雄気堂々 (下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133041

作品紹介・あらすじ

フランスから帰国した栄一は、明治新政府の招きで大蔵省に入り、国づくりの熱っぽい雰囲気の中で活躍するが、やがて藩閥の対立から野に下り、かねてからの夢であった合体組織(株式会社)を日本に根づかせるべく歩みはじめる…。一農夫の出身であり、いずれの藩閥にも属さなかったにもかかわらず、いかにして維新の元勲と肩をならべる最高指導者となっていったかをたどる。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は、渋沢栄一を含む「八百万の神々」達が、今の日本の政治経済の源流となる国づくりにどのように携わったか描かれている。「八百万の神々」とは、大隈重信が動乱の中をしぶとく生き抜いてきた癖のある人たちを例えたそうだ。

    たしかに幕末•明治の動乱は、一神教のようにスーパーヒーローが1人でまとめたのではない。
    本書では渋沢をはじめ、伊藤博文/大隈重信/福沢諭吉/大久保利通/井上馨/西郷隆盛/岩崎弥太郎/三野村利左衛門などが登場し、各々が政治・経済を動かしていたことがうかがえた。

    保守的で渋沢と相容れない大久保、仁が厚く味方が多い西郷、怒りん坊で周囲に威圧感を与える井上馨。
    私は「井上タイプは〇〇さん」と周りの人に当てはめ、面白く読めた。
    流儀の異なる人間同士が寄り合いながら物事を推進するのは、渋沢の力量をもってしても衝突は避けられないことを知り、ビジネスマンへのエールのように感じた。
    渋沢栄一から「硯と墨と筆」の考え、「成事は説かず、遂事は諌めず、既往は咎めず(論語)」の精神を学べたのが、大きな収穫だった。

    ちなみに、妻の千代の話は上巻より少なく、家庭よりも仕事に忙しくなった渋沢の姿を表現しているように感じた。

  • 渋沢栄一は、めちゃくちゃすごい人です!
    ぜひぜひ読んでみてください

  • 千代夫人とのあっけない別れが悲し過ぎます。

  • 幕末から維新の激動の時代の申し子<渋沢栄一>が、知遇を得て明治新政府の招きで大蔵省入りし、才気闊達ぶりを大いに発揮。いずれの藩閥に属さず藩閥の対立を嫌い野に下り、合本組織(株式会社)を日本経済の基盤固めに貢献した。 渋沢栄一の〝雄気堂々〟たる人生の途上において、知遇を得た歴史上の人物を見るだけでも目が廻る。土方歳三、木戸孝允(桂小五郎)、西郷隆盛、大久保利通、大隈重信、岩倉具視、江藤新平、井上馨、伊藤博文、山形有朋、岩崎弥太郎、五代友厚・・・・・。

  • 下巻は、明治新政府で改正掛を立ち上げ、建白書を次々と提出し、改革の先鋒となる渋沢栄一の活躍が描かれる。
    対立する者の意見もよく聞き、調停の名人であったが、ぶつかる壁も厚かったようだ。
    大久保利通と衝突し、栄一に国造りの神々となってほしいと頼まれた大隈重信とも意見を異にするようになる。
    合本主義の夢を持ち続ける栄一は、その実現のため三菱や外国商人とも対抗し、その闘争心が尽きることはない。
    渋沢栄一の人間形成の物語であるとともに、近代日本の形成であり組織警世の物語でもある。
    若き日本が鮮やかに描き出される本書は、老い停滞感が漂う現代に多くのことを投げかけてくれる。

  • 明治政府の高官として採用、下巻では洋行を経て若さだけの彼は過ぎ去り、老練という表現が相応しい存在となる。明治の元勲に負けず劣らずの行動を経済界で示し、上巻とは違って経済小説が得意な著者の本領発揮されている。明治時代に活躍する偉人がたくさんでてきますし、青天を衝けでとりあげられたエピソードもいっぱいでてきます、大河ドラマと比べると1エピソードあたりのツッコミは深かったり浅かったりさまざま。妻千代がコレラであっけなくなくなった時点で小説は終了。青天を衝けが気に入った人は復習の意味で読むと面白いでしょう。

  • 渋沢がいよいよ政府へ役人として勤めるところから始まる。政府内での対立もあり、結局民間へとうつるが活躍ぶりは変わらない。一方でその一因となった江藤は佐賀の乱をおこし処刑され、政府を去った西郷も西南の役で自害する。いかに優秀であっても判断の誤りや行動の一つ一つによって運命が決まっていくさまをみた気がした。渋沢は人情の人であり、それも影響したと思う。
    上下巻を通して渋沢の行動力もだが交渉力、仲裁力は素晴らしいなと思った。特に生糸貿易における外国商館との戦いでは、連合生糸預所構想を推し進めながらそれをやめるのを条件に不平等な条件を改正するという名を捨て実をとることに成功する。ここに本質を捉えて、行動できる渋沢の素晴らしさを一番感じた。手本にしたい。
    普段の仕事で自分もこれができたらと思うが、捨てるほどの名もないのに中々難しい。4.0

  • 「雄気堂々(下)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
    360p ¥320 C0193 (2021.04.10読了)(2021.04.05借入)(1981.10.30/11刷)

    【目次】(なし)
    省中ただ雑沓  5頁
    七等出仕    24頁
    衝突      44頁
    出処進退    72頁
    明と暗     94頁
    辞表      120頁
    総監室     146頁
    炎上      163頁
    小野組処分   181頁
    波紋      197頁
    人同じからず  223頁
    夏の夜の宴   253頁
    難事百出    280頁
    横浜大戦争   306頁
    無常迅速    336頁
    あとがき    351頁
    解説  尾崎秀樹  354頁

    (「BOOK」データベースより)amazon
    フランスから帰国した栄一は、明治新政府の招きで大蔵省に入り、国づくりの熱っぽい雰囲気の中で活躍するが、やがて藩閥の対立から野に下り、かねてからの夢であった合体組織(株式会社)を日本に根づかせるべく歩みはじめる…。一農夫の出身であり、いずれの藩閥にも属さなかったにもかかわらず、いかにして維新の元勲と肩をならべる最高指導者となっていったかをたどる。

  • 上巻の終わりで、大隈重信の云う「八百万の神々の集い」に入ることを請われ、その中に入って新政府の高官として活躍する所から始まる下巻。明治新政府の血生臭い政治の世界に嫌気がさし、経済界で生きる中でかねてよりの夢である「合本組織(株式会社)という組織作りに突き進む姿が描かれる。
    それにしても、幕末維新の所謂有名人である慶喜・西郷隆盛・大久保利通・大隈重信達とこれだけ絡んで日本の産業振興で大活躍した人物なのに、これまで殆ど知らなかったとは。

  • 勇気堂々、斗牛を貫く
    人格形成、国家形成、時代形成。
    八百万の神達、神計りに計りたまえ。
    やろうとしていることは、すべて知識も経験もないことばかり。わからんものが智慧を出し合い、これから相談してやっていこうとしている。
    いつの時代も混沌としているから先例は役立つ。しかし全てではない。知恵と勇気を持って生きていこう。

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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