身がわり: 母・有吉佐和子との日日 (新潮文庫 あ 5-70)

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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101132709

感想・レビュー・書評

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  • 著者が母である有吉佐和子との思い出を書いた作家デビュー作。
    ずいぶん前からこの本があることは知っていた。有吉佐和子は才女であり、かつ気性の激しい人だとされているし、しかも「身がわり」だなんて、気性激しく著名な母の犠牲にされた娘の立場による、エレクトラコンプレックス的な思いを綴ったエッセイかと思っていた。確かに、偉大なる母の存在を消化する軌跡という色は濃いのだが、それは想像していたのとは違った綴られ方をしていた。
    つまり、ヴェールで包んだ物語の向こうに母へのコンプレックスを乗り越えようとする著者の姿が透けて見えてくるようなものを想像していたのだが、そうではなく、著者自身がそのコンプレックスと対峙し、どのように消化(昇華)したかということが真正面から書かれている。一方で、なぜ「身がわり」なのだろうかと考えながら読んでいた疑問は解けず。それも、真正面から母の像にぶつかる著者の気丈さからは、そのような印象につながらない。
    この本の白眉は、イギリス留学中に母が亡くなり、その後の日々が綴られるところなのだけど、前半の母娘の日々のやりとりは小気味よく読めて面白い。有吉佐和子さもありなんというような言動もあれば、気性が激しいという自分の勝手な有吉佐和子像を覆すような愚かゆえに愛おしい母としての姿も見えてくる。

  • 母との関係を回顧するエッセイかと思って読み進めると、途中で変な記述になってくる。
    もちろんそれは「あえて」そうしているのであって、有吉佐和子が亡くなる前後の記述はかなりテクニカルになる。その緩急に驚いた。

  • 大作家を母にもつ娘の成長。

    有吉佐和子、読んだことあるようなないような。(たぶん幸田文とごっちゃになってる)

  • これはよかった

  • 有吉佐和子さんの一人娘、有吉玉青さんが母・有吉佐和子と過ごした日々を綴ったエッセイ。
    このエッセイを書かれた当時1988年、作者は東大大学院に在学中。
    幼い頃から「有吉佐和子の娘」と周囲に言われ、期待され、それに反発し苦しんだという事がここには書かれていた。
    お母さんの著書を「読まない・読ませない」宣言していたと言う。
    はっきり言って、内容的にはちょっと期待外れだし、魅力のない文章だと思った。
    確かに作家でもない人が書いたにしては知的でうまい文章だと思うけど・・・。

    もちろん、エッセイなので、あの時自分がどう思った、どうした、という事を書いてある訳だけど、それよりも私はもっと、人間・有吉佐和子、そして母親としての有吉佐和子さんのエピソードが知りたかった。

    そして、何故かこの本には父親が登場しない。
    母と祖母と女三人暮らし。
    お父さんは亡くなったのか、離婚したのか、何も触れていない。

    有吉佐和子さんは自著の中でよく母娘の確執について書いている。
    そこから勝手に、ちょっと普通でない母娘の関係を想像していた。
    でも、ここに書かれているのはごく普通の母娘の姿。
    確かに母は有名作家で、その部分は特殊だけれど、それを除けばどこにでもいる母親と娘の関係だと思う。

    この本には作者の成長につれ、当時発表された有吉佐和子さんの本のタイトルが出てくる。
    意外だったのはそれらの作品を家族がいる同じ家の中にいながら書いていたということ。
    日常と隣り合わせであんな名作が書けるなんて!
    多分子供が小さい頃はどうしたって声が聞こえたりするし気配がする。
    そんな中、あの「出雲の阿国」や「恍惚の人」が生まれたなんて!
    何て集中力だろう!と思った。
    エッセイ自体は物足りないけど、これを読んで私の中の有吉佐和子さんは一層大きくなり、神秘性を増した。

  • 娘から書かれた有吉佐和子さんは「やっぱり凡人とは違う!」という面もあり、「いや、やっぱり普通の母親だ」という面もあり。
    胸を打たれる本です。

  • 後半、胸を打たれっぱなし。母と娘の関係は確かに濃い。

  • 玉青ちゃんは恵まれている反面、戦っていたのね。著名人が家族にいるとこういう心情はあるんだろうけど、結局はプラスなことが多いような気もする素人の意見。

  • この作品で朗読の全国大会に出場したという、とても思い出深い作品。

    大作家を母に持った娘の心情の表現が見事。

  • この綺麗な名前と有吉佐和子の娘ということで購入しました。
    母を愛する娘なら誰でも同じ気持ちになると思います。

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著者プロフィール

作家。1963年生まれ。早稲田大学哲学科、東京大学美学藝術学科卒業。ニューヨーク大学大学院演劇学科終了。母・佐和子との日々を綴った『身がわり』で坪田譲治文学賞受賞。著書に小説『ねむい幸福』『キャベツの新生活』『車掌さんの恋』『月とシャンパン』『風の牧場』『ぼくたちはきっとすごい大人になる』『渋谷の神様』『カムフラージュ』、エッセイに『ニューヨーク空間』『雛を包む』『世界は単純なものに違いない』『恋するフェルメール』『三度目のフェルメール』など。

「2014年 『南下せよと彼女は言う』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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