華岡青洲の妻 (新潮文庫)

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著者 : 有吉佐和子
  • 新潮社 (1970年2月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132068

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華岡青洲の妻 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 世界に先立つこと40年弱、1804年の日本に世界で初めて全身麻酔術を成功させた人がいたことを、この本で初めて知りました。注目すべきは手術の腕ではなく、麻酔を作り上げたという功績。
    当然ながらマッドサイエンティストのように人体実験を繰り返してたどり着いたわけでないにせよ、最終的には人間での臨床は欠かせない。
    そこで最終的には、母と妻が自らその実験台にと手を上げた。そして、臨床を経てついに手術は成功。

    どう考えても美談として語られる内容。
    実際に、きっと美談として語り継がれてきたんだと思います。それを、まさかこんなにも深い女性の業を見せる作品に描くとは、相変わらず有吉さんの底知れなさに慄きました。

    美しいだけの話では終わらせない、というのは、
    美しいだけのものなんてないんだ、という真実を伝えようとする潔いまでの著者の覚悟を映し出しているように感じます。
    よく言う嫁と姑の確執ですが、そもそも同じ舞台で戦うことができないこの両者に、決着なんてつけようがない。

    愛を交わせる妻が相手では姑は分が悪いけれど、
    我が子を生み出したという深い繋がりには、妻は太刀打ちできない。
    どちらにとっても唯一無二で大切なものだから、不毛だとわかっていても「その人にとって自分が特別である」と思いたいし、そう認められたいんでしょうね。
    気持ちは、わからないでもないです。
    でもその想いの強さというのは、渦中の人には見えなくとも、端から見ているとなかなか壮絶でしょうね。

    華岡青州の功績はもちろん素晴らしいものですが、小説として日本の医療界の一幕を世に知らしめた著者の功績も素晴らしいものだと思います。
    本当に、いいものはいつまで経っても色褪せない。

  • 中学生か高校生のときに、一度読んだが、全くおぼえていなかった。
    でも、おもしろかった!

    というか、よくあのくらいのトシでこんな本読んだな、という自分に驚いた。内容、理解できたのか?その前に、なんで読もうと思ったんだろ。。

    世界ではじめて全身麻酔での外科手術に成功した華岡青洲と、その成功(麻酔薬の人体実験)のために、自らの命をかけた嫁と姑の泥沼劇を物語る。

    私は命を差し出すくらい息子を愛してるけど、あんたには出来ないでしょ?と思わせる姑。老齢の母(身内)には手を出せず、嫁を使って朝鮮朝顔の麻酔薬を開発した息子(青洲)。盲目になってまで青洲の人体実験に身を捧げたヨメ(加恵)。

    姑(於継)が先に我が身を差し出す覚悟を示せたのは、我が子(於勝)に先立たれ、うしなうものは何もなかったから。のちにヨメ(加恵)も我が子(小弁)を失って、青洲をめぐっての対立だけではなく、姑のその気持ちに気付く。

    という、愛と憎しみの嫁姑バナシ。
    男は結局、身内を殺すことはできない、という一説が印象的だった。わかるような、わかんないような。。。

    青洲目線で、この身内を犠牲にしての物語が読んでみたくなった。

  • 人に勧められて読んだ本。
    この本はいろんなことが書かれている。
    ①嫁姑の確執
    人の死など様々なきっかけが気持ちのすれ違いを助長し、確執が深くなる二人の内情の生々しい描写は圧巻。
    それだけではなく、小姑や夫の胸中まで及んでいる。
    現代の環境とは異なる封建制度時代の男尊女卑である江戸時代であるが、女性同士の感情は、そんな時代を超えて同じだなと感心するとともに怖れを感じた。
    ②新薬の開発
    今はGCPという基準に従い人体実験とならないように行われる新薬の開発。もちろん昔はそんな制度はなく、安全性もわからないまま人へ投与することとなる。その点青州は動物で何度も試し、用量も検討しこの時代では精密に行われていたと思われる。人での投与はこの時代はどの国も困っていただろう。今でもFIH試験といって注意深く行われるが。この通仙散は家族に投与しているが、通常は弱者に投与され、こういうのがタスキギー事件等へつながるんだろうな。
    ③世界初の麻酔薬
    エーテル麻酔など行われる何十年も前に日本人で初めて麻酔の手術が行われた。鎖国しているときで医療が遅れていただろうに、この発明は日本人として誇りにしてもよいはず。
    以前は乳がん日本人で少なかったと思われるが、手術は乳がんが多く行われた。

    通仙散
    加恵、於継(おつぎ)
    犬で実験(死骸)
    体重に合わせて調合していた

  • 世界最初の全身麻酔による乳がん手術に成功した華岡青洲。麻酔薬の通仙散を完成させる為に自らを実験台にと申し出た妻と母。美談かと思いきや青洲の愛を得んとする女の争いなのでありました。
    いやー怖い怖い。有吉佐和子さんの描く女性はドロドロしていて、読むたびに女性が怖くなっていきます。特に母の執念がきりきりとねじ込まれてくるように感じます。
    義理の妹が亡くなる時につぶやいた、私は嫁がなくて幸せだったという言葉が印象的でした。

  • 華岡青洲の母と妻は自らを人体実験に捧げた。
    しかし、行いの見かけの美しさの裏では、2人の女がお互いよりも優位に立とうと意識を張り巡らせて争っていた。

    最後の華岡青洲の妹に当たる人物が語った言葉が印象的。
    嫁にも姑にもならずにいられたことが幸せだ、と。
    一番恐ろしかったのは華岡青洲だったのか?

    当時は個人が幸せに生きることを最優先にできなかった時代。
    家族のひとりひとりが「家」を繁栄させるための道具としてあることが当たり前だった時代。
    結局それが一番恐ろしいものだと思った。

  • 凄まじいお話だった。そしてこの凄まじさは、時代がかわっても本質的にはあまりかわっていない。人間はまったくその点進歩しない。
    それがこの小説が現代もなお生きる理由なのだろうけど。
    ああ こわかった

  • 物凄い一冊。どの時代においても先駆者と呼ばれる人は苦労と努力を繰り返してきたんだなぁ。結婚に対しても考えさせられた。もっと評価され、取り上げられるべき一冊だと思う。

  • 日本の小説では一番好きな作品かも。

    旦那を立てるという、本来控えめな妻の立場なのに、全然違う。主人公のあの芯と意志の強さに、つくづく感嘆。

    女って、大変だよなぁ…。

  • 嫁姑って今でもこんな心境なんだろうな。

    周りを見ても、母、息子、嫁を取り巻く思いはこんな昔から変わらないものだと思った。
    最後まで二人の確執が続いていたのも現実味があった。

    遠く離れて暮らす、夫の母もこんな思いなのかしら。


    私には加恵さんほどの愛はありませんが(笑)

    ドラマ化されてたの知らなかったので、見たかったな

  • 切れ味、迫力あり。芝居にもなり有名な作品であるからこそ、だいたいのストーリーもわかっていて読んだ気になっていたが、それはもったいないことだ。きちんとこの文章を読むべきだ。これぞ小説だ。

  • 「生まれてくるのが華岡の家の者というなら、産もうとしている加恵は華岡家ではまだ他人なのか。加恵の歯も舌も胃袋も、華岡家の代継ぎを養うための杵と臼のような道具でしかないというのか。」

    再び有吉佐和子。読むとそうそう、有吉佐和子といえばこれこれと頷くような女の妬みや情念の世界に引き込まれる。

    社会に役立ったり誰かを助けることができるなら、自分の命は惜しくないと思わないこともないが、やはり人間自分が結局一番可愛かったりして自身を売ることなどできない。

    医者の妻、医者の親であれ、自分の命を懸けてまで麻酔の実験台になると思うであろうか。

    加恵の気持ちは想像できる。売られた喧嘩は買わねば。女に嫉妬されたら必死で守らなければ。それが義母であろうと。でも、まだ於継の心情はわからぬ。いつか愛しい息子などを産み育て、お嫁さんをもらう日がきたらわかるのだろうか。

    華岡青洲は、世界で初めて全身麻酔手術に成功した医者(江戸時代)。

  • 多分学生時代以来の再読、やっぱ有吉佐和子は書ける作家ですな。この間読んだ本はなんやったのか?
    さておき女の情念でしょうか?怖いなぁ、嫁姑の怨念に満ちた争いもそうだが、姉の透徹さも。それを見て無ぬ振りというか、多分本質的に分かってないんだろうな、男は。(男)社会・歴史上での評価との落差含めて上手く描かれていて、ほんとすらすらと読める(褒め言葉としての)王道娯楽小説です。
    ところで本作、史実を歪曲してるとか何とかいった論争があったやに聞いておるのですが、小説に何故そんなことを言う?よく分からん、まさに言い掛かりと思うのだが、時代が時代だったということなのかな?すいません、よく承知していないのに詰まらん戯言を最後に記しまして。

  • 嫁、姑の心の中の激しい対立。その対立が、二人を華岡青洲が開発中の麻酔薬の人体実験へと駆り立てる。

  • やっぱり有吉さんの文章力はすごい。
    やめられない、とまらない。

    けれど、女の業とはかくもすさまじいものなのかと。

    有吉さん定番の、顔も美しいけど、中身も素晴らしい女性、美っつい於継さんの姿に、私も見た目は、現状レベルだとしても、いつも居住まいがきちんとしているお上品な女性になりたいものだと思っていたのに、なんとまぁ烈しいお人であること・・・。

    みんなの賞賛の眼・声がその人をより美しくするのはわかるけれども、家事をしつつも日に何度もお化粧を直し、着物を直しというところまで徹底しているかと思うと、世の中の綺麗な人を見るのが恐ろしくもなる。

    そしてその於継さんに勝つ加恵さんもすごい。
    姑に勝つことと夫の愛を得ることがイコールなのが、またなんとも・・・。

    結婚とは恐ろしい。

  • 嫁姑の確執が空恐ろしい。
    同居なんてするもんじゃない。

  • 華岡青洲というのは、世界ではじめて全身麻酔による
    がん摘出手術を成功させた人なんだそうです
    全身麻酔の技術を確立させるため、人体実験もおこなったが
    その際に献体としたのは、自らの妻と母親であった
    嫁姑の間柄で、家庭を舞台に無言の争いを繰り広げていたふたりは
    今回もまた、どちらがより青洲の役に立てるかと
    張り合うように未完成の劇薬を飲むのである
    後遺症どころか、狂死の可能性も知った上でそうなのだから
    それこそ一種の宗教的狂気というべきだろう
    肉体をより深く傷つけたほうに愛の証が立てられるというのは
    負けたものに勝利が宣せられる、倒錯的チキンレースにほかならぬ
    その結果は一読していただくとして
    問題は、そのようなふたりを、周りの人間がどう見ていたか
    ということなんだ
    一度も嫁ぐことなく世を去った青洲の妹は、死の間際において
    結婚できなかったことを、むしろ幸福であったと言う
    もちろん、嫁姑争いの醜さをずっと目の当たりにしてきたためだ
    そしてさらにはそれを利用し
    ふたりに毒を飲ませた青洲こそもっとも怖るべきもので
    自分はふたたび生まれ変わるとしても
    女にだけはなりたくないと言う
    ここにおいて明らかにされるのは
    フェミニズムの本質にある処女信仰のようなもので
    やはり宗教的狂気は見て取れるが
    なにもそれに敗北感を感じることはないよな、と僕は思ったよ

  • 「私の一生では嫁に行かなんだのが何に代え難い仕合せやったのやしてよし。嫁にも姑にもならいですんだのやもの」
    一番印象に残ったのは小陸のこの言葉。

    女の静かな戦いも怖いけど男もなかなか狡猾だった。

  • 麻酔の話は私にとってアイデンティティです。
     世界で初めて麻酔手術を成功させた日本人医師:華岡青洲のお話。検体になった嫁姑の確執に焦点を当てているところがハイセンス!


     麻酔が生まれたことでどれだけ患者が救われたことだろうか。人間の苦しみを紛らわす麻酔は、化学の産んだ奇跡の一つだと思う。
     そこには、「患者の苦しみを…」とかそんな善意なんて関係ない、譲れない女の戦いがあった。それはまさに「冷戦」である。

    _______
    p19 病に貴賎なし
     近代化以前の医者の精神は「病に貴賎なし」無償で患者を診ることもざらだった。緒方洪庵も言っていたしね。医者は儲けてはいけない。仁に尽くさなくてはいけない。的なことをね。

    p209 嫁姑って…
     華岡青洲の妹:小睦が岩(癌)で死ぬ間際に、加恵に打ち明けた言葉。
     「於継と加恵の確執は知っていた。他の嫁に行った姉妹の話を聞いても、私は嫁に行くことが無くて本当に良かったと思っている。兄は母と義姉の関係を知っていながら何も言わなかった。まぁ女に振り回される弱い男よりはいいけど。私はそんな面倒臭い女同士の確執や男と女の関係に振り回されなくて本当に幸せだった。」
     嫁と姑とは…。俺、結婚して大丈夫かな??不安になってきた。
     俺なんて絶対弱い男になりさがってしまいそうだ。

    p212 国際外科学会
     華岡青洲はアメリカのシカゴにある国際外科学会に世界初の麻酔外科手術を行った人物として認められた。

    p212 ロング医師とシンプソン医師
     1842年にエーテルを用いた麻酔でアメリカのロング医師が麻酔手術を成功させた。1847年にシンプソン婦人科医がクロロフォルムを用いた手術を成功させた。華岡青洲は1805年に麻酔手術を成功させたのである。

    ____

     もう一度言う。
     麻酔の話は私にとってアイデンティティです。

     このロング医師とシンプソン医師の話も知りたいものだ。絶対に壮絶な人体実験の話が伴っているに決まっている。

     こういう新薬の登場には人体実験が欠かせない。昔は奴隷とか囚人を使ったのだろうが、グロテスクな話を知りたい。

  • 有吉さんの小説は読ませる。妻と姑の関係、江戸時代からも続く心模様。次回は恍惚の人か

  • 世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術を成功させた華岡青洲。青洲が麻酔薬を完成させていく華岡家の妻と姑の静かな泥沼を描く。

  • 「…お母はんと姐さんとのことを兄さんほどのひとが気付かん筈はなかったと思うのに横着に知らんふりを通してお母はんにも姐さんにも薬飲ませたのですやろ。…」青洲の妹・小陸の深い言葉。女と男というものは。

  • もう2.3回読み返してるけど相変わらず面白い。
    世界で初めて全身麻酔の手術を成功させた偉大な青洲のお話…
    とは成らず、
    その母と妻の確執を描いた物語。
    表面上は仲睦まじく見えるが 青洲への愛を競い合う二人。
    お互い賢いから避難し合う訳ではなく青洲の相手に対する言動に一喜一憂して嫉妬し合う…。

    二人は人体実験を進んで引き受けどちらが青洲の役に立ってるか競い合う。
    結局加恵が失明してしまい、於継は何もなく…。
    ここで負けたと感じる於継。

    『私の一生では嫁に行かなんだのが何に代え難い仕合せやったのやしてよし。嫁にも姑にもならいですんだのやもの』
    小姑の小陸の最期の言葉がこの物語を表してる感じ。

    大変面白く読ませてもらいました。

  • 華岡青洲とは、麻酔を最初に作った人である。犬、猫を使い、何匹も殺す程の実験の末、最終的には母や妻で試すという、今、考えれば恐ろしい事である。この母と妻とは嫁姑ということになるが、初めは仲の良い二人であったが、青洲を取られまいと互いに心で戦い続けた二人であった。それ故に、二人は実験に志願したのだ。母の方は年も考え(本人には内緒)弱くしてあり別条はないが、妻には本実験を二度やり、一度目で失明した。昔の人の体を張っての努力が今に至る。しかも、日本で最初というのが素晴らしい事だ。

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