黄金の日日 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133140

作品紹介・あらすじ

戦国の争乱期、南蛮貿易で栄える堺は、今井宗久や千利休らによって自治が守られていた。その財に目をつけた織田信長は堺衆と緊密な関係に。今井家の小僧助左衛門は信長に憧れ貿易業を志す。しかし信長の死後、豊臣秀吉の圧政で堺は血に塗れる。自らの自も危機に瀕した助左衛門は、全てを捨てルソンへ-。財力を以て為政者と対峙し、海外に雄飛していった男の気概と夢を描く歴史長編。

感想・レビュー・書評

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  • 1978年の大河ドラマ「黄金の日日(おうごんのひび)」の小説版。
    夏目雅子さんの演ずる「モニカ(笛)」が好きだったけれど、小説には出てきませんでした…残念。

    小説は、放送と並行して書かれたということ。
    それまでの大河は武士を取り上げたものがほとんどだったが、初めて商人を主人公に扱った。
    とはいえ、戦国時代が舞台なので、信長から家康に至る主だった武将たちがくっきりとした輪郭を持って描かれている。
    商人が天下を取ることはできないが、堺の有力商人たちは大名たちの仲を取り持ったり、求めに応じて武器・弾薬を用意したり、陰で歴史も動かしていたかもしれない。

    主人公・呂宗助左衛門は堺の豪商・今井宗久の使用人から身を起こし、やがて自分の船を持って貿易を行うようになった。
    「黄金の日日」は、タイトルそのものに、二度と帰らない時代をまぶしく振り返る、遠い望郷の念が感じられる。

    堺は、戦国時代を舞台としたどのドラマ、小説にも必ず登場する、特別な町。
    堀が取り巻き、教会の尖塔が聳え、異国の都のようだった。
    信長の政策・楽市楽座により自由に商売ができるようになったことで堺の繁栄も生まれた。
    やがて、秀吉が欲と武力のために商業の統制をはじめ、権力が家康に移行すると、国家のために更に締め付けられていった。
    やがて鎖国に至るわけだが、それは物語の後のことである。

    助左衛門は秀吉や三成に仕官を持ちかけられたが、武士になることは断じて断った。
    組織に組み込まれ、上からの命令で気に染まぬことを行い、やがては運命も他人に決められてしまうことを嫌った。
    ただ自由に、己の意思でひたむきに生きたかったのだ。

    晩年、異国の地で、流されてきた元キリシタン大名・高山右近と会う。
    助左衛門はかつての堺の商人たちの団結と繁栄を、右近は安土のセミナリヨや、領地だった高槻の天主堂のクルスのきらめき、パイプオルガンの音色を、それぞれ遠い輝きとして懐かしく語り合う。

    解説は尾崎秀樹氏。

    大河ドラマで助左衛門を演じた松本幸四郎氏(現在の松本白鸚氏)も文章を寄せている。
    (平成27年5月30日 十刷改版)
    大海に向かって漕ぎだした助左の人生と、“真の価値とは何か”が描かれていたという。
    「権力にとって、自由で伸びやかであることは脅威」という言葉が印象に残った。

  • 戦国時代、一種の自治都市であった堺が舞台。呂宋(ルソン)助左衛門は海外への飛躍を夢見る若者。信長や秀吉を間近に見ながら、また高山右近の敬虔な信心ぶりの胸を撃打たれながら、商人として大きくなってゆく。

  • 戦国時代。信長、秀吉と対峙しつつ貿易商として世を渡り歩いた堺の商人・呂栄(ルソン)助左衛門の物語。

    大河ドラマの原作だとは知らなかった。
    権力に媚びるわけでなく、権威に寄りかからず、「世界は広いのです」と嘯き、のびやかに生きた貿易商人のダイナミズムは冒険への憧憬をたっぷり含んでいて力強い。このような話が好きだ。海の向こうに何があるのかというロマンと共に遠くを見つめた人はいつの時代にもいる。

  • 何か、物語の終盤の方になると、“堺”が「夢の中のような、自由闊達な世界で輝きを放ってていた、幻のような街。理想郷」というような雰囲気を帯びて語られるように思った。街の「嘗ての姿」を想いながら、過ぎ去った日々を振り返る助左衛門の人生が終焉を迎える辺りで物語は幕を閉じる…

    何か「余韻」が強い作品だと思った…

  • 納屋(呂宋)助左衛門を主人公に、戦国時代の堺の街の栄枯衰勢を描きます。
    時代の空気を存分に吸って生きる助左衛門の姿に惚れますね。

    文末の松本幸四郎さんの文章も秀逸だな~
    20161130

  • 戦国時代に実在した南蛮貿易で有名な呂宋助左衛門の一生を描いた小説。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、千利休、今井宗久など、戦国時代、特に大阪の堺を中心に物語が進みます。1978年の大河ドラマにもなった有名な時代小説です。主人公を若い頃の松本幸四郎が演じていました。戦国時代の歴史小説が好きな人には、主人公が破天荒だけどシャイな商人という設定が面白いと思います。まあ、そこはフィクションだと思うますが。

  • 大河ドラマの方も見たいんだよなあ。

  • 商人モノ

  • テレビでアンコール放送をやっているので毎週見ているので借りてきたが 本は 読めそうにない。積読する

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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