冬の派閥 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133171

感想・レビュー・書評

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  • 時は幕末、幕末の表舞台といえば、やはり、京都、江戸、そして薩長土肥。
    しかし本作の主役は、徳川御三家の尾張藩。本来は圧倒的に幕末に影響を与えていてもおかしくない立場にありながら、今では大して気にも留めらていない。まさに冬の時代。それは藩主徳川慶勝の「熟察」を旨とした精神によるものだった事が滔々と語られる。
    組織のトップは如何に決断すべきかが問われる内容に、正直、読むのにパワーが必要な一冊だった。

  • 幕末の尾張藩を描く。
    親藩筆頭の尾張藩の動きは、影響力も大きかったであろう。幕府と朝廷の間に挟まれて、大変だったであろう。自らの藩の動きももちろん考えなければならない訳で。
    組織とは、様々なしがらみがあり、上手く立ち回るのは本当に難しい。

  • 大藩であるにも関わらず、幕末において余り存在感のない尾張藩がフォーカスされた作品。

    印象に残っているのは、「尾張藩は大藩、雄藩であり、尾張で全てが完結されてしまうが故に、有象無象の他藩と交わることを良しとしなかった」という精神性。

    この一文だけで、尾張藩が何故幕末において存在感を発揮しなかったのか何となくわかってしまう気がする。更に言うと、この精神性は今の名古屋にも連綿と受け継がれているようにも感じる。

    しかし主人公の徳川慶勝は真面目な人だけど報われないなぁ(これは城山三郎の殆どの作品の主人公にも共通するけど)。あと、北海道開拓の件からも、余り優秀な指導者だったとは余り思えない。。

  • 社会と組織と人間の関わり合い。

    組織人として心に留めるべき成語。
    【四耐四不訣(曽国藩)】
    耐冷、耐苦、耐煩、耐閑、不激、不躁、不競、不随、以成事

  • 幕末の尾張藩主、徳川慶勝。維新の舞台で一方の主要な登場人物でありながら、その存在は忘れられがちで、印象としてはただただ時代の波に翻弄されただけのお殿様という感じしかなかった。
    朝命という内実に疑義をはさみえない絶対的な力を利用しつくした陰謀に、その誠実さゆえに翻弄される様は勝者の側から書かれる歴史においては評価されるはずもないのだろう。
    ちょっと足早ではあるが、明治維新のもう一方の側面が描かれていて面白かった。

  • 淡々とした筆致で尾張藩の幕末を描く。

    御三家筆頭の家であるにもかかわらず、
    初代義直の直系ではなく、将軍家の押しつけ養子を主君にいただく。

    そんななか、待望された支藩出身の慶勝。
    斉昭や慶喜との対比、関係性の描き方がとても印象的。

    御三家であるがゆえに、幕府と朝廷の間で揺れ動く。
    その有様が極めて興味深い。

著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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