少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101133379

感想・レビュー・書評

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  • 本書のタイトルは「少しだけ、無理をして生きる」。少しだけ、気になるタイトルだ。筆者のことを全く知らないこともあり、興味を持って手にとってみた。

    内容は、過去の偉人のエピソードを紹介するというもの。新10,000円札にその肖像画が印字される渋沢栄一を始め、様々な人物が登場する。日本の政治家、アメリカ初の黒人市長、天才棋士…など。筆者の見聞の広さと造詣の深さには感服してしまう。単なる知識を教わっているというより、その時代を生きた人間のみが知る雰囲気までもが感じられるようだった。

    彼らの生き様やエピソードを前にして、読者は生き方の示唆を得ることができる。ただし、手取り足取り教わるような感じではない。自分から心を開示して手を伸ばせる読者じゃないと、何かを得ることは難しいかな。

    そういう意味では若い人や、読書なれしていない読者にはあまり推奨できないかもしれない。

    筆者は「経済小説を一ジャンルに格上げした先駆者のひとり」人物とのこと。ぜひ、他の著作、とりわけ「男子の本懐」は読んでみたいと思わされた。

    (書評ブログの方も宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%85%88%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%A7%98%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6_%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%A0%E3%81%91%E3%80%81%E7%84%A1%E7%90%86%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%8B_

  • 城山さんの交友関係の広さが伺える本。

    以下読書メモ
    >>>
    ・魅力のない人とはどういう人か、みなさんの周りを見回しても割に多いんじゃないですか?つまり、型にはまった人ですね。これは魅力がない。周りに大勢いるということは、人間はつい、すぐに型にはまった暮らしをしてしまうのです。あるいは、型にはまった人間になってしまうのです。

    ・つまり、魅力を作っているのは〈初心〉というものなのですね。仕事に対してだけでなく、生きていく姿勢としての初心、初々しさ、というものはいくつになっても大事なんじゃないか。

    ・初心を持ち続けるとは、どういうことでしょう。あるいは、ずっと初々しくあるとはどういうことでしょう。これは、自分に安住せず、自分というものを無にして、人から受信し、吸収しようとする生き方です。

    ・そうやって勉強して吸収していくと、当然ながら、ここはちょっとおかしいじゃないか、ってところが出てきます。自分だったらこうしたい、こうすべきじゃないかという意見が生まれてくる。それを今度は、書くのです。建白する。今の言葉で言えば、提案する、企画する。そして、上役に出す。

    ・〈少しだけ無理〉というのがいいのです。ごく自然にアイディアやインスピレーションが湧いたから小説を書くー―これは無理していませんね。自然のままの状態です。小説や詩はインスピレーションが湧いてこなければ書けないだるうと思うのですが、夏目漱石の『文学論』を読みますと、作家にとってのインスピレーションというのは人工的インスピレーションだ、とある。つまり、ぽんやり待っていたら何かがパッとひらめいた、じゃなくて、インスピレーションは自分で作り出すものだ。だから、インスピレーションを生み出すように絶えず努力しなくてはならない。自然な状態で待っていてはダメなんです。負荷をかけるというか、無理をしなくてはいけない。けれども、それが大変な無理だったら続きませんよね。作品がダメになってしまう、あるいは体を壊してしまう。

    ・自分がいる箱の中に安住してしまってはダメで、自分がその中にいる箱から出ていこうと、チャレンジし続けなくてはならない。むろん、チャレンジしたところで、作家がすぐにいい作品を書けるわけじゃありません。あるいは、いい製品が作れる、いい技術が見つかるわけじゃない。けれども、チャレンジしないでいると、いつまでも箱の中にいることになる。それでは、作家として、あるいは職業人として、伸びない。先行きがない。

    ・ドン・キホーテの物語です。ドン・キホーテは、みんなから、狂人だ、変人だ、とばかにされている。そこで、ドン・キホーテが言い返すのです。「たしかに自分は狂っているかもしれない。だけど、自分はあるべき姿を求めているんだ。あるべき姿を求めない人間もまた、狂っているのではないか」この台詞は胸に残りました。人間が生きていくというのは、どこかで、〈あるべき姿を求める〉ことではないでしょうか。それこそ最も人間らしいふるまいなんだ、とドン・キホーテは宣言するのです。

    ・「1、初心が魅力をつくる」ではいつも初心を忘れず、今の自分に安住せず、人から受信し吸収しようとする生き方を勧めている。私はその人が成長するかしないかは出会った人や経験から「学ぶ力」があるかどうかが大きいと考えている。「学ぶ力があ
    る」とは、人から学ぼうという「謙虚さがある」ということである。謙虚さを持っている人はなにごとにも学び自らを鍛えていく。

  • 前に読んだ本のレビューを遡って書こう(^^)。

    城山三郎さんの本を読むのは、実はこれが初めて。
    もともと「逆境に生きる」というタイトルだったらしい。

    紹介に「大変な無理だと続かないが、ほんの少しだけ自分を無理な状態に置く、つまり挑戦をし続けることが大事」というようなことが書かれていて、何となくタイトルに共感できてそのままレジーまで持って行ってしまった本。

    これは城山氏の著書の総集編的な本なので、すでに本編を読んだ人にはその深みの部分を再度味わうことができるだろうと思うし、私のように初めて出会った人には、本編でもっと深く読んでみたいという焦燥にかられるかもしれない。

    本書では多くの人物が登場するけれど、自分としてはどちらかと言えば避けてきた種類の人物、経済人とか政界人がほとんど。中曽根康弘、浜口雄幸、広田弘毅、中山素平、盛田昭夫(SONY)、田中正造、なんか・・・。

    しかし著者の本を読んでいると、いままで「やな野郎だろな」と勝手に思っていた人物でも、なぜか魅力的に見えてきたりする(笑)。というより、実際には魅力的な部分をたくさんもった人物なのだろう。

    私が個人的に、本書でイチバン魅力的に感じた人物は、広田拡毅。というわけで、本書を読んだ後は「落日燃ゆ」を即買って読んでしまいました。

  • この人が思う尊敬すべき人物、エピソードを沢山書いている。「こうあるべき」といったニュアンスは薄く押し付けがましくない。

  • 先達の人間の生き方から今の時代を人間として誇り高く生きてみようという本。筆者が今まで小説の題材としてあげた人物を中心としてあげているのでさすがに深いところまで描けているなと感じた。
    序盤の初心が魅力をつくるというのはとても参考になる。
    しかし中盤からは単純に登場人物の生き方にとても魅力を感じた。
    特に広田弘毅に関しては今まで名前も聞いたこともない人だったがもっとこの人のことをよく知ってみたいと思った。

  • 渋沢栄一、広田弘毅らを題材にしたエッセー集。いずれも著者が小説に描いた人物であり、小説執筆時の熱の残りを発散しているような文章に、思い入れの深さを感じる。

  • 城山三郎を読みたくなる

著者プロフィール

1927年、名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。57年『輸出』で文學界新人賞、59年『総会屋錦城』で直木賞を受賞。日本における経済小説の先駆者といわれる。『落日燃ゆ』『官僚たちの夏』『小説日本銀行』など著書多数。2007年永眠。

「2021年 『辛酸 田中正造と足尾鉱毒事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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