落日燃ゆ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133188

感想・レビュー・書評

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  • 歴史小説はシバシカンで成り立っているので他の歴史小説読んでもイマイチピンと来なかったのですが、この本は違いました。行動と他己評価で主人公を形作る筆致に感銘を受けました。城山三郎先生の本をもう少し読んでみようと思います。

  • R1.6.5 読了。

     明治、大正、昭和と外交官から外務大臣、首相にまでなられた広田弘毅氏の生涯を描いた作品。協和外交で戦争を回避しよう苦慮し、当時「外交の相手は軍部」という程の中で最後まであきらめず、各国などに働きかけようとしたが、時代のうねりというか暴走する軍部に巻き込まれた生涯。戦争は回避できず、戦後はただ一人の文官として、戦犯扱いされ処刑されてしまった。
     もしも当時、軍部が暴走せず広田氏が描いた外交によって、戦争を回避していたなら現代はどのように展開されていただろう。戦前の優秀な人材、城などの歴史的な文化遺産、広島・長崎の原爆投下などの悲劇も起こらなかったであろうと考えると、くやしく思う。
     この作品は後世に残したい1冊だと思う。

    ・「日本は断じて支那本土に手をつけてはならない。また欧米の勢力範囲を侵すべきはない。それは日本の対岸に欧米列強を割拠させ、彼らに一致して日本に当たらせることになり、日本を危殆に陥らせるおそれがあるからだ。われわれは祖先から二千五百年の遺産を継いだのだから、これを二千五百年後の子孫に伝えるべき義務がある。」
    ・「人間短所を見たら、どんな人間だってだめだ。逆に、長所を見て使うようにすれば、使えない人間は居ないんだ。」

  • ●企業人になった頃に、城山三郎さんの本をたくさん読みました。城山さんは某小説賞の席で、金で左右されるような賞の審査員は辞退すると、席を立ったそうです。そうした言行一致の姿勢が好きです。
    ●この本は広田弘毅の人生について書かれました。ただ一人の文官として、処刑された広田の思いに感動しました。

    • seiyan36さん
      おはようございます。
      この作品、途中まで読んだ記憶があります。
      広田弘毅の高潔な人物像が浮かんでくるとの評価もあり、改めて読んでみたくな...
      おはようございます。
      この作品、途中まで読んだ記憶があります。
      広田弘毅の高潔な人物像が浮かんでくるとの評価もあり、改めて読んでみたくなりました。
      2022/07/15
    • ダイちゃんさん
      おはようございます。コメントありがとうございました。最近、城山三郎さんの本を読んでいません。コメントを頂き、久しぶりに読みたくなりました。
      おはようございます。コメントありがとうございました。最近、城山三郎さんの本を読んでいません。コメントを頂き、久しぶりに読みたくなりました。
      2022/07/15
  • 「二つの祖国」で東京裁判が出てきますが
    その東京裁判での広田弘毅の物語です。
    歴史ではなかなか出てこない人ですが尊敬しますね。
    でも真っ白な生き方も生き辛いのでそんな生き方はでけへんなあとも思います。
    城山さんの作品の中では一番好きです。

  • 広田弘毅と吉田茂は同期なれど、人生は本当に対象的。

    広田は自ら計らず、誠実に生き、人望があった。
    しかし、母は断食死、次男と妻が自殺、自分は死刑という人生。

    吉田は政治好きでわがままに生きた。
    しかし、先日読んだ『父 吉田茂』の印象では、
    家族は裕福に楽しく暮らし、引退後もこりんに世話をしてもらいながらゆったりと過ごした。

    「自ら計らず」という生き方は、本当に尊いのだろうか。
    尊いとしても、それは正解なのだろうか。幸せなのだろうか。
    時には吉田のように、わがままに自己主張をし、
    使える手はすべて使って、自分の思うように生きても良かったのではないだろうか。

    そんなふうにも思う。
    人生とはなかなか奥が深い。

  • 物来順応
    自ら計らわぬ
    公の人として仕事をして以来、自分のやったことが残っているから、今さら別に申し加えることはない

    真似できないと思いつつこの覚悟で仕事に取り組まなければと思わされる。戦争を知ろうと思って読み始めた本で仕事への姿勢を学ぶ。
    そうだ、俺も背広を着る人なのだ!

  • 昭和の戦史・政治を一人の外交官、外相、元総理の生涯を軸にまとめ上げたノンフィクション。東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯の中で唯一の文官・広田広毅。

    大正から昭和、そして、戦争へ至る過程、戦中、東京裁判。
    主に、広田氏という外交官の視点から、官僚の世界、政治の世界、軍部の暴走、当時の世論などが感じ取れました。
    広田氏の考え方や生き様は、現代に生きる私たちにとっても好感を持ち、尊敬できるものだと思います。

    広田氏は平和外交、国際協調を目指し尽力していたが、当時の日本にとって戦争は不可避なものだったとわかりました。
    そもそも、当時の憲法、政治や軍隊の組織の観点からも歯止めが掛けらるものではなかったし、明治維新後、日清・日露戦争と勝利したと思い込んでいる多くの人々は、戦争に浮かれたような風潮もあったように感じられる。いや、情報操作によって、そう仕向けられていたのかもしれない。

    戦争で多くの命を失い、国土を焼かれ、他国を侵略し、多くの代償を支払った末に敗戦した日本。終戦から68年。対中、対韓関係を始め、未だに戦争の後遺症は残っている。現在、憲法改正や、集団的自衛権などの議論が高まりつつあるが、自分を含め今の若者を中心にそうしたことへの関心が急速に薄れていることに危機感を感じる。

    本書の終盤で東京裁判の様子が描かれるが、筆者は少々広田氏に傾き過ぎているような気がする。
    筆者や、当時の人々からすれば、文官として戦争回避に努めた広田氏を、他のA級戦犯同様に絞首刑とすることは重すぎるという意見も多かったようであるが、私の感想としては、広田氏自身もそう感じていた通り、外務大臣、元総理として戦争を回避できなかった責任を取らねばならなかったと思う。

    いずれにしても、人それぞれ見方はあると思うが、20~30代にも是非読んで欲しい一冊です。

  • 「自ら計らわず」を信条に、大戦前の激動で混沌とした政治の世界を生きた広田弘毅を主人公にその半生を描く。
    小説上、広田は外交官・政治家として軍部に対抗し、苦しみながら和平を模索するが、結局、戦争への道を閉ざすことができず、さらに皮肉なことに軍人以外の文官で唯一、A級戦犯として処刑されることになる。「自ら計らわず」の通り、積極的な自身の弁護もしないまま・・・。そのギャップが広田への大いなる同情をさそう。
    ただし、仮に積極的な作為がなかったにせよ、重大ポイントで広田は外務大臣や総理大臣としての判断をしめしてきた。政治家の判断の重さを感じざるを得ない出来事である。

  • 文官で唯一、東京裁判で絞首刑に処された、広田弘毅についての本作。
    日本人として必ず読むべき作品だと感じた。

    日本の教育って史学を世界史と日本史に分けている上に、理系だと高校以降史学をきちんと学ぶ機会がなかったりするので、日本がどういう風に戦争に向かったのか、きちんと頭で理解出来ていない人が多いのではないか。(大変恥ずかしながら、かくいう私もその一人だし、、、)特に私のような所謂ゆとり世代。
    意欲がない人に学べというのは無理があるかもしれないからこそ、義務教育時点できちんと広田弘毅のような人について教えてほしいなあ、、、。

  • 教科書の行間に潜むドラマ。誰かが責任を負わねば示しがつかない状況の中で、時代の業を受け入れて死んでいった人の話。自ら計らわず、黙りこくって、はたから見れば穏やかなだったとしても、心の中は沢山の言葉が渦巻いていたんじゃないかと思う。

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著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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