官僚たちの夏 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133119

感想・レビュー・書評

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  • 「官僚」というと、『縦割り行政』とか『天下り』などといった
    マイナスイメージしか浮かばない昨今ではあります。

    日本の今と将来のことなんか、まったく考えてないでしょ。
    一般的国民の生活のことなんかわかってないでしょ。
    と、思っちゃうようなニュースばかりが流れてきます。

    でももしかしたらそれはほんの一部のことで、
    ニュースとして扱われないところで、
    本当は私たち一般国民のためになることをやってくれているのかもしれない。

    と、思い直させてくれたのでした。
    (というか、そうであってほしい)

  • TVドラマを観て文庫本を購入
    ※2010.8.20売却済み

  • 経産省カルチャーの中で働くことになってしまったので、読んでみた。

    古い、男臭い、独りよがりな、偉そうな、ブラックな、そういう場所。そういう人々。ホモソーシャル。

    特に人事カードで人事を我が物にしようとする風越の態度が、現代においてはもはや腐敗臭を放つ。

    30年代の経産省がこうであった、ということは理解。諸々の規制が国内企業の育成に役立ったと。

    現代の経産省官僚の役割ってなに?彼らに何ができるのか?政治家につつかれて補助金を出してるようにしか見えないけど。今の彼らが、天下国家のために何を為しうるのか、書かれてある本があったら読みたいものだ。

    ——-

    ○地球は通産省を中心に回転していると考えている男(こういう人は今もいる)

    ○開戦直前の燃料局長、東は、開戦に徹底的に反対(それは知らなかった。その事情をもっと知りたい)

  • 官僚達の熱い想い、仕事への情熱が伝わってくる。それと共に、省内の構想や政治とのやりとりもリアル。

  • 官僚たちの夏 城山三郎

    時代は60年代。主人公の風越信吾は、通産省のキャリア。ゆくは次官として期待され、「ミスター通産省」と呼ばれている。風越の趣味と言えば人事。通産省のキャリアたちの名前をカードに書き、カードを動かすことで人事をいつも考えている。

    この小説の焦点は2つある。

    ひとつは「指定産業振興法」の法案を国会で通すこと。60年代はまだ自分が産まれていなかったので、どんな時代なのかわからない。小説で説明されているのは、通産省が国内の産業を保護しているので、国外から国内市場の自由化を迫られているというものだ。この時代から既に自由競争を国外から迫られていたということだ。現在ではグローバリズムのもとに生き残っている産業、死んでしまった産業は様々だ。ここからグローバリズムが始まっていたかと思うと驚きであった。

    結局、法案は通らなかったのであるが、通産省の勢い、熱気を感じる。いわゆるこの時代は男気を感じるのだ。仕事にすべての人生を掲げる。仕事ができるのが男の証。そこにダンディズムを感じる。今の日本では感じることができない上昇気流というものを感じることができる。

    そして、もうひとつは風越の人事、仕事観、上司としての部下の接し方である。それも、現在ではパワハラとしてとられる行動も含まれている。でも、この時代はそれがダンディズムだった。

    風越の仕事観はこうだ。

    「おれは、余力を温存しておくような生き方は、好まん。男はいつでも、仕事に全力を出して生きるべきなんだ」

    この反対の価値観を持つのが、エリートの片山だ。片山は仕事もそこそこに、テニスもサッカーもゴルフもヨットもこなす。それでいて仕事に手を抜いているわけではない。仕事も遊びもそつなくこなす。

    そして、話の最後に風越の目をかけていた部下が死んだり、病院に入院してしまう。今で言えば過労死、労災と言われてもおかしくないものだ。

    風腰は、最後に新聞記者に窘められる。

    「ケガを突っ走るような世の中は、もうそろそろ終わりや。通産省そのものがそんなこと許されなくなっている。・・・」

    最後に風越の時代は終わった。正確には、ダンディズムという価値観は終わったのだ。
    寂しいようで、次の時代の到来を予感させることで話は終わる。

    ちなみに、最近は太陽にほえろや西部警察のような男に人気があるドラマは製作されなくなってきた。そのわけは、男の消費が冷え込んでいるから、男が好きな商品を持つ会社のスポンサーがどんどんいなくなっているわけだ。だから今は女の人に好まれるCMばかりが目につく。

    時代の変遷を感じる小説であるが、日本の仕事感としてのパッションを感じる。今で言えば暑苦しいととらえられるのであろうか。


  • ドラマに先駆けて読む。
    主人公にクセが強く、あんまり感情移入できず。
    ピリリよりもズシリ

  • 忖度無しにがむしゃらに働く男の話で面白い。
    主人公は時代の変化を読み取れない一面あり。
    ただ、信念を持って仕事に向き合いたいと思わせる本です。

  • 昭和的価値観がイメージするThe官僚世界。実力以上に根回しや権利者への立ち回りが物を言う。令和のコンプライアンスからするとNGか?と思う箇所はいっぱいあっても案外霞が関ではまだまかり通る思考だったりするのでしょうか。
    数年間の積読を経て何故今手に取ったのか我ながら不明なのだが、落ちぶれつつある日本を憂いながらも回復できる要素を当時の霞が関から模索したいと思ったのか。
    ことを成すにはタイミングが大事でそれを掴みそこねたら結局は老兵は去りゆくのみなのかと少し落胆もした。

  • 人として生きていくのか、国家のために物として生きていくのか。常に両極端な生き方を要求されていた時代。理念でも、行動でも組織は纏まらない。大切なのは、やはり両者のバランスなのだと、感じさせられる。

  • 古いけど古くない。
    自分ができることは思っているよりもっと少ない。信念を持ち努力を続けつつ、謙虚に。休みながら。

著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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