- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101131047
感想・レビュー・書評
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(2014.12.23読了)(2014.12.21拝借)
奥本訳の『ファーブル昆虫記ジュニア版』全八巻(集英社)を読み終わったので、ついでにこの本も読んでしまうことにしました。
北杜夫さんは、一生涯昆虫採集していたのではないでしょうか。
1977年にペルーのマチュピチュへ行く列車でご一緒したときも、マチュピチュ遺跡で捕虫網を振り回しているのを見かけました。
あちこちでの思い出をさしはさみながらいろんな昆虫の話を述べています。昆虫の挿絵も所々に挟んであります。
昆虫採集を始めたころは、新しいのを見つけるたびに新種かなと思って図鑑を調べると、そうじゃなかった、という感じだったようです。だんだんには、図鑑に載っているような昆虫は、見ただけですぐ名前がわかるようになっていたようです。
読んでいると、ファーブルの「昆虫記」では触れられることのなかった虫もまだまだたくさんいるんだということがわかります。昆虫の研究者もいますが、素人の出る幕がまだまだある分野ということですよね、きっと。
父親の斎藤茂吉が芭蕉の「おくの細道」で詠んだ静かさや岩にしみいるセミの声という句のセミをアブラゼミだろうと書いたという話も出てきます。父とは書かず、斎藤茂吉という歌人と書いていますけど。
串田孫一さんが辞書の不備で、昆虫の名前を誤訳しているという指摘があるので、解説を書いている串田さんが、誤訳の言い訳をしているんだろうな、と思って解説を読んだのですが、触れていませんでした。この本を読まずに解説を書いたんでしょうか。
【目次】
人はなぜ虫を集めるか
冬から春へ
詩人の蝶
神聖な糞虫
虫とり百態
蟻は人類をおしのけるか
まんぼう、憶い出を語る
変ちくりんな虫
蜻蛉、薄馬鹿下郎
さまざまな甲虫
天の蛾
蝉の話
まんぼう、ふたたび憶い出を語る
高山の蝶
水に棲む虫
秋なく虫
まんぼう、沖縄をゆく
蜂の生活
どのようにして虫を防ぐか
あらずもがなのしめくくり
解説 串田孫一
●採集家(54頁)
完全武装した採集家は、次のようなものを背負い、かつぎ、肩にかけ、ポケットに入れ、身に着け、手に握る。捕虫網、数本の継竿、水棲昆虫採集網、毒壺、数本以上の毒管、採集管、三角鑵、採集箱、胴乱、コーモリ傘、鍬、灯火採集に使うアセチレン・ランプ、ならびに糖蜜、腐った肉などなど……。
●与那国島(200頁)
日本の最西端である与那国島は、昔はまったくの絶海の孤島であったのだろう。しきりに海賊船に荒らされるため、大草鞋を作って海へ流し、この島には巨人が住むと思わせようとしたという故事が伝わっている。
☆関連図書(既読)
「ファーブル昆虫記 1」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.03.20
「ファーブル昆虫記 2」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.05.15
「ファーブル昆虫記 3」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.06.10
「ファーブル昆虫記 4」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.07.10
「ファーブル昆虫記 5」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.08.10
「ファーブル昆虫記 6」ファーブル著・奥本大三郎著、集英社、1991.09.10
「ファーブル昆虫記 7」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.10.09
「ファーブル昆虫記 8」ファーブル著・奥本大三郎訳、集英社、1991.11.12
「博物学の巨人 アンリ・ファーブル」奥本大三郎著、集英社新書、1999.12.06
「ファーブル『昆虫記』」奥本大三郎著、NHK出版、2014.07.01
「虫を放して虫を滅ぼす」伊藤嘉昭著、中公新書、1980.03.25
「昆虫という世界」日高敏隆著、朝日文庫、1992.12.01
「虫のつぶやき聞こえたよ」澤口たまみ著、白水Uブックス、1994 09.30
☆北杜夫さんの本(既読)
「どくとるマンボウ航海記」北杜夫著、新潮文庫、1965.02.28
「幽霊」北杜夫著、新潮文庫、1965.10.10
「若き日と文学と」北杜夫・辻邦生著、中公文庫、1974.06.10
「喋り下し世界旅行」斎藤輝子・北杜夫著、文芸春秋、1977.05.30
「マンボウ夢遊郷」北杜夫著、文芸春秋、1978.03.25
「難解人間VS躁鬱人間」埴谷雄高・北杜夫著、中央公論社、1990.04.25
「若き日の友情」辻邦生・北杜夫著、新潮社、2010.07.29
(2014年12月23日・記)
(amazon)
虫に関する思い出や伝説や空想を自然の観察を織りまぜて語り、美醜さまざまの虫と人間が同居する地球の豊かさを味わえるエッセイ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
虫の話のようであり、虫を通して人を語るようでもあり、何とも胡乱で面白い。但し、昭和36年刊行とのこと、現代の虫取り少年にお勧めするには時代色が強すぎる…何せ沖縄返還前の話なので。既に本作の中でも生態系の変化について触れられているが、更に温暖化の進んだ現今では、恐らくそれ以上に変化が進んでいるだろう。また、譬え話の類が、これも時代性なのだろうが、如何にも偏見が目立つ。その辺りを含んで楽しめる世代は、限られるかもしれない。
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中学生の頃、角川文庫で読んだのを、新潮文庫で再読した。
45年以上昔に読んで、一度も読み返さなかったので、ほとんど未読の本を読んだようなものだった。
子供の頃の、最初の遊びは虫捕りだった。
ここではあまり取り上げられなかったが、クワガタ、カブト虫を捕りに、毎夏、近くの雑木林を彷徨ったものである。
トンボ、セミ、蝶々、水に棲む虫たち、秋の虫、どれも全てではないが、僕の馴染みのものも多かった。
多分、この本を読んで実感できるのは、今の若い世代には少ないだろう。
作品も時代背景によって、理解されにくくなるのだろう。 -
一箱古本市
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「全国大学ビブリオバトル2014~京都決戦~四国Aブロック地区予選」
(11月26日/徳島大学附属図書館)
http://opac.lib.tokushima-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?materialid=215003775 -
虫をテーマにしたエッセイ集。
虫の話をしていたはずなのにわき道に話がそれたりすることも多々あるが、軽妙な語り口によるユーモアあふれる話のネタの数々にクスリとすることが多かった。鳴く虫の話での各国に虫を飼育させるくだりが一番印象に残っている。
多種多様な虫たちの様々なことを題材にしており知識の扉としても使えるのでは。 -
同感→「捕らえた虫は、羽をむしってもいいし、油でいためてもいいし、籠にいれてじっと眺めてもいい。それは子供たちの自由で…好奇心、これが人類をあやつってきた最初の力である。」
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アリの話やら蝉の話やら、身近なところに面白い話はこんなにいっぱい転がってたんだ。