海猫(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132518

感想・レビュー・書評

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  • 何度読んでも、素晴らしい。
    薫のような人生が理想。
    反対にタミも、これまた素晴らしい人生。
    長い小説だけど、読みごたえあって、壮大な風景が浮かぶ。おすすめです。

  • 北海道ならではの文学があると思う。そしてそれは女性作家によって紡がれる系譜のような気がする。たとえば、三浦綾子、桜木紫乃といった作家たち。そして谷村志穂もその系譜に連なる人物ではないだろうか。北国を舞台にしたどこか現実と隔絶したように(関東生まれ関東育ちには)感じられる物語。上下巻からなる『海猫』もそうした魅力を十分に含んだ長編小説。
    物語は漁師町に嫁入りする薫から始まる。ロシア人を父にもつ美貌の薫はそれを疎ましく思いながら生きてきた控えめな人。でも心の芯に熱いものをもっていて義弟と心から愛し合う仲になり、物語の中盤で二人は心中するかのように同時に命を投げる。後半は薫が残した二人の娘、美輝と美哉を中心に描かれる。
    薫、美輝、美哉のいずれもが主人公といえるだろうか。三者三様の性格と生き方は主人公にふさわしい。一方で、その描かれ方にひかれたのは、薫の母・タミと薫の弟である孝志の妻・幸子、そして薫の夫だった邦一と後妻の啓子の4人。
    タミは苦境に陥りそうでもくじけないそのバイタリティある生き方がすてき。幸子は自分の薄幸を承知しているかのようにしょうもない孝志に添い遂げ、終盤はそう悪くない生き方をつかんだところにひかれる。邦一はその不器用な生き方が、薫に対してはつらくあたることになったけど悪者には思えない。啓子は、疎まれ者になった邦一に寄り沿う損な人生を自ら選ぶところにひかれる。
    多くの登場人物がいるけど、誰もが何かを抱えながら一生懸命ひたむきに生きている。悪い関係や素直になれなかったりもするけれどそういうふうにしか生きられない人間の姿が丁寧に綴られている。いろいろあっても、時がたつうち落ち着きどころが見つかるような。最後の命がつながれていくようなシーンも静かで熱く、心に響くいい終わり方だった。

  • ロシア人とハーフの女性が南茅部の街に嫁いでという普通の滑り出しで始まった物語。函館の風景や昆布漁の描写で心和んでいたのも束の間、とんでもない展開が繰り広げられていく。
    添い遂げることの難しさであったり、心模様に蓋をして生きていくことの辛さであったり、葛藤を抱えている人が多すぎ。複雑に絡み合った糸がどうなっていくのか
    下巻を読むのが怖い気すらしてくる。
    これこそ、怖いもの見たさなんだろうね。

  • 女は強くて、男は弱い生き物、、、。
    そんな事を感じる上巻。

    久しぶりに引き込まれて一気読み♪

    下巻が楽しみぃ。

  • 大好きな函館が舞台で、海とか教会や鐘を鳴らす描写を読むとすごく行きたくなった。

    ただ話はかなりドロドロ・・・薫がメインの前半悲惨すぎる。。
    後半の姉妹の話がいい。
    ちなみに映画は微妙だった。

  • ロシア人の間の子と母タミとの間に生まれた 海猫のような目を持つ
    美しい女、薫が南茅部の漁師、邦一のもとへ嫁ぐところから物語は始まる。登場人物が何人も出てくるが、その一人ひとりが細かく、しっかりと描かれている。南茅部の寒い寒い漁村は行ったことのない私でも想像できるくらいの素晴らしい描写。
    映画を先に観たので「不倫」とか「禁断の愛」とか、わりと俗な感じの小説だと思っていたら全然違っていて、初めての作家だったが、言葉の遣い方もすごく好きだった。
    余談だが、邦一という男は、いかにも強引な感じがして、佐藤浩一というキャスティングはピッタリだと思った。

  • 女は、冬の峠を越えて嫁いできた。華やかな函館から、昆布漁を営む南茅部へ。白雪のような美しさゆえ、周囲から孤立して生きてきた、薫。夫の邦一に身も心も包まれ、彼女は漁村に馴染んでゆく。だが、移ろう時の中で、荒ぶる夫とは対照的な義弟広次の、まっすぐな気持に惹かれてゆくのだった―。風雪に逆らうかのように、人びとは恋の炎にその身を焦がす。島清恋愛文学賞受賞作。



    勝手な思い込みですが、北国!
    漁師の生活・・・って感覚はすごく感じますね。
    寒い、つめたい環境の中の人間の温かさ・・・そんなものも見えるような。。。
    下巻に期待!!!

  • 何度も何度も読み返すくらい好き。
    雰囲気とか話が好き。
    冬の北海道の感じとかね。

  • 日本人の母とロシア人ハーフの父を持つ薫の嫁入りからはじまる。昭和の高度急成長という時代と、函館はあの当時、漁業の町として勢いがあったのだろう。そして嫁入り先の南茅部・漁師町でほぼ親戚関係があるような狭い町。必死に婚家になじもうとする薫とそれを受け入れようとする家族。穏やかな新婚夫婦の物語と読み進めていくうちに歯車が狂いはじめてきて、きな臭さすら感じてくる。なんというか焦ったいようなしょうもないような。でも、目が離せない感じがある。

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著者プロフィール

1962年北海道生まれ。北海道大学農学部卒。’90年『結婚しないかもしれない症候群』で鮮烈なデビュー後、’91年に処女小説『アクアリウムの鯨』を刊行する。自然、旅、性などの題材をモチーフに数々の長編・短編小説を執筆。紀行、エッセイ、訳書なども手掛ける。2003年『海猫』で第十回島清恋愛文学賞を受賞。

「2021年 『半逆光』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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