大炊介始末 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134079

作品紹介・あらすじ

自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。自分たちはおたふくであるときめこんでしまっている底抜けに明るく情味豊かな姉妹の物語『おたふく』。奇抜な視点と卓抜な文体で「剣聖」宮本武蔵を描き、著者の後半期の出発点となった意義深い作品『よじょう』など。さまざまな傾向の短編から代表作10編を選りすぐった。

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎全集26巻に収録。

    相模守高茂の長子、高央は幼いころから知力体力共に優れ、父からも溺愛されていた。18歳の時に侍臣を手打ちにしたことから狂気に走るようになり藩議の結果、父高茂は討取るために高央の幼少時の学友である兵衛に命じる。

    狂気に走った高央の行動の理由は。兵衛との対面は。
    周五郎の武士の人情を描いた短編。

  • ひやめし物語

    とても好きな作品。

  • 飲み屋の描写が上手いなぁ、どの酒も苦々しい。
    でもどんなに苦々しくても、たまには外でビールでも飲みたいもんです。ヨーロッパの夏のような日本で一番良い季節の夜風に当たりつつ。

  • 周五郎新潮文庫版短編集、木村久邇典氏解説には周五郎の短編ジャンルが大まかにわかるものを選んでいるとのこと。そうですね「×××もの」と分類できます。
    再読ですが、ひさしぶりに周五郎ワールドにとっぷりと漬かりましたので、一編ごとの印象を。

    「ひやめし物語」
    武家の次男三男は跡継ぎになれない、養子に行くか部屋住みで終わるか、肩身が狭いのは現代のパラサイトも同じだけれど、甲斐性があれば何とかなるのであるという話。その甲斐性が古本集めというからおもしろい。
    「山椿」
    二組の男女のもつれあいというと、どろどろしているみたいだけれど、ここにはかしこい知恵とユーモアがあるのです。
    「おたふく」
    女性を信じるかどうか、男性はなかなかできないのでしょうか。清く生きているのに、切ないですね。でも明るい性格の姉妹だからか終わり良ければ総て良し。
    「よじょう」
    何にもしないことが有効になる?って噓からまことが。
    「大炊介始末」
    山崎豊子『華麗なる一族』を彷彿とさせる、武家もの編の苦しくにがい物語。
    「こんち午の日」
    このような一途な男性を描けるのは周五郎真骨頂なのだ。
    「なんの花か薫る」
    哀しい、悲しいなあ、世の中にはわかっているけど行き違いがあるんだね。
    「牛」
    天平ならず現代にもいる、あると納得の人間模様。
    「ちゃん」
    どうしょうもないおとうちゃんはどうしようもないんだよ。
    「落葉の隣」
    好きになるっていく過程の不思議さ、理屈じゃないの。

    ようするに周五郎ワールドをほめっぱなしにしてしまうような短編集。

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  • アンデルセンの童話は一作毎に色んな切口の話が盛り込まれているが、この本はまさにそんな感じ
    どれも意外な話の流れで、ほほぉ〜と感心してしまいます
    山本周五郎、あまり読んだことがなかったけれど、他の本も読んでみようと思います

  • 樅の木は残ったしか読んだ作品はありませんでした。珠玉の短編集と思います。
    以下、木村久邇則氏の解説から
    満州事変から第二次大戦後、物資統制のため雑誌の統廃合まで行われた時代に作品は発表されたのだそうです。アンドレジット『大芸術家とは、束縛に鼓舞され、障害が踏切台となる。ミケランジェロのモオゼの窮屈な姿を考えたのは大理石の不足による。アイスキュロスのコオカサスに鎖ぐ沈黙。芸術は束縛より生まれ、闘争に生き、自由に死ぬ。』

    下町もの ー「おたふく」◎「こんち午の日」「ちゃん」「落葉の隣り」
    岡場所ものー「何の花か香る」
    滑稽ものー「ひやめし物語」◎
    平安朝もの一「牛」
    武家もの一「山椿」◎「大炊助始末」「よじょう」◎

    心理描写をつとめてさけ、会話と動作の完結な描写だけで、溢れる余情を与えている。

    ラベルの名曲「ダフネとクロエ」が、単純な数小節のテーマメロディーを変化させることだけで華麗な交響詩となっていること、その手法の散文詩への応用。粘りのある文体、決して上っ面を流れ奔ることのなく、一行一行、読者に食い込んで行く量感。

    本当の人生への対決

  • さまざまな趣向の作品を集めた短編集。全10編のうち、以下印象に残ったものをピックアップ。

    「よじょう」・・・どうしようもないヘタレ男・岩太が、乞食の真似事をしているだけなのに父親の仇を討とうとしていると周りから誤解されてしまう。それだけでも面白いのだが、仇を討つ相手はあの宮本武蔵。力の象徴である武蔵や仇討ちそれ自体へのシニカルな視点が素晴らしい。
    「大炊介始末」・・・武家モノ。将来を嘱望されていた大炊介が、18歳の秋に自身に関するある秘密を知ったことから自暴自棄に陥ってしまう。この時代にこんな秘密を知ったらと思うと大炊介に同情してしまう。まったくもって悲劇としか言いようがない。
    「こんち午の日」・・・豆腐屋の婿に入った塚次だったが、3日目に妻が家出してしまう。残された養父母を守るために一人奮闘する塚次だったが、家出した妻と無法者の男が家を乗っ取りに現れて…。ラスト近くの対決シーンがものものしい。
    「なんの花か薫る」・・・娼妓のお新は、追われていた若侍の房之助を匿ったことをきっかけに馴染みとなる。身分の差によって結ばれることのないはずの2人だが、お新も周りも徐々にその気になっていき…。文庫版の解説にある通り、オチを含めて完璧な短編だと思う。

    職人としての矜持が前面に出た作品が多いが、寄せ集め感がなきにしもあらずかな。いつもの周五郎節を味わうには不足はない。

  • 以下、短編ごとに感想。
    ひやめし物語:武士の時代のひやめし食いは制約強すぎて大変そう。
    山椿:オチは読めたが良い話。人は生まれ変われるものですな。
    おたふく:誤解って怖いね。いい話ですんでよかった。
    よじょう:武士の誇り(というか仇討ち)に対する皮肉。
    大炊介始末:感情移入がしづらい。イイハナシナノカナー?
    こんち午の日:血<義理
    なんの花か薫る:最後がひどく切ない。
    牛:この短編集の中で一番とぼけた感じ。平安時代。
    ちゃん:ザ・大衆文学。好き。
    落葉の隣:誤解って怖いねその2。やりきれない。

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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