- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101133119
感想・レビュー・書評
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この作品は、通産省の人事を巡る人間関係を描いています。主人公の風越は官僚的であり、ある面では、非官僚的です。誰に対しても歯に衣着せぬ物言いは魅力的だ。「男なら」を好み、人に頭を下げるのが嫌いだ。保身を考える組織人には羨望だろうと思う。
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何回目かの再読。
初読は大学で。役人に興味があった。
2回目は若手社会人の頃。
3回目、ガンで余命宣告を受けた親父がなぜか読んでいたのを見て。勤め人としてのあれこれを思い出していたのか。
そして今回。当たり前だが、読後感は毎回大きく異なる。
昭和30年代のあらゆる意味でありえない働き方、理不尽。
定時退社しただけでやる気不足扱い。男女差別を差別とも思わない。いや、むしろ通産省は他の役所より積極的に女性キャリアをとるんだ、と。そしてその新人に「お人形さん」とあだ名をつけることが「ユーモア」だった時代。
いっそすがすがしいまでに、「国家のため」と「省のため」を混同した政策論議。はあ。
主人公の「豪放磊落」気取りの態度も、今日的に見るとまったく共感できない。
一方で、ここで戦わされる企業再編の必要性を巡る議論が今でも相当程度有効なことにも驚かされる。
特許行政の遅れとかも含め、今日の「経済的安全保障」論のプロトタイプとも言うべき論点はすでにその萌芽があったと。
そして、中身が今から見れば時代錯誤だとしても、「これはやるべき」と納得できた仕事に滅私奉公している姿には、いくらワークライフバランスがあたりまえの今日でもやはり胸が熱くなるものだ。そして、人事というものの巡り合わせの不思議さにも時代を超えたリアリティを感じる。
というわけで、かなりいろいろな意味で今の時代には馴染まないストーリー。それでも時代の記録として、そしてある意味普遍的な「働きバチの誇り系小説」として、その価値は全く損なわれていないと感じた。
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2009年ドラマにもなった城山三郎の著作。
戦後の日本経済の趨勢を通産省の官僚たちの姿を通して見ることができる。 -
霞が関に少しでも興味がある人にはおすすめ。
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これを読んだのは、随分前のことだ。
官僚にもすごい奴がいる
と ひどく感激したものだった。
『自由化したらアメリカに負けてしまう という 強迫観念と
通産省のチカラで 民間産業を育てる という強い意志がある』
国の未来を考え、国を動かす通産官僚。すごいぞ。熱いぞ。
という物語である。
日本の敗戦後の経済成長のなかで
通産省が どんな役割をしたのか?
国内産業の保護というのは
戦後の一時期は 必要だったかもしれない。
国内産業保護派
『赤ん坊を寒風にあてたら、強くなるどころか風邪をひく、
命にかかわることもある』
国際貿易推進派
『日本経済はもはや赤ん坊ではない。
過保護にすると、子供はいつまでもひ弱なままだ』
風越のモデルは「佐橋滋」
通産省大臣官房秘書課長→重工業局次長→重工業局長→企業局長→
特許庁長官→事務次官
風越信吾 は 「ミスター通産省」といわれるオトコ。
そういわれても・・・当然という顔をしているほど
心臓の強いというか、心臓がないオトコだった。
『あいつは サムライだ』というのが ほめ言葉らしい。
それぞれモデルがあった。
この経歴を見ていると 天下り は当たり前なんですね。
そういう意味で 佐橋の 身の処し方が 清いかもしれない。
問題は 個人的な人間評価 をポイントにするのではなく
風越信吾 が 何をしようとしたのか?
という 通産省の官僚としての 行動評価が いるような気がする。
日本の進路 を 個人の枠にはめて考えるのは
いい手法とはいえない。
もっと 客観的な目がいる。
城山三郎の 風越信吾に対する高い評価が そのまま
再現されるのは どうなのだろうか? -
2016/06/27読了
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「官僚」というと、『縦割り行政』とか『天下り』などといった
マイナスイメージしか浮かばない昨今ではあります。
日本の今と将来のことなんか、まったく考えてないでしょ。
一般的国民の生活のことなんかわかってないでしょ。
と、思っちゃうようなニュースばかりが流れてきます。
でももしかしたらそれはほんの一部のことで、
ニュースとして扱われないところで、
本当は私たち一般国民のためになることをやってくれているのかもしれない。
と、思い直させてくれたのでした。
(というか、そうであってほしい) -
城山三郎強化期間により、数年ぶりに再読。
尻切れトンボな終わり方はさておき、戦後ニッポンの国づくりに燃えた通産官僚たちの汗と涙が目の前に飛び出てくるような錯覚すら覚えた。
片山のようなタイプの人間が、昭和40年代の日本にもいたことに驚かされた。 -
よく読書は主人公の人生を体験することだ、と言いますが、官僚の事情は一切知らず、昔は出世争いの中に生きる国家の仕事というのは、文字通り『身を削る』仕事だと感じました。
男性であったからこそ、戦後の日本復興期に活躍できたのだとも思いますし時代が移り変わって行く事も肌で感じられました。
人の為を思い、仕事をすることが出来れば日本はもっと良い国家にもなれるのではないでしょうか。 -
TVドラマを観て文庫本を購入
※2010.8.20売却済み -
経産省カルチャーの中で働くことになってしまったので、読んでみた。
古い、男臭い、独りよがりな、偉そうな、ブラックな、そういう場所。そういう人々。ホモソーシャル。
特に人事カードで人事を我が物にしようとする風越の態度が、現代においてはもはや腐敗臭を放つ。
30年代の経産省がこうであった、ということは理解。諸々の規制が国内企業の育成に役立ったと。
現代の経産省官僚の役割ってなに?彼らに何ができるのか?政治家につつかれて補助金を出してるようにしか見えないけど。今の彼らが、天下国家のために何を為しうるのか、書かれてある本があったら読みたいものだ。
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○地球は通産省を中心に回転していると考えている男(こういう人は今もいる)
○開戦直前の燃料局長、東は、開戦に徹底的に反対(それは知らなかった。その事情をもっと知りたい)
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何だかめんどくさそうで、積読行き、年を取るとどうでもいい内容なのか。
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戦後が舞台とはいえ、現代に通じる官僚の働き方が良くわかる。特に、今でいう国家公務員総合職を目指す学生は、この本で、国を動かそうとしている現場の空気を感じてほしい。またその他の学生にとっても、高度経済成長期の我が国が、どれだけエネルギーに満ち満ちていたかを知ることは、今後キャリアを積み重ねるうえでのエネルギー源になる。
キャリア支援課 江嶋良太
https://bit.ly/34KiCM0 -
戦後日本で経済開放と国内産業保護の過渡期を牽引した通産官僚の実話。官僚と政治家の関係や人事等々、現在でも不変のものも多く、パブリック・セクター(特に経済産業行政)で働く人にとっては必読書。
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ドラマは見ていたけど、原作は読んでいなかったので。今の時期に、昔の官僚はどう政治力に向かっていったのかって事で一気読み。高度成長期の古き一時代を表していると言えばそれまでだけど、予算も余裕があり官庁同士での許認可権力争いなど、今とは雲泥の差だと思う。仕事に関しては上昇志向で官僚的側面もある主人公・風越信吾も、その行動は「忖度」とは程遠いところにあり、その点では気持ちがいいくらいに読めてしまう今の時代(笑)。こそこそ改ざん事が話題になる時代にこそ、このような人物がいてほしいものだけど、やっぱり時代が違いすぎるかな。
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そこ「まだ読んでなかったの?」って言わない(笑)
役人にとって人事はホンマに一大関心事なんですよね。
何と言っても人生が決まるので。
主人公の風越は通産省の人事を握ってオモロイ仕事ができるように仕掛けていきます。
確かに人事を握れば好きな布陣が組めます。
でも国は人の入れ替えがない前提ですが役所はそうはいかないですからσ^_^;
今で言う経済産業省にあたるところですね。
やっぱり経済に活気がないと国が盛り上がりません。
高度成長期の時代背景がそうさせるのでしょうが今見ると羨ましい世界ですね。
ただラストはなにか自分を否定されたようで寂しかったです。
僕はどちらかというと「無定量 無際限」に働くという方にシンパシーを感じるのでラストで仕事は才能でこなしてワークライフバランスを重視する天才が出世して終わるところは僕にとって努力を否定されたようでバッドエンディングでしたσ^_^;
人それぞれ感じ方はあると思いますが公務員ならそれぞれ何か感じるところがある本やと思います。 -
嫁の実家でひたすら読んだ。
お堅い官僚の世界も、案外人間臭い人達の集まりなのだと認識を新たにする。3〜4年前にドラマ化されているが、個人的にはあまり先の展開を知りたくなるような作品ではない。 -
最後の救いのないラストに余韻が残ります。懸命に官僚人生を走ってきた風越が新聞記者に諭されるシーンは人生の難しさを感じさせます。
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官僚達の熱い想い、仕事への情熱が伝わってくる。それと共に、省内の構想や政治とのやりとりもリアル。
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官僚たちの夏 城山三郎
時代は60年代。主人公の風越信吾は、通産省のキャリア。ゆくは次官として期待され、「ミスター通産省」と呼ばれている。風越の趣味と言えば人事。通産省のキャリアたちの名前をカードに書き、カードを動かすことで人事をいつも考えている。
この小説の焦点は2つある。
ひとつは「指定産業振興法」の法案を国会で通すこと。60年代はまだ自分が産まれていなかったので、どんな時代なのかわからない。小説で説明されているのは、通産省が国内の産業を保護しているので、国外から国内市場の自由化を迫られているというものだ。この時代から既に自由競争を国外から迫られていたということだ。現在ではグローバリズムのもとに生き残っている産業、死んでしまった産業は様々だ。ここからグローバリズムが始まっていたかと思うと驚きであった。
結局、法案は通らなかったのであるが、通産省の勢い、熱気を感じる。いわゆるこの時代は男気を感じるのだ。仕事にすべての人生を掲げる。仕事ができるのが男の証。そこにダンディズムを感じる。今の日本では感じることができない上昇気流というものを感じることができる。
そして、もうひとつは風越の人事、仕事観、上司としての部下の接し方である。それも、現在ではパワハラとしてとられる行動も含まれている。でも、この時代はそれがダンディズムだった。
風越の仕事観はこうだ。
「おれは、余力を温存しておくような生き方は、好まん。男はいつでも、仕事に全力を出して生きるべきなんだ」
この反対の価値観を持つのが、エリートの片山だ。片山は仕事もそこそこに、テニスもサッカーもゴルフもヨットもこなす。それでいて仕事に手を抜いているわけではない。仕事も遊びもそつなくこなす。
そして、話の最後に風越の目をかけていた部下が死んだり、病院に入院してしまう。今で言えば過労死、労災と言われてもおかしくないものだ。
風腰は、最後に新聞記者に窘められる。
「ケガを突っ走るような世の中は、もうそろそろ終わりや。通産省そのものがそんなこと許されなくなっている。・・・」
最後に風越の時代は終わった。正確には、ダンディズムという価値観は終わったのだ。
寂しいようで、次の時代の到来を予感させることで話は終わる。
ちなみに、最近は太陽にほえろや西部警察のような男に人気があるドラマは製作されなくなってきた。そのわけは、男の消費が冷え込んでいるから、男が好きな商品を持つ会社のスポンサーがどんどんいなくなっているわけだ。だから今は女の人に好まれるCMばかりが目につく。
時代の変遷を感じる小説であるが、日本の仕事感としてのパッションを感じる。今で言えば暑苦しいととらえられるのであろうか。 -
ドラマに先駆けて読む。
主人公にクセが強く、あんまり感情移入できず。
ピリリよりもズシリ -
今年は暑い夏だ。
熱い想いを持って、社会的な仕事に情熱を捧げた男たちの話、「官僚たちの夏」を読んだ。指定産業振興法という一大立法にむけて邁進する風越という骨太な男を中心にした天下国家のために働く男たちの話。
どうもこういう本に弱い。有形無形に、ある大きな夢に向かう話。ドラマでいえば、「白い巨塔」や「華麗なる一族」か。
白い巨塔では財前教授には浪速大学に高度がん治療センターを作る夢があって、華麗なる一族でには製鉄所をつくる夢があった。どちらも壁に阻まれて、主人公は失意の中で亡くなるのだが、この種の巨大な公共財に自分の名誉をかける男の話ってのはいいですもんですね。構造に共通点がある。
ガンにかかってしまった財前五朗がライバルでもあり友人でもあった内科医たつみに最後に言うセリフ、「ただ、無念だ」の「ただ」という一言が堪らなくグッとくる。
はい、ローマの休日に続いてのセリフ萌えでした。(2007/8/4) -
忖度無しにがむしゃらに働く男の話で面白い。
主人公は時代の変化を読み取れない一面あり。
ただ、信念を持って仕事に向き合いたいと思わせる本です。 -
主人公・風越信吾は、異色の官僚と言われた佐橋滋をモデルに高度経済成長を支えた通産省の官僚たちの仕事ぶりや人事などの戦いや当時の日本の政治との関わりなどを描いている。
2009年には佐藤浩二主演でTBSの日曜劇場でドラマ化された。
1960年代、昭和で言うと35年から44年までの時期である。当時は学生運動、オイルショックなどもあり激動の時代でもあったが、第二次世界大戦後の焼け野原からたった15年〜25年で日本は世界に冠たる先進国となった高度経済成長を成し遂げた奇跡の時代のお話しでもある。
今や世界的に有名な日本の基幹産業ともなった自動車産業も含め、当時は産業も育っておらず通産省の保護が重要な役割を果たした。ただし、本文からもわかる様に途中からは保護主義より自由主義にした方が帰って良かった面もあった様である。
ミスター通産省と呼ばれた主人公風越信吾の歯にきぬをきせぬ言動により浮いたり沈んだりのハラハラドキドキも物語として楽しめるが、特にもはや戦後では無いと言われた昭和の熱い空気が感じられる歴史感も想像して楽しい物語となっている。
主人公は熱くて全力で死ぬ気で頑張ります的なワーカホリック、対する新人類として家庭や趣味、自分の時間も大事にする片山という対照的な官僚も描いている。
今もこんな感じの「バブル世代」「ロスジェネ」対「Z世代」のような対立はあるかもしれませんが、エジプトの古い壁画に「最近の若者は〜」的な象形文字も書いてあるらしいので、人類はそうやって新しい世代の奴に嫌味を言い続けてたんだな。そうして歴史は繰り返すんだな。
なんて感想を持ちました。 -
後輩の推薦で手に取りました。霞ヶ関官僚という馴染みのない業界の人間模様が新鮮で興味深かったです。
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時代が古すぎた。登場人物が好きになれなかった。
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OPACへのリンク:https://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2002105373【推薦コメント:長期不況、官僚の人気低下、行政不信の時代だからこそ読みたい。長期的視点に立った政策で日本の重化学工業を牽引し経済成長を推進した通産省官僚の話。】
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昭和50年に書かれた作品であるが、作品内で描かれる二項対立は、令和の今もなお現実に我々を取り巻く課題である。
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ドラマがめちゃ好きだったから読んだけど、多分話変えられてるよね??ドラマの堺雅人が外人と交渉するシーンが読みたかったのになかった。
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昭和的価値観がイメージするThe官僚世界。実力以上に根回しや権利者への立ち回りが物を言う。令和のコンプライアンスからするとNGか?と思う箇所はいっぱいあっても案外霞が関ではまだまかり通る思考だったりするのでしょうか。
数年間の積読を経て何故今手に取ったのか我ながら不明なのだが、落ちぶれつつある日本を憂いながらも回復できる要素を当時の霞が関から模索したいと思ったのか。
ことを成すにはタイミングが大事でそれを掴みそこねたら結局は老兵は去りゆくのみなのかと少し落胆もした。
この作品、高度成長期を舞台にした作品のようですね。
官僚に限らず、日本全体が熱かったと思われる時期が、懐かしく思い...
この作品、高度成長期を舞台にした作品のようですね。
官僚に限らず、日本全体が熱かったと思われる時期が、懐かしく思い出されました。
おはようございます。熱い志を持って読書していた頃が懐かしいです。
おはようございます。熱い志を持って読書していた頃が懐かしいです。