おさん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101134147

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎さんらしい、傑作だと思います。歴史小説というカテゴリになってますが、周五郎さんの作品は、是非、女性に読んでもらいたいものが多い気がしますね。

  • 「おふさ」、同一人物?ではないのだろうけれど意図的に同じ名前にしたのだろうか?

  • 121

  • そういう身体、そういうこと、ってどういう体のどういうことだ?
    と思いつつ読み進めたところ、うーん
    記憶も心もどこかへ吹っ飛んで、完全なるあへあへ状態になり、わからない男の名を呼んでしまうとか言う女の「からだの癖」だと。
    いやこれ普通に考えれば演技だし、本当とすればある意味脳の欠陥だし。
    これを小説にしてしまって、世の男たちは「こんな女がどこかにいるのだ」と憧れちゃうわけで、まあねー周五郎もしてやったりのニタニタかもしれんけども。
    別にそんな体でなくたって、忘れられず人生を狂わしてしまう異性は存在すると思うのよ。むしろそこに限定する設定にすれば書く場合には簡単かもね、なんて穿ったことも思いました。ほほほ

  • 山本周五郎の短篇時代小説集『おさん』を読みました。
    『寝ぼけ署長』、『五瓣の椿』、『赤ひげ診療譚』に続き、山本周五郎の作品です。

    -----story-------------
    純真な心を持ちながらも、女の“性”ゆえに男から男へわたらずにはいられないおさん――世にも可愛い女が、その可愛さのために不幸にひきずりこまれてゆく宿命の哀しさを描いた『おさん』。
    芸妓に溺れ込んでいった男が、親友の助力で見事に立ち直ってゆくまでを描いた『葦は見ていた』。
    “不思議小説”の傑作『その木戸を通って』。
    ほかに『青竹』『みずぐるま』『夜の辛夷(こぶし)』など全10編を収める。
    -----------------------

    1943年(昭和17年)から1963年(昭和37年)に発表された10篇が収録されています… 『その木戸を通って』と『おさん』は、今年2月に読んだ短篇集『山本周五郎名品館Ⅰ おたふく』に収録されていたので再読ですね。

     ■青竹
     ■夕靄の中
     ■みずぐるま
     ■葦は見ていた
     ■夜の辛夷
     ■並木河岸
     ■その木戸を通って
     ■おさん
     ■偸盗
     ■饒舌り過ぎる
     ■解説:木村久邇典

    愉しめる作品が多かったですが、そんな中でも、

    手柄を上申しない一徹な武士の生き方に憧れを感じる『青竹』、

    老婆の期待を裏切れず、衝動的に口から出た嘘により救われる展開… 明るい未来を予感させる結尾が巧みで、人間であることの哀しみや喜びが感じられる『夕靄の中』、

    武家の養女となった太夫が、健気に明るく成長する展開と彼女の天真爛漫な性格に好感がもてた『みずぐるま』、

    どんな夫婦にも幾度か訪れる危機を描きつつ、二人だけの共通の遠い思い出が心を引き留める、清々しくて、明るい未来を予感させる結末の『並木河岸』、

    不思議小説… 舞台を江戸にしたSFで幻想部分と現実部分の奇妙な調和が愉しめる『その木戸を通って』、

    可愛いおんなであるがゆえの宿命の哀しさを描く『おさん』、

    の6篇が印象的でしたね… 連続して愉しんでいる山本周五郎の作品、次は長篇を読んでみるかな。

  • いつもながら読後の満足感は高い。親子、夫婦、友人、(侍の)上下、人情など、清々しく、ホロリとさせられ、勇気が湧いてくる。短編10本が収められているが、山本には珍しい不思議で切ないファンタジ一が1本ある。これは蒸し暑い夏のよるにぴったり。また、最後に掲載されている1本は幼馴染の友情を描いたもので、主人公の最後の独り言には、さすが山本周五郎と唸らされる。心が疲れている時、ネガティブ思考に落ちた時に効く「読む薬」。

  • 情けは人の為ならずの「夕霧の中」、年月に踏み躙られる純愛物語の「葦は見ていた」、漂うしっとりした情感が最後まで裏切られない「夜の辛夷」、神隠しSF的な「その木戸を通って」、まるで「赤い酋長の身代金」な王朝モノ「偸盗」…。
    背景は時代なのに、カポーティかO.ヘンリーな珠玉の短篇たち。

  • 良いですね。周五郎円熟期の作品集です。
    これで周五郎は連続4冊になりますが、これが一番ですね。
    今回周五郎を再読しながら意外だったのは、その暗さです。暗くされた舞台に主人公達だけが穏やかなスポットライトを浴びて立っている。そんな仕立てで出来ています。もちろん、こっけいものもあり、後期の作品には爽やかな未来と言った趣向の作品も多いのですが、どこか周りに暗さが残っているようにも思います。
    藤沢周平と比較すれば、周平は冬枯れの雑木林の陽だまり。冷え込んではいるけれど、明るさはあります。一方、周五郎は主人公も周りには暖かな灯りが届いているのですが、何故か周辺が暗い。そんな感じがします。それが悪いと言っているのでは有りません。むしろ、それが周五郎の魅力なのだと思います。

  • 文章の巧みさが流石です。
    特に『偸盗』の文章が秀逸です
    一人称で語られている物語が、まるで上質な狂言をみているように思われてきました。
    『青竹』、『饒舌り過ぎる』もしみじみと心に染み入りました

  • 時代小説短編集。もっとも印象に残ったのは、「その木戸を通って」だ。これは”すこし不思議SF”な物語で、忽然と現れた娘が家に居つき、子をなし幸せな結婚生活を送るが . . . 。H.G.ウェルズの「くぐり戸(白壁の緑の扉)」やロバート.F.ヤング「たんぽぽ娘」が好きなかたにお薦め。
    この喪失感は . . .

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著者プロフィール

山本周五郎(やまもと しゅうごろう)=1903年山梨県生まれ。1967年没。本名、清水三十六(しみず さとむ)。小学校卒業後、質店の山本周五郎商店に徒弟として住み込む(筆名はこれに由来)。雑誌記者などを経て、1926年「須磨寺付近」で文壇に登場。庶民の立場から武士の苦衷や市井人の哀感を描いた時代小説、歴史小説などを発表。1943年、『日本婦道記』が上半期の直木賞に推されたが受賞を固辞。『樅ノ木は残った』『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など、とくに晩年多くの傑作を発表し、高く評価された。 

解説:新船海三郎(しんふね かいさぶろう)=1947年生まれ。日本民主主義文学会会員、日本文芸家協会会員。著書に『歴史の道程と文学』『史観と文学のあいだ』『作家への飛躍』『藤澤周平 志たかく情あつく』『不同調の音色 安岡章太郎私論』『戦争は殺すことから始まった 日本文学と加害の諸相』『日々是好読』、インタビュー集『わが文学の原風景』など。

「2023年 『山本周五郎 ユーモア小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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