紀ノ川 (新潮文庫 (あ-5-1))

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著者 : 有吉佐和子
  • 新潮社 (1964年7月2日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132013

紀ノ川 (新潮文庫 (あ-5-1))の感想・レビュー・書評

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  • 明治半ば、和歌山の旧家へ嫁ぎ、家をもり立てることに心血を注ぐ花。
    美しく万事そつのない彼女も、娘の文緒には手を焼いていた。
    家やしきたりに反発し、男女平等を掲げて自由を謳歌する文緒もやがて結婚。
    そして生まれた華子は、隔世遺伝のように情緒を大切にする花の美意識を受け継いでいた。

    死の床の、もはや見栄や建前もない花の述懐が、なんとも人間臭く味わいがある。
    家の没落に気を病んでいるいると思いきや、戦後の農地解放のおかげで
    先祖に気兼ねがなくなり嬉しくてたまらないと笑い、
    反抗され続けたが、文緒に傍に居て欲しかったと本音を漏らす。
    衝突ばかりの母娘だったが、頼りない二人の息子より、
    生意気だけど気概のある文緒に、一番深い親子の縁を感じたのだろう。

    その母の死期を悟ったように突然現れた文緒。
    彼女の体を流れる母の血が、それを教えたに違いない。
    親から子、そして孫…と継承されていく命が、力強く滔々と流れる紀ノ川と重なった。

  • 冒頭は昼ドラのようなチープな物語にも思えたが、主人公の花が紀ノ川のように静謐でありながら何もかもを流れに引き込むと言ったようにして読者も太い本流に含まれる。 家霊的とは否定的に響くが、実は伝統を知り、本物を知り、確固とした信念を持つことだった。

    本物を知る者だからわかる衰退の前に、苦悩する姿が描かれている。
    最近の流行の小説ならば義理の弟との不倫も描かれそうなものだが、それがない。それはこの時代の女の信念や尊厳かと思う。自分を抑えに抑えてる人生を全うした女性の姿。欲望に身を任せるのは案外、容易いことかも。

    読み始めは方言による記述がとても読みづらかったが、だんだんとそれが美しく感じられてよかった。

  • 明治・大正・昭和を生きた三代の女性の物語。
    感想は言葉にできないけど、読み応えがあった。
    若いときに読んだら、誰に共感したんだろう?
    今の私は3人それぞれの立場で読める年齢になったんだなと思う。
    老年になったらまた読み直してみたい。

  • 明治・大正・昭和と流れゆく時代を生きる母子三代のものがたり
    時代のなかで、生きてきた環境のなかで 価値観を育て
    自分の生き方をまっすぐに信じる女性の姿が描かれてる

    伝統は、反抗することでしか受け継がれない
    ってくだりがとても印象的で
    古いものが少しずつ形をかえてゆくさまを目撃したみたいだった
    花が持つ美意識、"家"という概念、妻という生き方
    いまはもう失われつつあるものたちのなかに
    こんなにも美しさを見出せるあたしは
    やはり根っから日本人なのだとおもう
    真似はしないし、できないけれど
    こういう美しいものたちが失われてしまうことは、とてもかなしい

    だけど、模索することはできる
    いくつもの矛盾を内包して、それでも受け継ぐべき伝統を
    知ること、愛することはできる

    美しい紀州のことばにのせて語られる美しいものがたりは
    なんだかとっても豊かな時間をわたしにくれました。

    名作、のふたもじがとっても似合う
    たくさんのひと、とくに女性に
    読んでほしい、知ってほしい小説 。

  • 有吉佐和子を集中して読んでいるわけだが,いままで読んだ中では一番良かった.紀州の名家の没落とともにある,女三代の物語.一代目にあたる花の生き様が,死の床にあっても,すばらしい.骨太の人生.陳腐な言い方だが,戦後の日本が失ったものは大きいな.ほんとに.

    1959年に出版され1964年に新潮文庫に入ったこの本は版を重ねいまだ現役.私のように,このよい小説を読む人がまだいると思うとうれしいね.

  • 云わずと知れた有吉佐和子の代表作。
    紀州の素封家の女三代記。

  • 読み応えのある内容だった。和歌山の素封家三代にわたるとは言っても実質の主役は「花」。
    激動の時代を女がどう生きていったかわかりやすく書かれている。
    いわゆる古風で奥ゆかしい花と、その娘でリベラルな意識を強く持った文緒の対照的なキャラクターが、固く暗くなりがちなこの時代の物語をコミカルに見せていると思う。
    そんな二人を足して二で割ったような華子は青春を戦争で埋められ奨学金をもらいながら学業を納める。もし華子が花と同じ時代に生まれたら、あるいは文緒と同じ時代に生まれたら。花と同じように川を下って嫁入りしたであろうし、文緒と同じに人権活動もしたのではなかろうか。
    華子からは花や文緒に感じなかった「時代に作られる人」という新しい人種を発見できたように思う。

  • 大河小説。
    盛り上がりとか、感動とかはない。
    家と女系がまじわるところが、川だった。
    映画で見たいが、作れる人いないだろう。
    原作の骨格だけでいいのだが。
    豊乃は、岩下志麻。
    華子は、黒木華。
    花と文緒が難しい。
    エンディングは、床についた花が、華子をつれ、慈尊院の石段をあがるところを夢想。

  • 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記)

    これに集約されると思う。親子の間には、何かしら似てない親子にしても伝わるものがあり、また似ている親子に見えても伝わらないこともあり、ということをこの言葉で伝えているのではないかと思う。

    それと、女性はよく海などに例えられることもあるが、それと同じで、戦争など有事の際には、女系を中心とした側に家族が集まることが描かれており、その女同士を中心とした関係に、周囲の男性が結局巻き込まれていくということも描きたかったのかもしれない。

    紀ノ川沿いで生まれ、紀ノ川の流れに沿って、嫁に行った明治の花→我が儘勝手な大正の文緒→強く生きざるを得ない昭和の華子のある裕福な一家の話。
    佐和子さん、がちがちの女史みたいな写真だけど、以外におっとりした雰囲気の漂う作品。他も読んでみたいと思った。

    花の第一部は、昔ながらの従順な考えで育てられた花のよくある話。文緒の第二部は、我が儘いっぱいの文緒にてこずる花の話。第三部は、華子が文緒とは違い、どちらかというと従来の旧式のことも大事に思いながらも、たくましく戦後を生きていくだろう様子に、文緒とそっくりでないことに安心する花の話。

    佐和子さんと私が生きた時代が違うためか、文緒に一番共感できない。親からの仕送りをもらっているにも関わらず、私の旦那は給料が上がり、家柄などなくても妻子を養ってるのでありますなどと厚顔無恥なことを言う。
    それに、自由な独立な女史を目指していた割に、なぜか、ただの専業主婦になっている。そして、なぜかそれなのに独立しているように語る。。。なぜだろう。。。

    第三部の華子が、一番時代が近いからか共感できる。
    華子は日本式のことを大切に思う心もあり、それほどはねっ返りではないが、風潮もあり、20代後半でも未婚で、しっかりと仕事をもって働いている。名前も花→華子と受け継がれ、そして花自体も母親の存在感がなく、祖母への愛着が強い。

    第一部では紀ノ川の紹介、第二部では紀ノ川の意味するところ、第三部では総括なような感じで、徐々に人の、世の流れを川に擬えた作者の意図を理解できるように上手い流れが作られている。

  • 生涯そばに置いておきたい本。

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