複合汚染 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132129

感想・レビュー・書評

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  • 仕事上の必要から初読。

    毒性物質の複合がもたらす「複合汚染」の問題を取り上げた社会派作品。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の日本版といってもよい(カーソンについての言及もくり返し出てくる)。

    環境汚染について有吉佐和子自らが取材していくプロセスを、そのまま小説にしていくスタイルが斬新だ。
    ある意味で実験的なこの作品が、『朝日新聞』の連載小説であったというのはスゴイ。

    ただ、小説として面白いか、質が高いかといえば、個人的には疑問。いろんな問題を盛り込み過ぎて、小説としては破綻している印象だ。

    たとえば、若き日の菅直人が出てくることで有名な、冒頭の市川房枝の選挙の話は、本題とはあまり関係ない。
    この部分を丸ごとカットしても支障がないし、むしろ読んでいると、「あれ? 選挙の話が途中で消えちゃたな」という感じで戸惑う。

    奥野健男の解説によれば、それまで有吉の作品を評価していなかった某文芸誌の元編集長は、「有吉佐和子がついに純文学を書いた」と言って『複合汚染』を絶賛したのだそうだ。

    社会派ノンフィクションだと思って読むから破綻が目立つのであって、純文学(私小説)として読めばよいのかも。

  • 複合汚染読了。
    小説とは言いがたいし、最初の方の選挙の部分は読みにくいし最終どこに話がいったの?って感じになるけど、あの時代(1975年)にあれだけのことを書いていて、有機農業ムーブメントを起こしたのはさすがだと思う。
    農薬が一つ、二つ、三つと重なっていった時に起きる化学反応、そしてそこから新たに創りだされるであろう物質の毒性など誰もチェックしていない。
    ちょうど四大公害が表沙汰になってきた頃でそのインパクトも大きかったのだろうと思う。
    農薬をただ批判するだけでなく、使い方と量の問題だと指摘している点は共感できる。
    ちょっと感情的になりすぎてる感が否めないので減点(偉そうなこと言ってすみません)。

  • 人類の拡大が速過ぎて噴出する問題に対応し切れない、今の温暖化対策はデジャブなのかも、この時代を実際に生きた人からすると。
    そうするとどこか日本の野党的な騒ぎ立てにも見えなくない本作はもしかすると理想論に過ぎる可能性もなくはなく。
    こういう立場は絶対必要だけど、そこに折り合いを付ける人たちがいてこそ価値があるので、うーむ、簡単な話ではないかと思われ。

  • だいぶ前の本であるので、現代ではもう少し進歩があるのかもしれない。
    最近話題の「ねばねば石鹸」の前身(?)が提案されていた。(我が家でも使っている)
    ただ、洗濯石鹸についての部分で、「お母さんを甘やかさないで~」というような記述が見られる。現代に生きる私からしてみれば、少々強い言い方で、がっかりした。夜に石鹸液に洗濯物をつけておいて、朝に洗えばいいとのことだが、なかなか難しいことである。

  • 有吉佐和子さんを読んでみたくて、2冊目に選んだ。食品の複合汚染という、今、あらためて話題になっている題材を1979という公害全盛期に執筆されたという意味で面白い。でも、小説ではないスタイルという意味で選択ミスでした。2014/10 読了。

  • 有吉佐和子さんを初めて読んだのですが、今までにない形式?の入り方で戸惑いました。まさか選挙のお話が環境汚染に繋がっていくとは思ってもおらず、しかもその話題の移り変りがグラデーションのようで、いつのまにか環境汚染の話にずっぽり染まっていました。これ、当時でこんなにたくさんの事柄が問題提起されてますけど、今、現代の日本と世界はどうなのか、よりひどくなっているのかそれとも改善されているのか気になります。1番気になったのが洗剤。あとは有機栽培とかメシア教について更に調べてみたくなりました。

  • 昭和54年に発行された本 工場廃液や合成洗剤で川が汚濁し、化学肥料と除草剤で土が死に、食物を通して有害物質が人体に蓄積され、生まれてくる子供たちまで蝕まれる
    農林省はGDPを上げるために、日本人の健康を悪魔に売り渡した 生物学者は、人間について、生物について、「この未知なるもの」という惧れを常に持っているが、科学者は人間の理解した範囲の中でその知識を複雑化することばかりに血道を上げてきた 昔の人は自然を敬っていたから、米でも野菜でも、自然からもらったのだと考えていました。田畑から作物を取るというのは不遜です

  • 20110129 今はどうなのだろうか?解っている人から行動を起こしているのだろう。

  • 未読

  • 古い本なので、農薬にせよ添加物にせよ、今はもっと状況がマシになっていると信じたい…

著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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