香華 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132020

作品紹介・あらすじ

女としてのたしなみや慎みを持たず、自分の色情のままに男性遍歴を重ね、淫女とも言えるような奔放な生き方をする母の郁代。そんな母親に悩まされ、憎みさえしながらも、彼女を許し、心の支えとして絶えずかばい続ける娘の朋子。-古風な花柳界の中に生きた母娘の肉親としての愛憎の絆と女体の哀しさを、明治末から第二次大戦後までの四十年の歳月のうちに描く。

感想・レビュー・書評

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  • まだ女のドロドロ系
    最初からほぼ後半まではイライラしっぱなし。
    郁代も嫌な女だけど、朋子に終始イライラ。
    そんなに憎いなら、見放せばいいものを、やはり血縁というものは切っても切れないもんかね。
    ただただ面倒臭いね、親子のやりとり。
    でもついつい読み進めちゃう。
    有吉佐和子マジック。

  • 母親と娘の愛憎の話。
    面白いのでじっくりと丁寧に読み進めたかったんですが、あっという間に内容に引き込まれ、次々と読んでしまいました。

    時代は昭和初期。
    後家の郁代は実家で生活の不自由なく、実母と一人娘と暮らしていた。
    ところが、突然郁代は何の前触れもなく再婚すると実母に告げる。
    女三人で生きていく算段だった実母は裏切られたと思い、郁代を憎み精神に破綻をきたす。
    その様子を真じかにずっと見ていた娘の朋子がこの物語の主人公。

    その後も郁代は生活能力も子供を育てる能力もないのに、次々と男性遍歴を重ねて子供を産む。
    それと正反対にしっかり者で母性本能の強い娘の朋子は芸者として身を立て立派に一人立ちする。
    幼い頃美しい母親を誇らしくあおいでいた朋子だったが、思春期を経て、大人になるにつれ、母親への憎しみと同時に愛情がつのっていく・・・。
    すさまじい親娘の話でした。

    一時は女郎にまで身を落としながらも、いつまでも若く美しい母親。
    それはこの人が自分の興味のある事にしか気を遣わないからだろう。
    美しい着物や、自分をひたすら磨くこと。
    それ以外は全く頓着せず、どうでもいい。
    この人の時間は他の人と違う刻み方をしているのだと思う。
    だから一人だけ時間がとまったように若い。
    私がこの人に唯一好感もてたのは、計算がないという事。
    誰かに気に入られようとか、おもねるとかそういう機転が回らないので、ただただいつも自分を通している。

    反して朋子はいつも自由奔放な母親に振り回され裏切られ続けてきた。
    最後までその母親を憎む事も突き放す事も出来ずにむしろ自分は親不孝だったんじゃないかとまで思う人。
    つくづく損な役割の人だと思う。

    それにしても、有吉佐和子さんの文章は素晴らしい!
    登場人物のほんのちょっとしたしぐさで心の動きが見えるし、部屋の情景や風景が手にとるように見えてきた。
    こんな文章を自分が実際に経験してもないのに書けるなんて・・・。
    資料や調査、想像力だけでこんな文章が書けるのかと驚愕します。
    有吉佐和子さんが以前同じように芸者経験がないのが不思議なくらい。

    この本を読んでいる時、ずっと本の世界とこちらを行き来しているような感じでした。

  • 自分の美しさを傲慢にひけらかし、自分の美貌にしか興味の
    ない母親郁子のもとに産まれた朋子の幼少から老年までの物語。

    母親らしいことは何一つしてもらえず、母親は自分が困ると
    娘を頼りにし、困ってない時は娘を顧みない。

    朋子は祖母に育てられ、母親の再婚家庭に引き取られたかと
    思えば、すぐに芸者に売られ、更に同じ妓楼に遊女として
    母親まで売られてくるという壮絶な日々を送る。

    しっかりもので自分の将来をみすえ芸者から一流料亭の女将へと
    出世していく朋子とだらしなく傲慢で自分の事しか考えてない
    郁子のやり取りに苛立ちを覚え、大変疲弊する読書だった。

    更には郁子の2回目の再婚相手との子供安子まで、
    母親そっくりの美貌でそれでいて気は効かなく困った時だけ
    姉を頼りにするので読んでいて朋子のお人よしに苛々した。

    ただ最後の結末は人生の妙を感じるような、今までの母娘の
    確執がすっとぬぐいさられるような終わり方でとても良かった。

  • 初作家読み。
    血縁に縛られた主人公が母親と妹の勝手さに振り回されそれでも切ることができずあらゆる手助けをする。
    小さな頃から勝ち気な性格だからか倒れることなく旅館を築き、終戦後は誰の力も借りずに食堂から大きくしていく才覚を発揮する。

    妹の子を養子にするが地元の旅館経営者が腹を痛めた子が1番だと養子にもらった息子の戸籍を返したと話して終わりとなるが、母親が亡くなりやっと苦労がなくなると思いきや妹の子が大人になっても安心できない終わり方でなんともやるせない話。

    でも芯のしっかりした生き方に励まされまた頑張ろうと勇気ももらえる話でもある。

  • 2016.02.06 朝活読書サロンより

  • 母が娘を「妾」といい、娘が母を「娼妓」と罵る。そんな親子があるだろうか。明治の終わりから昭和40年代にかけての物語が、圧倒的な筆力で語られている。女であることをやめない母親を持つ、聡明な娘の気持ちがひしひしと伝わるようだ。苦労を重ねた朋子がようやく落ち着ける心のよりどころを見つけたかと思いきや、そうはならないと匂わせるラストはいかにも有吉さんらしい。血のつながりを否定もし、肯定もする業の深い物語だった。
    話のなかにいくつもの着物や色の描写が出てきた。調べてみるとどれも素敵で、重く暗い物語にほっと息をつかせるようだった。

  • 私、たぶんこれを学生時代に読んだ。気がする。そしてたぶん当時は自分から遠い話だったので、あまり感慨を抱かなかったと思う。こういう、女であることを意識させられる女性主人公のものは苦手だったし。

    郁代は確かにどうしようもない母親だけど、突き放すこともできない朋子の気持ちがとても、分かる。
    朋子が再三言うように、朋子に子どもができていれば、郁代との関係も変わっていたように思う。郁代が子離れできないのと同様、朋子も親離れできていないのだ。親はいつまでたっても子を子ども扱いするし、家にいれば子はいつまでも親に縛られるものだ…。

    母親である美しい郁代に似ない自分を、朋子は恨みがましく思っていたようだけど、父親に似ていると言われたとき朋子はどう思ったのだろう。
    郁代が朋子にべったり依存していたのは、一番愛した男に朋子が似ていたからなのだとしたら、夫に早く死なれた郁代もかわいそうな人だ。
    いつまでも江崎を未練がましく思っている朋子に重なる。もし江崎にそっくりな子どもが生まれていたら、朋子はどうしていただろう…


    生活の上で身に付いた着物の知識がないと書けないだろうな、という描写がなんだか素敵で、今はこういう文章がなかなかないなぁという気がする。

  • 有吉さんのいつもの味はあるんですよ。。。
    ただ、ごめんなさい。私、嫌悪感を郁代に覚えました。読んでる間中、不愉快でした。


    有吉さんの「芝櫻」にすごく似ていますが、「芝櫻」の方が断然いいです。

    郁代に似ている倫理観の破壊した男女知っています。こういう相手の気持ちをまるで無視できて、自分の都合のためだけに異性を好きでなくても利用できる人間って沢山いるんですよ。恐ろしい。そして、嫌悪。

  • 結構良かった。
    単純な伏線ゆえに くらい将来が見渡せ
    苦しいところもあったが まあそれもそれ。
    とくに、最後の自分のお腹を痛めてない子は〜
    という伏線は恐ろしすぎた

    また、女の一生 という観点で非常に興味深い本であった

  • 芝桜、木瓜の花の正子と性分が似ていると思います。賢くて生真面目で品格のあるところ。だけど朋子がどれだけ正しく清らかに生きても世間一般からみるとけっして堅気ではなく本来ならば、こいさん、お嬢さんでいいところの奥さんになるはずの人が波乱の運命をわたります。
    時代背景と風習そして着物、布地などの描写が興味深く毎回勉強になります。

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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