘厳な沈黙の元に、ふと耳にする牧神の午後の旋律のなかに幽かに静かに甦る。耳を澄まして、肌に感じて、とぎ澄まされた精神の源に神話となって還元される。名著。

  • 冒頭の書き出しがすごく良かった。
    好きな小説のひとつになった。

  • (2002.12.28読了)(2002.03.17購入)
    或る幼年と青春の物語
    内容紹介 amazon
    大自然との交感の中に、激しくよみがえる幼時の記憶、母への慕情、少女への思慕――青年期のみずみずしい心情を綴った処女長編。

  • 3日で読了。神話や昆虫の下りは若干読みにくい。
    文章が情景的で美しい。幼き時の記憶は情景として朧げに浮かぶのだろう。

  • “ぼく”というある人間の心の中にある神話を語る、追憶の物語。彼の語る言葉は彼自身のものであって、決して読み手のものにはならない。繰り広げられるイメージも漂う匂いも手触りも、彼がありったけの言葉を以て伝えようとしているもの全て、似通っている所はあるとしても決して読み手の中の神話とは重なり得ない。けれど人が自分の記憶の奥底に沈む“何か”を追い求めようとするその衝動自体は、きっと誰しもが見覚えのある感情であるはずだ。大抵の人はその衝動を形として認識することはないし、その”何か”にたどり着く前に忘れ去ってしまう。しかし”ぼく”は手を緩めることなくその何かを追い求めついには手にするに至る。その全過程が、ここには執拗なまでに詳細に言語化されて刻まれている。
    人の心を過去の記憶へと突き動かす感情の形を初めて知ったと思えた。この世のものは、名前を見つけて初めて人の眼前に立ち現れる。
    個人の心の中の神話、それは決して過ぎ去った幸福の絵図などではない。それはただなぜか、その陰影のひとつひとつ、手触り、温度のようなもの全てをそのままどこかに刻印しておかなければと苦しい程に思い詰めずにはいられない、そういう言いようもない“何か”だ。人がその姿を捉えようともがく時、名前を付けることは出来ずとも、せめてその輪郭を何かに焼き付けようとして生まれる物語がこの世には多くある。そういうものを書く人、求める人の無意識の意識の流れを、この物語を通して初めて知ることができたと思えた。

  • 葉を一心に齧っていた蚕がふと首をもたげる

  • センター1990本試

  • 以下引用。

     人はなぜ追憶を語るのだろうか。
     どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、やがて時間の深みのなかに姿を失うように見える。――だが、あのおぼろな昔に人の心にしのびこみ、そっと爪跡を残していった事柄を、人は知らず知らず、くる年もくる年も反芻しつづけているものらしい。おすした所作は死ぬまでいつまでも続いてゆくことだろう。それにしても、人はそんな反芻を無意識につづけながら、なぜかふっと目ざめるときがある。わけもなく桑の葉に穴をあけている蚕が、自分の咀嚼するかすかな音に気づいて、不安げに首をもたげてみるようなものだ。そんなとき、蚕はどんな気持がするのだろうか。(冒頭)

     人は幼年期を、ごく単純なあどけない世界と考えがちだが、それは我々が逃れられぬ忘却という作用のためにほかならない。しかし、忘れるということの意味を、人は本当に考えてみたことがあるだろうか。なにか意味があって、人はそれらの心情を忘れさるのではなかろうか。(p.16)

     人がはじめて突きぬけた孤独を覚え、自分自身に尋ねようとする時期にぼくは達していた。無限にひろがる〈自然〉にとりかこまれながら、陳腐な、だが永久にけっして尽きることのない問を自分に課した。このぼくは一体どこから生まれてきたのだろう?(p.48)

     そのうちに、すぐと姉が死んだ。姉が並はずれて可愛らしい子であったことを、ぼくはもう書いたであろうか。  たとえば、生きるために生まれてくるのではなく、むしろ死ぬためにのみ生まれてくる人もいるように思われる。しかもそういう〈死〉に選ばれた人にかぎって、ことさらやさしく、ことさら繊細に造られているもののようだ。さながら〈死〉が〈生〉に対して自らの優位を示そうとするかのように。(p.53)

  • 遠い昔に読んだはずなんだけれど。

  • 企画コーナー「追悼- Steve Jobs・北杜夫」(2Fカウンター前)にて展示中です。どうぞご覧下さい。
    展示期間中の貸出利用は本学在学生および教職員に限られます。【展示期間:2011/11/1-12/22まで】

    湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1519482

  • まるで深い森のような緑色が、目に浮かんでくるような。

  • 静かで、きらきらして、いつまでも読んでいたい本だった。

  • 北杜夫さんも全集を、しかもうっかり愛蔵版を買ってしまったくらい好きです。

    なにか一冊ならどれを選ぶでしょう。

    「航海記」?
    「楡家」?
    「少年」?

    いろいろ考えた結果、これだろうと。
    身につまされるというかボクにとって追体験しやすい内容だったから。

  • 辻邦生が、その柔らかい瑞々しい文体、文章に嫉妬した様に、やはり静かなその世界は彼(北杜夫)の最高傑作かもしれない。

  • 『楡家の人々』を一度挫折するも北杜夫に再挑戦して功を奏した一冊。

    綺麗な文法と透明感のある文章に、時間はかかるも噛み締め噛み締め読む読むしました。大満足。

    ライトで読みやすい本もよいですけど、ちょっとずつでもいいから味わいつつ読む小説も良い経験になるですよ。
    少年の話なのにメロウってのが素晴らしい。これで100円!北杜夫鉄板。

    後日、中央公論社S45年初版を斎藤茂吉と併せて買いました。

  • 9月、図書館。

    幻想としての死の美しさとか
    暗闇の中でそっと息をひそめる若い魂の揺らぎとか震えとか
    自然に対する息苦しいくらいの情熱と恍惚とか

    1ページ1ページの観念の波に溺れそうになる…

    没入して読んで、
    自分の輪郭さえ曖昧になった。融けてしまう。
    物語のほうから自分のほうに手が伸ばされて、
    頬を包まれたり首すじの血管をそっと押されたりするような感覚。

  • 【本書より】「ママがそう言ったわ。気の毒な人にだけ、幽霊が住み込んじゃうんだって。あなたは気の毒な人だって」
      彼女はまた笑った。まるで誰かに喉かなんぞをくすぐられたときのように笑ってみせた。
      「僕も幽霊を見るよ」
      「そう?」
      少女はまじまじと、つぶらな、まだすこし虹彩のあおみがかった目を瞠いて、こちらを見上げた。どことなく、気の毒そうに。

  • 無駄な文章が一つもない
    <br>こういうのが書けたら幸せだろうなと
    <br>とても面白いです

  • 美しい文体で、美しいモチーフを用いて、記憶をめぐる物語を描き出す。紡ぎ出された物語もまた美しいのは必然とも言える。
    昭和初期、幼い少年の記憶で幕を開け、敗戦前後の高校生の追憶を中心にこの物語は語られる。
    非個性的な彼の感覚を通して淡々と描かれる現実と非現実の世界は幻想的でもある。

    他人の心を理解することが不可能である以上、「難解である」という感想はとても生まれやすい小説だと思います。山場もありません。それでも、その世界の美しさに、心を動かされます。きれいな文章です。
    耽美よりの方、和風好きでかつ洋物に心惹かれるという方なんかにおすすめです。(H19.04.30)

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幽霊―或る幼年と青春の物語 (新潮文庫)の作品紹介

「人はなぜ追憶を語るのだろうか。どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ」昆虫採集に興ずる少年の心をふとよぎる幼い日に去った母親のイメージ、美しい少女に寄せる思慕…過去の希望と不安が、敗戦前後の高校生の胸に甦る。過去を見つめ、隠された幼児期の記憶を求めて深層意識の中に溯っていく。これは「心の神話」であり、魂のフィクションである。

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