どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101131528

感想・レビュー・書評

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  • しばらく前に 「どくとるマンボウ航海記」 を50
    年振りくらいに再読して、 懐かしさと、 より大
    きな面白さがあったので、 高校時代の思い出を
    たぐりたくて本書を再読した。

    ああ、なんと私の記憶と異なる作品なのだ。
    記憶では松本高校時代の寮生活がほぼ全編に面
    白おかしく描かれていた。
    ところが松高寮生活の様子は楽しく描かれてい
    るものの、主流は「青春記」に相応しい青年の
    悩みと迷いの告白の書だった。

    「一見自堕落な寮生活をつづけてはいたが、 私
    たちの心の底には、青年の悩み、 孤独、 疑惑な
    どが常につきまとっていた。」

    という一文はほとんどの若者の胸に一度は去来
    する思いではないだろうか。


  • 40の歳を迎えた作者による、学生時代の青春の回顧。
    当時の鬱屈した世相と、その中で踠きながら駆け抜けていく姿に胸が少し詰まった。
    入れられたユーモアは航海記よりも自然で、円熟を感じる。
    暗さと明るさのバランスが性に合っていて楽しめた。

  • 死んだお爺ちゃんの日記を見つけて思わず読んでみると、そこにはじいちゃんの若き日の力強い生き様がありありと書かれていて、読み終わる頃にはじいちゃんからの愛情を感じ、「生きよう」と思える。
    そんな感じの本。
    戦時中を生き抜いた人は、根性ある。そんな北杜夫さんの若い人へのエールが胸に迫る。
    「いま、いまこの歳になって私が若い人に言えることは、自殺するならとにかく三十歳まで生きてみろ、ということだ。」とか言ってくれている。
    エロにかける情熱にも笑った。
    最古の輸入エロ。中国小説の「遊仙窟」。原文を辞書を引きながら読み進め、エロい部分を必死で読もうとするがわずか数行、しかも恐るべき字画の多い漢字の羅列。。わはは。
    ラストの言葉が心に響く。
    「自己を高めてくれるものはあくまでも能動的な愛だけである。たとえそれが完璧な片思いであろうとも。」色んな人から愛される自分を目指すんじゃなくて、自分から愛すことが大事だと言い切るどくとるマンボウ先生、ほんとにそうだよな。読み応えある本だった。

  •  辻邦生について調べていて、この本にぶつかった。辻邦生と北杜夫が旧制松本高校の先輩後輩だというのは知っていたが、作品中に登場しているのは知らなかった。そう言えば、中学時代に北杜夫は結構読んだのだが、この本は読んでいなかった。
     太平洋戦争末期の東京から始まり、壮絶な話もあるが、基本的には北杜夫のエッセイらしい馬鹿話・ヨタ話が中心である。彼のエッセイを読むと必ず感じるのは、自分のことを笑い飛ばす精神だ。したたかさとも言えるが、そのおかげで深刻な話も気楽に読める。
     タイトルに「青春記」とある通り、北杜夫の青春時代、旧制高校時代から大学時代のエピソードが中心になっている。読んでいて、何だかとても懐かしかった。当然ながら私が行ったのは新制の高校・大学だけれど、雰囲気が似ているのだ。もちろん作中に描かれる旧制松本高校のように過激ではなかったけれど、本当に似ている。私が卒業した高校は、県下の公立高校普通科では一・二を争う問題校で、日々何かが起こっていた。けれど、教員と生徒は基本的には仲が良くて、今思えば一緒に問題を起こしてたような気がする。教育委員会ににらまれた教員は、私の高校に飛ばされるって話もあったくらいで、現在だったら新聞沙汰になるようなことも多かった。けれど、本当に、私たちは毎日精一杯生きていたし、精一杯バカをやったし、精一杯後で思えば恥ずかしいようなことをやった。それが、北杜夫の描く旧制松本高校に、驚くほどよく似ている。
     もしかしたら、似ているのは私の高校と旧制松本高校ではなくて、ある程度の年齢になってから振り返る「青春時代」というものかも知れない。人みな青春時代があって、それに対する思いはそれぞれだろうけれど、何か共通する部分もある。その共通部分を思い出させるのが、この本かも知れない。上記のように、基本的には馬鹿話で、笑いながら読めるけれど、読後感はしみじみとしている。それは、読者の心の中の青春時代の印象なのかも知れない。

  • 斉藤孝『読書力』にあったオススメの書。必ず読もうと思う。

  • どんな時代でも若者の考えることは大体同じなのだなと感じた。

  • 旧制高校の学生がやっていることはめちゃくちゃだけど、それがゆるされる世の中の雰囲気があったんだなぁ

  • 著者が40歳の頃に、自分の青春時代について書いているエッセイ。航海記、狂阪神時代と続いてこの著者のエッセイを読むのは3冊目。そのため、前者2作品のようなノリなのかと思い読み始めると、流石に少し重かった。青春時代を戦時中~戦後で過ごしたのだから無理はない。まずくても食べるしかないし古本屋で本を買うにも米がいる、というようにとにかく空腹との闘いという今では中流家庭以上では恐らく想像できないような暮らしをしている。
    とはいえ、多くの人が書くと暗いエッセイとなるのだろうが、そこは流石北杜夫氏。個性豊かな登場人物と著者自身の行動に笑わざるを得ない。というかどこまでが本当のことなのかわからない。大変な時代は大変なりに、皆で団結して楽しく明るく過ごそうとしていたようにも見える。
    若い頃は一度でも死に憧れる、だが戦時中は死は日常なのでそのようなものはない、など納得できることも。時折真面目な話を挟んでくるので油断ならない。

    著者お気に入りの話を読んだ直後にこれを手にしたのは偶然かそれとも。

  • 昭和21年に旧制高校に入った作者の自伝
    1年違うと世代が違うと作中書かれているように
    ほぼ同時代の山田風太郎の日記と比べて違いが面白い
    読み物としてはこの作者の作品は何が良いのだかさっぱりわからない

  • 正直に言おう、

    よくわからなかった。

著者プロフィール

北杜夫
一九二七(昭和二)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。五二年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医学博士。六〇年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第四三回芥川賞受賞。その他の著書に『幽霊』『楡家の人びと』『輝ける碧き空の下で』『さびしい王様』『青年茂吉』など多数。『北杜夫全集』全一五巻がある。二〇一一(平成二三)年没。

「2023年 『どくとるマンボウ航海記 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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